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【豆知識】スティックの品番について

世の中、たくさんのメーカーから、めっちゃたくさんのスティックが発売されています。
そんな中、メーカーにかかわらず、なんとなく決まった品番が付けられているモデルが複数あります。

そうです、もうお分かりの通り、5A、5B、7A、8D、3Sといった数字とアルファベットが並んだやつ。

でも、この品番って「何か決まりでもあるのかな?」なんて疑問に思ったことないですか?

いったい品番の数字やアルファベットは何を意味しているのでしょうか?


冒頭にも書きましたが、世の中には、非常に多くのスペックを有するドラムスティックが存在します。
20世紀初め頃は、ドラムスティックを製造する会社の各々が、それぞれ固有の名称を用いていましたが、William F. Ludwig氏が提唱した、ドラマーがスティックを選ぶための指針となる普遍的な型番システムをこぞって導入していくことになります(詳しい経緯はわかりませんけど)。
システムはスティックの意図された用途により割り当てられた文字と数字からなり、おおまかな選択肢はS、A、Bの文字でグループ分けされていました。(1950年頃からGretsch社は同様のコンセプトでP、D、Cによる分類に変更)

※ ↑ 1923年 Ludwig カタログから抜粋

※ ↑ 1954年 Gretsch カタログから抜粋

メーカーごとに細かな仕様の違いはあるものの、今でも大まかな指針として定着し、現在に至っています。
(1930年前後のSlingerland、Rogersカタログでも、既に同様のコンセプトの記載が確認できます)

アルファベットはスティックの用途を表している

(ここで言う演奏形態は現在のそれとは概念が全く違っていることを考慮してください)

では、今現在スティックの品番として使用されているアルファベットA、B、S、Dについて、順を追って見ていきましょう。

■ A=オーケストラ(orchestra) / 5A、7A、8Aなど

型番システム中、最も軽量タイプで、ビッグバンドタイプ(JAZZ)の演奏形態に使用することが目的とされていました。
ここで指すオーケストラは、ビッグバンドオーケストラで、クラシックのオーケストラのことではないようです。
「O」ではなく「A」になっているのは、ラディックさんが、ただ単純に文字にしたときOだとかっこ悪いからっていう理由らしいです(笑)

パールのオーク材(Oak)スティック品番が「O」ではなく「A」なのは、この影響なのかもしれません。


■ B=バンド(band) / 5B、2Bなど

「A」グループよりは重いが、幅広いダイナミクスを表現可能。
ブラスバンドやコンサートバンド(今で言うところのオーケストラですね)などでの使用を意図していたようです。

■ S=ストリート(street) / 2S、3Sなど

システム中最も重く、マーチングバンドやドラム・コーなどでの使用を意図したモデル


■ D=ダンス(dance) ← グレッチ社が独自に使用していた文字 / 8Dなど

Ludwig氏の提唱したシステムと同様のコンセプトでありながらGretsch社は1950年代~1960年代までの間、独自の文字を使用しています(上のグレッチカタログ参照)。
※それ以前は、文字表記は無いものの、オーケストラ、バンド、ストリートと言う表記が確認できます)

A=D(Dance)、B=C(Concert or Band)、S=P(Parade)

1954年のカタログから品番としてこの表記が確認できます。
(61年にはC→B、P→Sに変更され、71年ついにD→Aとなり、他社と統一表記になっています。)
おそらく、ジャズシーンが多様化され、小編成のジャズ楽団も登場し、オーケストラ(A)というよりも、ダンスバンド(D)と言う意味合いが強くなっていった経緯に則っているのかもしれません。このあたりは、ドラムメーカーとしてのドラマーとの付き合い方による影響が出ている気がします。
(その後、なぜだか8Dのみ復活してるんですが。。。)


現在、この用途によるアルファベットの違いは、多種多様化した音楽ジャンルと求めるサウンドを表す言葉に置き換わり、JAZZ、ROCK、FUSIONなどジャンルそのものズバリな品番などとして継承されている気がします。

今風にわかりやすく言ってしまうと

A or D=ドラムスティック
B=コンサートスティック
S=マーチングスティック

ってな感じなんですかね(笑)

では、数字は何を意味しているのだろうか?


大昔のLudwigのカタログによると、当時数字は1~5までがあり、数字の違いが太さ、長さ、チップ形状の違いなどを表していたようです。
おそらく異なるグループであっても、番号を合わせることで、同じようなバランス的ニュアンスが得られるような選択指針として機能していたのではないかと推測されます。

システムが提唱された当時のラディックスティックのラインナップは、

オーケストラモデル:1A、2A、3A、5A
バンドモデル:1B、2B、5B
ストリートモデル:1S、2S
となっていたようです。(1922年カタログより)

その後、スティックのラインナップも徐々に増えていき、1937年のカタログでは、
A:1、2、3、5、7
B:1、2、5
S:1、2、3

1955年には、
A:1、2、3、4、5、7、9
BとSは変わらず

1962年には、
Aに8,11が登場しています
(下の画像は1962年カタログより抜粋、かなり加工しています)

1970年台に突入すると(このあたりからA、B、Sの意味表記がなくなってます)
Aに12、13
Bに7
Sに4
が登場し、幅位広いサウンドに対応するために、ドラマーからの要望に応えるために、スティックの種類がどんどん増えていっている感じが垣間見えます。
(下の画像は、1971年カタログから抜粋 / ちょっと加工してます)

また、これは個人的な勝手な解釈ですが、「medium=標準的な」という捉え方をすることが多いアメリカ人的発想から、5番あたりが何となく真ん中っぽくて、ラインナップの中で標準的なサイズ感を表しているという意味が込められているのでは無いかと推測しています。

スティック専門ブランドであるVic Firth、Promark、Regal Tipなどは手元で資料を確認できていないため、このシステムがどういった形で広まり、定着していったのかは定かではありませんが、その当時、スティックも含めドラム業界をリードしていたラディック社に他社が追随していったのではないかなと、そんなふうに予想しています。

また、プレイヤーのニーズに合わせて、淘汰されていく標準モデルもあったり、

逆にプレイヤーの細かい要求に答えるためにシグネチャーモデルが登場したり、

標準モデル同士の中間的ニュアンスのモデルができたり、

標準的なシステムに則しないモデルも続々と登場し選択肢が増えていっています。

ゴチャゴチャと書いてきましたが、自分もめっちゃ昔のカタログからの受け売りですし、私個人の想像や、主観が多分に含まれています。
実際に名付けた方から真相を直接聞けるわけでもないので、どこまでホントなのかは定かではないです。
そこだけは、しっかりお断りさせていただきます。

でも、なんとなくですが大体この説明で納得していただけるのかなぁ、なんて勝手に思っています。

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