SENZAKI

映像研究家&CGイラストレーター+ライター このnoteでは主に「映像ディレクションの作法」というテーマを綴ります。 著作 https://onl.bz/wz8Huz1 妖怪CG https://onl.bz/a76rvaJ 生物CG https://onl.bz/sTnejq5

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最近の記事

映像ディレクションの作法(14)/映像のグルーブとは

映像における「グルーブ感」についての考察です。 映像にも時間軸がある以上、音楽と同じようにいわゆる「グルーブ」が存在します。 グルーブとは 音楽には、時間軸に伴って進行するビートがあり、その上に和音進行やメロディがのっかって、変化していく、うまくいくとそこに「グルーブ」が生じて気持ち良くなります。いわゆる「ノリ」が生まれる。 音楽にグルーブが生まれる要因には様々あると思いますが、変化していく各要素が「ぴったり合う!」という前提のもと、「うまくずれる」というところにキモが

    • 映像ディレクションの作法(13)/続・ナレーションとは何か

      ナレーションについて考える、続編です。 テロップVSナレーション ある場面で、テロップとナレーションが共存している場合を考えてみましょう。 テロップもナレーションも同じ「言葉」ですが、視聴者にとってどちらが優先されるのでしょうか? テロップとナレーションとでは、視聴者が有線するのはどちらの情報なのでしょうか。ちょっと変な例ですが、下記。 いかにも暑そうな夏の海水浴場の映像に下記のテロップとナレーションが入ります。 テロップ「気温32度」 ナレーション「この日の気温は3

      • 映像ディレクションの作法(12)/ ナレーションとは何か

        「映像表現」は、時間軸を持った情報の束。 これは僕が映像表現を考える上でいつも前提にしているイメージです。 カメラで捉えた動画や静止画(=映像)、マイクが捉えた音、音楽とSE、テロップ、台詞、ナレーション、これらが同じ時間軸で同時に変化していくのが映像表現です。 これらの情報の中で、実に特権的な地位を持っているのがナレーションです。 ナレーションは、同じ音声言語として聞こえてくる、お芝居のセリフやインタビューの音声とはまったく別の次元にあります。 頼んでないのについてくる

        • 映像ディレクションの作法(11)下位置テロップ

          今回は、下位置テロップについて地味に考えてみようと思います。前回の応用編です。 下位置テロップは、まあ、説明するまでもないですが、モノの名称や地名、人名、ちょっとしたコメントなどを画面の下位置に小さめに入れるテロップです。 普通白い文字を使い、黒エッジやドロップシャドウで読みやすくします。 このありふれたテロップも、映像ディレクションの技法、と肩肘張って考えると様々な要素があり、深いもののひとつです。 メインタイトルだとデザインとタイミング勝負になるし、それこそケースバ

        • 映像ディレクションの作法(14)/映像のグルーブとは

        • 映像ディレクションの作法(13)/続・ナレーションとは何か

        • 映像ディレクションの作法(12)/ ナレーションとは何か

        • 映像ディレクションの作法(11)下位置テロップ

          映像ディレクションの作法(10)文字と映像

          今回は、文字と映像、つまりテロップについて考えてみましょう。 映像と文字が組み合わさった時に、何がどうなっているんだろう、考えると色々難しいし、結構複雑です、この問題。ディレクターなら、誰でもなにげなく使う「下位置テロップ」ひとつとっても、考え始めると色々ありすぎるのです...。 映像と文字情報は住む世界が違う 考え始めると色々ありすぎる...状態になる理由の根本は、そもそも、テロップ=文字情報=言葉、と、映像情報とは、立脚する次元が別ものだというところに由来するんだ思いま

          映像ディレクションの作法(10)文字と映像

          映像ディレクションの作法(09)/ズーム考

          今回は撮影に関すること。ズーム、ズーミング・ショットについて考えます。 僕は、ズームはあまり使うほうではありません。番組1本、単焦点レンズだけを使って撮る、というような事もかつてはやってました。今思うと、なぜにそんなにズームが憎かったのか、とも思いますが、ともかく今回はディレクター的ズーム論を書いて行きたいと思います。 ズームレンズを使って、画角を変えながら撮る。引きの画から寄りの画、その逆だったり。 被写体は同じだとしても、演出的には引きの画と寄りの画は当然意味が全く違

          映像ディレクションの作法(09)/ズーム考

          映像ディレクションの作法(08)/映像同士の接着面

          今回は、前回の続きのような考察です。 撮影されたカットと別のカットをつなぐ。 いわゆる「カッティング」と言われる作業で、そのカットのつなぎ目の事を「カットがわり」といいます。この言葉はあまりに映像業界すぎるし、これから「わざわざ」考察するには、あまりに当たり前の言葉すぎてそぐわない感じがしたので、あらたに「映像同士の接着面」という言葉をつくりました。 あるカットが終わり、次のカットが始まる瞬間について、これから少し考えてみたいと思います。 カットの連なりを音符として考え

          映像ディレクションの作法(08)/映像同士の接着面

          映像ディレクションの作法(07)/強度のヤマをさぐる

          今回は映像編集上の「部材」の話です。 映像の一般的な最小単位「カット」は、シーンを組み立てるための部材と見ることができます。この取り扱い方を考えていきます。 カット内の強度の変化 カットにはカメラが収録を始めて止めるまでの一部始終が写っています。そこには使わない、いらない部分があります。これをどう見極めるかが編集の第一歩です。編集という作業は「もう写ってしまっているもの」をどうするか、なのです。 たとえば木工で、丸太の中のどの部分を部品として切り出すか、芯に近い部分を使う

          映像ディレクションの作法(07)/強度のヤマをさぐる

          映像ディレクションの作法(06)/オーバーラップ

          今回は、オーバーラップ=OLについて考えてみます。 いうまでもなく最も一般的なトランジションの一つ。ディゾルブ(ドイツ語)ともいいますね、「そこ1秒でディゾって」とか動詞っぽくつかったりもします(今はあまりつかわないのかな)。 視覚効果としてはご存じのとおり、先行カットから後続カットへ二重露光になりながらなめらかに変化していき、カットつなぎの「ショック」を和らげる効果があります。 一応、アマチュア的な知識としてはこれで十分で、なめらかにしたいな~、という時に使えばいいんで

          映像ディレクションの作法(06)/オーバーラップ

          映像ディレクションの作法(05)/フェードについて

          今回は編集に関することです。考えるテーマは、フェードイン=FI、フェードアウト=FO。これは考え始めると結構奥が深いのです。 フェードとは何か これは、トランジションであるようで、ないようで、使い方は明快なんですが、ちょっと特別ななポジションにあると思います。 誰でもそう感じると思うのですが、シーンを始める時に使えるのがFIで終わる時に使えるのがFOです。 黒を使う黒フェードや、白を使う白フェードが一般的ですが、別の色を使う場合もごくたまにあります。 フェードは、一連の

          映像ディレクションの作法(05)/フェードについて

          映像ディレクションの作法(04)/イマジナリーライン

          今回は、前回の「繋がるように撮る」の続編で、「イマジナリーライン」についてです。 イマジナリーラインとは何か あるカットとあるカットが繋がる予定になっている場合、先行カットと後続カットで被写体の方向性や位置関係が混乱しないように、と考案されたのが「イマジナリーライン」です。短くして単に「ライン」とだけ言う場合もあります。 図にするとわかりやすいの下記ごらんください。 これは、よくイマジナリーラインを説明する際に登場する図で、向かい合った二人の人物の間に存在するラインを示

          映像ディレクションの作法(04)/イマジナリーライン

          映像ディレクションの作法(03)/つながるように撮る

          今回は、撮影時のディレクションについて。 ディレクターに必要な、撮影現場でのスキルが「つながるように撮る」です。映像ディレクターは、撮影した後、当然編集するわけですが、そのときに繋がるように撮っておかなければいけません。...という事を考える前に、「繋がる」とはどういう事か、をまず考えます。 カットがちゃんとつながっているという状態とは、映像演出の常識的には、「違和感なく繋がっている」という意味です。 つまり、「あ、カット変わった」と観客に意識されない、違和感のないつながり

          映像ディレクションの作法(03)/つながるように撮る

          映像ディレクションの作法(02)映像の単位考

          映像の単位 映像関係の専門教育課程でおそらく必ず学ぶであろうことですが、映像作品はいくつかの単位からできています。 通常、映像の最小単位は「カット」です。映像の断片の一つ一つがカットで、カット頭からある秒数持続してカット尻で消えて、次のカットに切り替わります。 このカットが集まってある意味やストーリーの一部分を構成するとそれが「シーン」になります。通常は時間軸や場所などが共通するカットの集まりです。 そして、このシーンがいくつか集まり、もう一段階大きなストーリーのかたまりに

          映像ディレクションの作法(02)映像の単位考

          映像ディレクションの作法(01)/イントロダクション・スジを通す

          誰かに仕事のことを問われて答えにくいのが「ディレクターって何するひと?」というものです。 答えにくい質問です。でも質問する人は世間話の続きですからそんなに深い答えを期待しているわけじゃない。だから「映像作るときに建築の現場監督みたいに、あれこれ指示したりする仕事」と答えています。「映画監督の小型版」みたいなことを言ってごまかしたり(笑)。 ディレクターは、いったい何をやっているのか、答えるとすると「映像情報にスジを通す」という仕事だと思います。 そのままでは個々の情報でし

          映像ディレクションの作法(01)/イントロダクション・スジを通す

          映像ディレクションの作法/はじめに

          映像ディレクターのエンジニアリング話を始めます 映像ディレクターという仕事を始めて、30年ぐらいになりました。 その前、映画学校時代から数えると40年ぐらい映像に関わってきたことになります。 で、そろそろ、いったん「まとめて」みるのもいいかなと思ったんです。40年間映像のことを考えてきて、わかったこともあるし、法則ともいえる発見もある、そして未だに解けない謎もあります。 そんな、映像の様々を、主に、プロの方向けに書いておきたいのです。 映像の演出=ディレクションというと、

          映像ディレクションの作法/はじめに