【連続短編小説】【昨日の肉じゃが今日のカレー】⑫違う涙

12:00 二人向かい合ってお昼ご飯。
いただきます。
モグモグ。
ご馳走様でした。

たく、が食器を片付けてくれた。

そして、たく、はベランダに向かいまたタバコを吸い始めた。

吸いすぎじゃない?
大丈夫だよ!

そう言って、たく、はタバコを吸いながら【雨宿り】を歌い始めた。

13:00雨が止んだ。
たく、は、この日もうタバコを一箱吸いきった。

珈琲でも淹れる?
うん。お願い。

私は二人分の珈琲を淹れた。

雨上がりのベランダで二人きりで飲む珈琲。
本来的な私はこれくらいで程良いはずだった。
たく、が、現れるまでは。

珈琲豆は、モカ。
ほんのり酸味のある味わいが好み。

たく、は、タバコに珈琲とで最高であろう。
隣で一緒に珈琲を飲む私。

ありきたりの、誰にでも訪れるような、当たり前のようにある幸せ。
きっと、いつかは夢のように消えてしまう幸せ。
けれども今はとりあえず今を楽しもう。

たく、の肩に頭を乗せる。

「いま、どんな気分?」
「わかるでしょ?」
「聴かせてよ!」

「しあわせ、、、」

「良かった!」

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また新曲?
うん!
今回のタイトルは?
うーん、、、【Yokohama Blues】
ブルースじゃないし。ここは横浜でも無いし。
いいんだよ!

それもシティポップでしょ。

けれども、そんな事はどうでも良くて、耳心地の良い、たく、の歌声にただただ聞き惚れていた私がそこにいた。

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【Yokohama Blues】

物語は実話じゃないとダメなのよね?
その唄は、誰との思い出?

そう考えたら複雑な気分になってきた。
ところで、カレーはいつ、作るのだろ。

15:00
ようやく、たく、はキッチンに立った。

たく、は違う鍋で香辛料を混ぜ合わせていく。
スパイシーな香りが漂い、カプサイシンにより涙目になってきた。

うーん。。うーん。。
そうやって試行錯誤を繰り返しているようだ。

16:30 うん!美味い!完成!

ビックリした。ウッカリ眠っていた。

17:00 洗濯物を畳んで仕舞う。
18:00 「昨日の肉じゃが今日のカレー!いただきます!」
モグモグ

「んー!!!美味しい!!!」
「そうだろ?昨日の肉じゃが今日のカレーは当たりだな!」

こんなにも美味しいカレーを初めて食べた。

たく、がいなくなったら
このカレーは肉じゃがのまま、、、

「また作ってくれる?」
「ご要望とあればいくらでも!」

涙が溢れてきた。
カプサイシンとは違う涙。

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