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広島県旅行の記録 その4(こうの史代漫画原画展)

はじめに

こんにちは、eiketsuです。今回の記事は、漫画家のこうの史代さんの原画展を観に行った話です。

原画展の概要

「夕凪の街 桜の国」について

この作品は、このセカ(この世界の片隅に)と並ぶ、こうの史代さんの代表的な漫画作品の1つです。

こうの史代さん原作の漫画「夕凪の街 桜の国」

1つの舞台は、太平洋戦争終結の1945年から10年後、1955年の広島です。この物語では、原爆により被爆した主人公の皆実(みなみ)という女性の生きる姿が描かれます。ここまでの物語が「夕凪の街」です。
もう1つの舞台は、1986年の東京と、2004年の東京と広島です(主に広島です。回想の話も多いです)。こちらは、皆実の姪である七波(ななみ)ちゃんを主人公とした物語です。七波ちゃんは、母親が原爆の被爆者である、いわゆる被爆二世です。こちらの物語では、被爆を巡って、七波ちゃんと身近な人たちの生き方や葛藤が描かれます。この物語が「桜の国」です。細かく言えば、1986年の話は「桜の国(一)」、2004年の話は「桜の国(二)」となります。
このように、「この世界の片隅に」の舞台が主に太平洋戦争の戦前・戦中であるのに対し、「夕凪の街 桜の国」は主に戦後が描かれています。

原画展の概要

今回の原画展は、当漫画作品「夕凪の街 桜の国」の作画当時に作られた各原画が展示されたものです。開催期間は2024年7月13日から9月8日、開催場所は広島県呉市の呉市立美術館です。

呉市立美術館の入り口

こうの史代さんの絵の魅力

私が今年5月頃に今回の原画展を知ったとき、すごく観に行きたいと思いました。
もしかしたら、人によっては「絵画の原画とかはともかく、漫画の原画をなぜ観に行くの?」と思われるかもしれません。確かに、原画と完成品との見た目の差はそんなにないです。あるとすれば、原画では手書きのセリフが貼られていることや、薄く青い補助線などが引かれていることくらいでしょうか。
その問いに対する1つの答えは、こうの史代さんの絵の魅力です✨

幸せそうな登場人物たち

こうの史代さんの絵の持つ魅力のうち、個人的に特に大きいのは、幸せそうな登場人物たちです。

漫画「夕凪の街 桜の国」の冒頭にあるイラスト

ひと言に幸せと言ってもいろんな意味がありますが、ここでいう幸せとは、心が満ち足りていること。これは別の側面で言えば、他人に対する愛情を持っていること。
もちろん、すべての描写が幸せそうなわけではなく、物語ですから様々な喜怒哀楽があります(それに、見た目が幸せそうであっても本当に幸せとは限らないです)。ですが、幸せそうな描写について言えば、とことん幸せそう。上のイラストに写っている二人、とても幸せそうに感じます。私はそういうところに、こうの史代さんの絵の魅力を感じます。

特殊な作画

こうの史代さんならではの特殊な作画も大きいです。例えば、基本的にこうの史代さんはトーンをほとんど使わないです。他の漫画だったらトーンを塗るところでも、こうの史代さんの漫画だと線が1本1本丁寧に引かれています。
中でも、下のような描写は特別です。

漫画「夕凪の街 桜の国」のある1コマの一部(七波ちゃんが小5のとき)

こうの史代さんの絵から醸し出される優しくてぬくもりのある感じは、そういうところにあると思っています。

結局2回観に行った

観に行っての感想。もう1回観に行きたくなるほどの素晴らしさでした✨
というか、当初は2回観に行くとは考えもしていなかったのですが、観に行った日の翌日も実際に観に行きました。
以下、もしかしたら気持ちが強すぎるのでちょっと引いてしまうかもしれませんが…😅、その点を加味してお読みください🙇

七波ちゃんと東子ちゃんの初見の絵

その一番のきっかけは、メインのキャラクターである七波ちゃんと東子(とうこ)ちゃんの絵でした。その絵が描かれたのは2005年頃のようですが、私はその絵を初めて観て、ものすごく魅了されました。1日目のとき、行っては戻ってを3~4回繰り返して何度もその絵を観に行ったほどです。
なお、美術館の入り口の電子案内板にその絵が映るタイミングがあり、その瞬間を写真撮影しました。撮った絵を、自宅で鑑賞したりして楽しんでいます。ただ、あまり無遠慮にアップしてよい気はしないですし、今後実際に観に行く方もたくさんいらっしゃると思うので、アップは控えておきます。

原画の魅力

もちろん、漫画の各ページの原画も素晴らしいです。
原画は、当時のこうの史代さんたちが丹精を込めて制作したもの。なので原画は、特に気迫が違います。それはどのページもそうですが、こうの史代さんの描く描写の中でもさらに特別な描写は、またいっそうです。どのページのことなのかはあえて言いませんが…、今後観に行く予定の方はぜひそういうところにも着目していただきたいです。すでに漫画を何度も読んだ方でしたら、特別な描写は分かると思います。

(特にファン向け)さらに深い内容

ネーム

原画展の中には、今までにこうの史代さんの描かれた漫画のネーム(下描きの下描きみたいなもの)も一部展示されています。その多くが「夕凪の街 桜の国」のネームで、具体的には「桜の国(一)」(七波ちゃんが小5のときの話)のネームです。
これらのネームもまた、原画並みに貴重だと思います。今後観に行く方は、ぜひネームも観ていただきたいです。
個人的には、東子ちゃんの表情が実際と大きく違うところがあったのがすごく印象的でした。ネームの表情のほうがよかったなぁ…って思ったりもしましたが、あえて控えめな表情に決められたのでしょう。

冒頭のイラスト

ここまででちょっとしたネタバレっぽいことをいくつか書いてしまいましたが…。やっぱり、刊行された漫画からだけでは見えない絵や描写を観られることもまた、この原画展の魅力の1つだと思います。
冒頭のカラーのイラスト(2人の女性(皆実と同僚女性)がディスプレイ内のワンピースを見ているイラスト)についても、刊行された漫画からでは見られないものがあります。それもまた、新たな発見があって味わい深いです。

こうの史代さんの漫画以外の展示内容

本題ではないですが、実際の戦時中の被災、特に原爆の被害に関する資料や映像も、一角に展示されています。時間があれば、併せてご覧になることもご検討いただきたいです。

禎子さんのこと

特に印象的なのは、「原爆の子の像」のモデルとして有名な佐々木禎子さんに関する展示です。禎子さんは1945年、2歳のときに被爆。それでも小学生の頃は、かけっこでは誰よりも速いほどで、ずっと元気でした。しかし、晩年に体調が急激に悪化。約8ヶ月もの闘病生活の末、原爆投下から10年後である1955年に亡くなりました。
年齢は違いますが、実は「夕凪の街 桜の国」の前半の主人公の皆実が亡くなったのも、同じ1955年。時期も近いです(10月と9月)。そう考えると、2人とも同じような運命で、2人を想わずにはいられなくなります。
これは憶測にすぎませんが…。こうの史代さんも当時の禎子さんの生きる姿に感銘を受け、禎子さんの遺志を継ぎたい想いがあったのかもしれません。

原画展以外の関連場所

今回の原画展とは違いますが、1つ紹介します。広島市のアストラムライン(広島市の路線)の本通駅には、このステンドグラスの美術作品があります!またひと味違った鮮やかさがあり、とても魅了されます✨

漫画「夕凪の街 桜の国」をモチーフにした、本通駅にあるステンドグラス

おわりに

そんな感じで、こうの史代さんの様々な原画を直接観ることができて本当に感慨深かったです。
記事をお読みいただき、ありがとうございました🙇


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