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耳のないくまと黒猫(ベアリスタ2021)

蓋が3つ。飲みたいなって思ったら、蓋3つもとらんといけんのかな。今もうホット飲んでるのに。可愛すぎて意味わからん。胸苦しい。辛い。可愛い。「ハロウィン2021 クレイブボトル ベアリスタ ゴーストリッド」500ml 2310円

恋をすると必要性とか機能性とかどうでも良くなる。しかしそこで手を出すか出さないかは私の自制心次第。きちんと長く大切に出来る相手か見極めないと…つまり蓋3つの難を乗り越えても愛し共に年老いて行けるかどうか、自分がそこまで出来る人間なのか問う必要がある…と悩んでる間に売り切れそう。

マントを脱ぐと、彼にはあるはずの耳が無かった。
驚く自分を隠しきれず、私は耳あるはずだった部分を見つめてしまった。
彼は表情一つ変えず、ただじっと私を見つめていた。
私はうろたえてしまった自分を恥じた。
耳がないからって、彼がくまであることに変わりは無いはずなのに。
彼を愛おしく思う気持ちと耳のない彼を愛せるかわからない不安が入り混じって、私は彼から目を逸らしてしまった。
彼は何も言わずただじっと私を見つめるだけだった。
その時、私は悟った。
私には彼を愛する資格など無いのだ。
耳のないことにうろたえてしまった時点で私には彼を受け入れるだけの器が無いのだ。
「だから言ったでしょ」
彼の下に住む黒猫が言った。
「え」
私は耳を疑った。
「このくまに言ったの。あんたじゃない。私はね、最初からこいつに言ってたの。耳のないくまなんか誰も愛してくれやしないってね」
黒猫は一部始終を黙って見ていたのだ。
私と彼が出会った瞬間。
彼がマントを脱いだ瞬間。
私が私が彼から目を逸した瞬間―。

「敵わないな」
私は黒猫に降参した。
私が知るずっと前から黒猫は彼の全てを知っていて、ありのままの彼を受容していたのだ。
黒猫はくまとしての彼ではなく、彼という存在そのものを受け止めていた。黒猫は首のマグカップをチリンと鳴らした。

「さぁ、コーヒーブレイクだ」
「耳のないくまと、素敵な黒猫と、それから正直で優しいあなたに、乾杯」秋風が口元の湯気を拐った。

もうすぐカフェヴェロナの季節がやって来る。
(2021年秋)

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