魚たち(詩)

小さな魚が一匹

ぴちょんと水面を跳ねた

それから少しして

もう一匹小さな魚がぴちょんと跳ねた

最後の波が新しい波と交差して

一番高いところで新しい形を作る



そこからもう一匹、二匹小さな魚が飛び跳ね

たと思ったら向こうの方で

も魚が飛び跳ねる音が聴こえた

波がやってきて、やはり向こうでも

魚が跳ねたのだと知った

そうしてやってきた見たこともない魚が作った波と

この波とが、交差して

波の合流点があちらこちらに点在し始める

真っ黒な魚たちの鱗が

鈍く光り始めて

鱗一枚一枚が柔らかいネオンのように光ったり消えたりする



リズミカルに光る魚たちがあちらこちらで飛び跳ねる

優しい波が愉しさを増して

しずくの宝石を夜空に吹き上げる

穏やかな光を放って

魚たちが飛び跳ねる

水しぶきは空で星になって

波は光を受けて交差する

波と波との接点でしずくの宝石が吹き上がって

しゃりらりんと音を立ててから水に沈む



その泉の名前はパラダイスで

水と土との縁でコルシカミントがうっとりと匍匐している

バニラとパパイヤも旬を迎えていて空気はその匂いで満たされている

天から星の鎖が幾つも降りてきて

風に揺られて音が響く

私はその景色をずっと見ていて、

それから一本の星の鎖に手を伸ばした

どうしてその一本にしたのか

自分でもわからなかったが

私はその一本を選んで引いた

星の鎖は緩んで、連れてきた…

そうして来たのが、きっときみ。



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