バリアフリー映画

※この文章には障害者差別と捉えられるような話が含まれています。しかし、そういった方々に対して悪意をもっての発言ではありませんので、予めご了承ください

おはようございます。
映画強盗です。

何年前くらいからでしょうか?
主に大作と呼べる日本映画(アニメも含む)のDVD/ブルーレイに視覚障害者用の音声ガイダンスが収録されるようになりました。

目が見えない、見えにくいという人にも映画を楽しんでもらいたい。素晴らしい事だと思います。

具体的にどういうものかというと、本編映像のありとあらゆる動きや景色を言葉で解説するというもので、例えば「男が車から降りてくる」「沢山の薔薇が咲いている」など、こと細かく早口言葉でどういう映像なのかを解説しているのです。中には「顔がだんだんアップになる」とか「景色が左から右斜め上に移動する」などのカメラ割りを解説している場合もある。これは実際の視覚障害者の方がこういう表現なら分かりやすいという監修の元で制作されているようです。

私は興味本位で全編この音声ガイダンスで鑑賞したことがあります。私には経験が無い事なので、視覚障害者の方が普段どれだけ不便な生活をされているのかというのは想像も出来ませんが、この音声ガイダンスで鑑賞した感想として、視覚障害者の方はこれで映画を楽しめるのだろうか?という思いと、その反面で健常者はちゃんと映画を観てるのか?という事を思いました。

映画を楽しめるのか?という点に関してですが、この音声ガイダンスというのは、映画本編の音声に被せて流れるものである為、ストーリー上重要な台詞などを聞き逃す可能性があります。先にも言いましたが、視覚障害者の方の生活という理解が私にはありませんので、もしかしたら聖徳太子ではないですが、違う会話を同時に聞いて両方理解できる能力をお持ちかもしれませんから、一方的に言い難いことではあります。状況説明にしても、目が見える私からすると、それ別に言わなくても良くない?と思うものも多々ありますが、それもまた視覚障害の方にとっては想像する上で必要な事かもしれません。

健常者はちゃんと映画を観てるのか?という点に関してですが、最近映画館でスマホを操作するけしからん人間が増えているというニュースがありました。それは本当にもっての他ですが、自宅で配信なりパッケージなりで映画を観る際は、私も頻繁にスマホを操作してしまいます。いわゆる、ながら見をする訳です。ながら見という行為は画面を見ないで音声だけ聞いている状態で、台詞とチラ見の映像だけで、なんとなくストーリーを理解して楽しんでいる訳です。それというのは、視覚障害者の方が鑑賞するのと比較するのは大変失礼でおこがましいとは思いますが、同じような事ではないでしょうか?本来そんな見方をするべきではないですし、映画を観たいのに観ることができない視覚障害者の方々に申し訳ないと思います。しかし、映画の視聴手段が増えた現代では、そういったながら見も楽しみ方のひとつに成りつつあるのが現状ではないでしょうか。逆に言えば、そういうこともあり、これまでは映画鑑賞自体を基本的には諦めるしか無かった視覚障害者の方でもより楽しめるように今回の音声ガイダンスというのは作られたのだと察しています。

何年か前にそういった音声ガイダンスが収録された作品が出始めたのですが、現在はというと、冒頭で言いました大作と呼べる日本映画(アニメも含む)のほぼ全てにおいて収録されています。それ自体は非常に素晴らしい事だと思う一方で、業界を上げてそこまで徹底して普及出来る体制があるのであれば、その前にもっと普及させるべき事があるのではないかと思ってしまいます。

レンタル店に行くと未だにDVDしかリリースされていない作品が山ほどあります。別のテキストにも書きましたが、今世間で販売されているテレビのほとんどが4K対応ですし、2011年の地デジ化以降、全てにおいてHD対応テレビしかありません。約10年も前の話なので、すっかりハイビジョン慣れした人は多いのではないでしょうか?私自身は、映画鑑賞がメインの趣味なので、早くからブルーレイに切り替えていました。本当にDVDしかリリースされていない作品を除いて、もはやDVDの画質では到底満足できません。世間的な需要と製造コストの問題等色々足枷があるのは理解できますが、この時代において新しく製作された映像作品がDVDしかリリースされないというのはどういう事なのか。販売用の商品ではブルーレイもリリースされている作品はありますが、そもそも一本数千円もするパッケージはあまり売れないという状況でそこだけに投入するというのはいかがなものでしょう。ユーザーが手軽に広く利用できるレンタルのほうにこそ提供する必要があるのではないかと思っています。そういう、高画質で映画を楽しみたいという人の思いは全く普及せず、視覚障害者の方が楽しむコンテンツは積極的に普及するというのは、なんか解せません。

DVDで十分と言う意見はどういうものなのかを理解する為に、そういうコメントを積極的に見るようにしているのですが、映画を楽しむという姿勢がちょっとズレているのでは無いかと感じます。コロナの影響で映画館が営業できない問題を取り上げたニュースで「パッチギ!」などの井筒監督が「映画は映画館で観ないと意味が無い」という発言をされていました。大きい画面で映像だけに集中できる環境で観るからこそ感じる物もあったり、作り手が伝えたい事を最大限受けとれるような態勢で観る必要があるという事です。画質というのもそのうちのひとつだと考えています。クリエイターには何かしらこだわりがあると思います。デティールであったり、色使いであったり、そういう情報はDVDの画質だと伝わりにくいと思います。

例えばですが、去年公開されたハリウッド版のゴジラをDVDで24インチ程度のテレビで観るのと、ブルーレイで50インチのテレビで観るのとでは、迫力が全く違います。環境が違うだけで同じ作品を観た時の感想が変わってくると思います。

人それぞれ映画の見方は違いますし、楽しみかたは個人個人の勝手ではありますが、面白さの伝達度が変わってくるのであれば、より満足度を得られる手段を押し付けることも重要だと思います。それによって多くの人がより満足する体験になるのであれば、結果的に業界の繁栄に繋がる事ではないでしょうか?

視覚障害者用音声ガイダンスのように門戸を広げる活動も大事ですが、時代とテクノロジーの進化に併せてユーザー側へアップデートを促す活動も大事だと思います。

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