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舞台挨拶ルポ 前作からわずか10ヵ月後の続編公開。『真・事故物件パート2/全滅』で体当たり演技に挑戦した窪田彩乃、海老野心、小野健斗、石川涼楓がホラーの現場での苦労を語った


フォトセッションの様子。(左から)窪田彩乃、海老野心、石川涼楓、小野健斗

『真・事故物件パート2/全滅』が絶賛公開中だ。12月24日のクリスマスイブ、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で行われた上映後舞台挨拶に、主人公のAD・姫宮を演じた窪田彩乃、前作から続投の小野健斗と海老野心、そして本作が映画初出演となる石川涼楓が登壇し、ハイテンションなトークを展開した。
『真・事故物件パート2/全滅』は、今年2月に公開された『真・事故物件/本当に怖い住民たち』の続編。恋愛リアリティーショーを撮影するために事故物件に集まった面々が阿鼻叫喚の地獄を味わうエクストリーム・ゴア・ムービーだ。前作は心霊ものでありながら、近年のメジャーな日本映画では珍しい強烈なゴア描写で観る者を圧倒し、関係者も驚く異例のヒットを飛ばした。わずか10ヵ月後に公開されることになった続編では、制作費のアップに伴い、弾け飛ぶ血肉が大増量。口から内臓を吐き出し、手足がもげ、頭部がスイカのように粉砕される、R-18指定も当然の過剰なバイオレンスが満載の映画に仕上がった。監督・脚本を手掛けたのは前作に引き続き、佐々木勝己。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019に出品された『星に願いを』でのバイオレンス群像劇で話題をさらった気鋭の映画監督だ。それぞれにバックボーンのある登場人物たちの入り乱れる思惑や変化する人間関係、相互に影響し合う過去と未来など、複雑な構造を限定空間で展開するという前作でも見られた佐々木得意の演出法で続編も攻めてくる。
 そして、やはり最も注目するのは血と臓物が飛び交う大残酷絵巻。この日の司会進行を務めた、映画パーソナリティの伊藤さとりが観客に対し「クリスマスイブにこんな残酷な映画を朝早くから観ていただいて」と言い、笑いを誘う(朝10時30分からの上映回だった)。初めての映画出演でさらにゴア描写を初体験した石川は「めちゃめちゃ大変でした。初めて血糊を見るところから始めて、何テイクも重ねて」とホラーの現場での苦労を語った。使われた血糊について、小野は「”おいしい”と言ってスタッフさんが渡してくるんですけど」とスタッフからは安心させられることを言われたそうだが、実際はかなりまずかったようで、それには登壇した皆が同意する。石川は「一週間くらいずっと口の中に残っていて、歯磨きしても口から赤いのが出てくるんですよ」と撮影後も続いた、血の悪夢を振り返った。
 前作で主人公の佐久間を演じた海老野は「私、ここ(ヒューマントラストシネマ渋谷)が今年で二回目なんですよ。一年で同じ(映画シリーズの)舞台挨拶をするって変ですよね」と驚きを隠せない様子。本作がいかにハイスピードで作られたかがうかがえた。石川は撮影開始の前月に出演が決まったそうで、台本を2週間くらいで覚えるようにと言われたという。海老野と石川も撮影開始当日に完全版の台本を渡されたことを明かしたが、小野は「僕は完全版の新しい台本、もらっていない」と他のキャストとの格差を明かし、場内からは笑いが起こった。
 演出に関する細かい指示はあまりなく、自由に演技できたという。監督の佐々木について、小野が「監督はあまり喋るタイプじゃないから」と言うように、海老野や石川も現場ではほとんど佐々木と会話はなかったそうだが、小野は「グロい話とかしだすと、止まらなくなる」と佐々木のホラーへの偏愛ぶりをうかがわせる一面を明かす。
 窪田もゴア・シーンに関しては苦労が多かった。「鹿のあばらを人のあばらに見立てて解体していくんですけど、削ぎ落としていくのが難しくて」と凄惨な現場を思い返しながら語る。それらの残酷描写のシーンについて、何を意味しているかの説明が佐々木からあったかと問われた窪田は「ないです」と即答し、場内を沸かせた。だが、窪田が演じたキャラクターのAD・姫宮役に関しては、他のキャストと違い、佐々木から具体的な指導があったという。窪田は「”この役はこういう子だから”とか、”上司との関係値もしっかり作ってほしい”とか言われました」とコメント。続けて、「佐々木さんが言いたいことを私が台詞として言っているのもあるかもしれないですね」と過酷な撮影現場で奮闘するAD・姫宮に佐々木が込めた思いに迫る。そして、「それこそ”ユーチューバー嫌いだ”とか」とオチをつけるように笑いを交えて佐々木の人柄を明かしたが、そこに関しては海老野と石川は気まずかったそう。海老野は「私たち、恋愛リアリティーショー出身で、ユーチューブもやってるんですよ。嫌われてるのかなって」と心配だったことを話した。その海老野が演じた佐久間は前作で死亡したが、とある理由により奇跡の復活を果たす。海老野は「パート2をやるって聞いたとき、ひと事だったんですよ、(私が演じた佐久間は)死んだし。次はないだろうと」と思っていたとのこと。だが、まさかの同じ役での続投。さらに、復活後の佐久間は前作以上の激しい血まみれバトルを繰り広げる。小野が演じた安藤との前作から続く因縁に佐久間がどう決着をつけるのかも見どころだ。
 伝説的ホラー『リング』の脚本を書き、自身もホラー映画の監督作をいくつも発表している高橋洋による『霊的ボリシェヴィキ』や『ザ・ミソジニー』に出演した河野知美が、まるでスターシステムを思わせるオカルティズムあふれる役柄で本作に登場。河野演じる謎めいたキャラクターが登場する後半から、映画はいよいよ全編真っ赤に染まりだす。本作が常軌を逸したゴア描写に彩られていることをあらためて思い返すように伊藤が「ふと思うんですよ、ご家族はこの映画を観て、どういう風に感じたんだろうか」と発言。石川は「まだ観てないです。親に勧めていいものか」と不安を口にする。しかし、海老野は「私の親は喜んで観てた。”すげえな、お前。口から内臓出てる”って」と、あっけらかんと話す。海老野は、その理解ある親から役づくりについてアドバイスを受けたという。「前作の佐久間はピンクのカーディガンを着て、女子高生っぽい感じでかわいかったけど、今回はダーク佐久間。あんまり台詞もない中、表情だけとか、顔や目、肩の動かし方だけで、どう表現すればいいかが分からなくて。私の父、『クローズ』とか、そういう殴る系の映画も好きなので、”そういうのを観て勉強すれば”と言われた」と述懐。そして、助言の甲斐あってか、伊藤が「ドスの利いた声だった。完全にヤンキー系の映画に登場するような」と感想を口にするとおりのダークヒロインぶりを発揮していた。
 舞台挨拶の最後は観客へ向けてのメッセージが伝えられる。窪田は「一回観ただけじゃ内容の理解がすごく難しいと思うので、何回も観てもらえたら。ゴアが好きな方もだし、コメディもちょっと強めだったので怖いのが苦手な方も観ていただけると思う。何回でも観て、盛り上げていっていただけたならと思います」と作品の魅力をアピール。小野は「この映画がいつまで上映されるかは皆様のご協力次第となっております。SNS等を使って広めていただければ、僕たちも嬉しく思います」と本作が長らく愛される映画になるよう観客へ思いを託した。【本文敬称略】(取材・文:後藤健児)

『真・事故物件パート2/全滅』は12月23日より全国ロードショー中。
公式HP/https://shin-jiko.com/


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