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BOOK REVIEW 『UFO手帖8.0』Spファイル友の会刊行! 私は宇宙人を見た! 映画『宇宙探索編集部』の元ネタになった雑誌紹介まで、今年も充実の一冊!

 年に1度のお楽しみ、Spファイル友の会が発行したZINE『UFO手帖』8号目のメイン特集は「UFO DIG-UP!」(UFOを掘り返せ!)。

「UFOを折り返せ!」のテーマが素晴らしい『UFO手帖8.0」、その心意気や、『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』のロケ場所を探し出す『サッド・ヒルを掘り返せ』に通じる熱意がある!

 何かと売名・金目当てでUFOや宇宙人を目撃したと証言し、遂にはカルト化するコンタクティーも多い中、“よくわからないが、怪しい宇宙人と接近遭遇したらしい”、“UFOと死”、“UFOとSEX”といった具合に、これは何だ! といった記事が冒頭から目白押しなのだ。本書で集められた宇宙人やUFOの奇妙な事件の数々は、我々をUFOに魅せられるきっかけとなる、フとしたきっかけで雑誌やテレビでフと見てしまった空飛ぶ円盤ネタで、その多くは語り継がれず、UFO研究史的にも残らずにいつの間にか記憶の果てに追いやられるものを、新鮮な驚きでもって蘇らせてくれる。UFO本はやはりこうでなくてはいけないと思う。
 ここしばらくの間、UFOについての語られ方が変わりつつあると思える。あいも変わらず不毛なビリーバーとスケプティクの対立、NHK-BSの『ダークサイドミステリー』のようなオカルトをカルチュアル・スタディーで見直していこうという動きが活発化している。80年代以降、矢追純一のUFOスペシャルで空飛ぶ円盤と国家が裏で繋がっているといった陰謀論や宇宙人解剖フィルムなど偏った話題が続き、空飛ぶ円盤事件が持っている原初的な不思議〜70年代の矢追純一特番でやった「芸人さんが数名の小型宇宙人の追いかけられた!」といった恐ろしくも怪しくもあり、それでも「UFOの歴史」には残されていないような事件。UFOは都市伝説の一部であり、幽霊目撃のような怪談にも通じる出来事であると再認識できる。 
 本書に収められた宇宙人接近遭遇記事、最初は「サンダウンのピエロ」事件から幕をあける。事件は1973年5月の4時頃、7歳の男の子と女の子が遊んでいると、救急車のサイレンのような奇妙な鳴き声に気づく。2人がその声がする方向へ行ってみると小川の下に青い手袋をはめた奇妙な人物がいる。その河合人は川の中から落とした本を拾おうとしていたらしい。その後、その謎の人物は金属でできた小屋に入っていくが、その建物には窓がひとつもなかった……。子供達による目撃再現図がちょっと異様なものなのでUFO界隈では話題になったが、その宇宙人の奇妙な姿が先行し(表紙イラストにもなっている)、詳細な記事はなかなか出なかった。

サンダウンのピエロ。多分、宇宙人

 この事件を筆頭にソビエト時代のUFO ウェーブ、「X博士」のUFO遭遇とその後の顛末からアメリカの公民権運動とUFOなど、13の記事と変わった宇宙人目撃コメント・コラムなど、何回読んでも不思議な感覚がジワジワと脳を刺激する。
 連載も充実。「UFOと映画」ではなんと幻の名作だった『異次元へのパスポート」が取り上げられる。「UFOと本」ではアメリカで発行されているUFO本を読み解く、いわば「UFOの歩き方」(DIG UPの別項目で世界に散らばるUFOモニュメントをgoogle mapで見るQRコードもついている)もどれも面白いが、白眉は映画『宇宙探索編集部』の元ネタになった中国のUFO雑誌『飛磔探索』についての記事。

UFO者には涙なくしては観れない感激作『宇宙探索編集部』

 毛沢東の死後、80年代に入り、中国にも海外の情報がいろいろと入るようになった時代、アメリカの中国系UFO研究者が出版社に売り込みをかけ、地方の出版社がこれを引き受け、創刊号10万部を発行。これが話題となって最盛期には30万部を売ったという。この記述は中国とソ連の海外向け雑誌でUFOはどう扱われたかという記事の中にある。
 唯一、悲しかったのは稲生平太郎による連載「アズ・フォーティアン・ワールド」が最終回になったこと。その理由がまた不思議で、スロッピング・グリっスルのジェネシス・P・オリッジが悪魔崇拝者という記事なのだが、稲生はこの原稿を読み返すと違和感があり、どうやら別の人物が書いたのではないかと考えるのだが、その人物はすでに亡くなっていた、というもの。この「怪しさ」もまた『UFO手帖』の魅力である。
『宇宙探索編集部』(と、シャマランの『サイン』)に感銘を受けた人なら絶対に読むべきだ。そして来年の新刊に思いを馳せよう。『宇宙探索編集部』の編集長のように。

『UFO手帖8.0』は税込1200円。本の入手方法は、Spファイル友の会(https://spfile.thebase.in)にアクセス。そこからSpファイル友の会baseにて購入可能です。

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