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新しい出会いが、新しい世界を広げる。『はっぱくん』

『はっぱくん』
伊藤正道/文教大学/丸善プラネット

本日も伊藤正道さんの絵本をご紹介したいと思います。
今回の主人公は髪の毛に葉っぱが生えている不思議な男の子「はっぱくん」。
小学生の女の子ナナちゃんと、はっぱくんの出会いを描いた1冊になります。

ナナちゃんは小学校に通う女の子です。
4月に新しい環境に身を置くことになった子どもたちはきっと、
ナナちゃんと同じように新しい出会いの数々に胸を躍らせていることでしょう。
僕自身も2019年から新しいお仕事をしているので、
そういった点から見れば、ナナちゃんと同じような環境に身を置いているのかもしれませんね。

学校へと通う道で出会う草や花々。
風や空気も今まで感じたものとは少し違ってきたように感じるナナちゃん。
新しい環境が、ナナちゃんに新しい視点や気付きを与えてくれているのでしょう。
周りから「成長したね」と言われることはもちろん嬉しいことですが、
自分でその変化に気付けるのもまた嬉しいものですよね。

まだ出会ったことのないものとの新しい出会い。
今まで当たり前のように感じていたものに疑問を持つ。
環境が変わることで、自分自身の考え方や見える景色は変わっていきます。
もちろん、そこに不安が生じることもあるでしょうが、
その不安以上に新しい道へと進むことで大きなものを得られる可能性もあります。

ナナちゃんにとっての、
新しい出会いははっぱくんという男の子でした。
髪の毛からは葉っぱが生え、来ているTシャツには葉っぱが茂る枝が描かれています。
はっぱくんの柔らかな表情は、相手に不思議と安心感を与えてくれます。
この温かな表情こそが、伊藤正道さんの絵の魅力だなと感じています。

はっぱくんが通った道には、
次々と緑の草や木が生まれていきます。
はっぱくんと、追いかけるナナちゃんが描かれた見開きページは圧巻の一言。
その前のページで描かれている校庭から、
一瞬で緑の世界に連れて行ってもらったような感覚です。

不思議な世界へと旅立ったはずなのに、
この絵本を読んでいると「現実世界の素晴らしさ」を感じることができます。
普段見ている景色も、見方が一つ変わるだけでまったく違った景色に映る。
そのきっかけを与えてくれたのは間違いなくはっぱくんでしょう。

この絵本を読むと、いつもの通り道をゆっくり観察したい気分になります。
僕は平日がお仕事で、毎日同じ道を歩いて会社へと向かっています。
5カ月目ということもあり、ゆっくり観察することは少なくなってきました。
「同じ道」という認識があるのかもしれません。

ですが、きっといつもの道でも見方を変えれば小さな変化が見つかるはずです。
そうすれば、きっと新しい出会いが待っていて、
自分の世界が少し広がっていくのかな?
そんなことをこの絵本を読みながら考えていました。

大人になると、子どもの時より観察することが少なくなっています。
だからこそ、大人の方にもこの絵本を読んでもらいたいです。
もしかしたら、はっぱくんが新しい世界へと連れて行ってくれるかもしれませんよ。

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