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【彩雲国物語】外伝「空の青、風の呼ぶ声」角川文庫/ビーンズ版の違い

⚠️この記事は、BL要素(燕青×静蘭)が含まれますので、ご注意ください



2023年3月22日発売 彩雲国物語〈蒼き迷宮の巫女〉が、角川武蔵野ミュージアム隣の建物の書店で早売りしてたので、短編集〈空の青、風の呼ぶ声〉を読み比べしました。

KADOKAWA直営の体験型書店「ダ・ヴィンチストア」
東所沢・角川武蔵野ミュージアム

⚠️ネタバレ

■ 文庫版では言いまわしが分かりやすくなっている
■ 銀次郎のもふもふ感が増してる
■ 清苑の初登場シーンの描写が細やかになってる
■ 燕青の『小猿』エピソードが追加

加筆箇所

■ 小兄が清苑をあやすように頭を撫でた(P.346)
■ 燕青を見てセイが安心してる描写(P.363)

カット箇所

( 燕青→セイへの回想) 二度と一人にはしない

ビーンズ版P.15

ここがカットされてて双玉(燕青×静蘭)ファンの自分は涙目😭
ここだけに限らず雪乃先生、燕青→→→静蘭の確信的な描写がカットされてます…


そのほか

双玉(燕青と静蘭)の会話や描写が絶妙に変わっていて、
特に燕青ファンの方はぜひ読んでいただきたいです!!

☑月明かりの下で燕青とセイが語り合うシーンで、燕青の陰と葛藤がより分かりやすく描写されている
⇒ 読んで悶絶しました

☑燕青がセイに駆け寄ったシーンである追記がされてます。
⇒ セイがものすごく切なくて愛おしく苦しい。

☑文庫版 彩雲国物語「蒼き迷宮の巫女」の短編集「空の青、風の呼ぶ声」 ・清苑の初登場、燕青との出会いシーン
⇒ ビーンズ版との差異を蛍光ペンで塗るとこんな感じです。
書き換えが一番多いページです。

彩雲国物語 角川文庫版
「蒼き迷宮の巫女」P.296~297
彩雲国物語 角川文庫版
「蒼き迷宮の巫女」P.298~299

秀麗ちゃんを置いて静蘭を選ぶ燕青は解釈違いだし、
劉輝を置いて燕青を選ぶ静蘭は、とてつもない解釈違いだし、
双玉は好きなんだけど、妄想が原作の解釈違いを引き起こして、心が苦しい!!


あとは、

「名前……シュクセイ」
不思議だ、こいつといると忘れていた大切なものが浮かんでくる

燕青はセイ(清苑)と一緒にいると、自身の過去や家族を思い出すのですが、このシーンとつながっていくのが ↓

燕青は仰向いて、祈るように月に喉をさらす。
「…月には、月桂樹が生えた宮殿に美女が住んでるって、ほんと?」

普段こんな風流のあることを想像しない燕青ですが、
自身の殺意を押し殺しながらも、"セイの気配"と、月とあわさって、美しい姉君の記憶を思い出す美しいシーンです。

このシーン、セイ視点の燕青の姿の描写なので分かりづらいですが、燕青→セイ×月から美女の姉を思い出す、ロマンチックなシーン。

気のせいと言われても、双玉的には全力でこうなんです!と推します🤭


想いは遙かなる茶都へ

ビーンズ版にはあって文庫版で削除されてるのが、
燕青が静蘭に「今度はずっとくっついて〜…」の次の文。

『それが燕青の決意だった。広い背中で瞑祥や過去の亡霊から庇ってくれた』(意訳)

ビーンズ版・角川文庫版P.208

これもね……カットされているんです~~~~~


鈴蘭の咲く頃に

藍雪那「公然に双剣を清苑に下賜したのは、状況を変えるための猶予でしょう?」
戩華「なんともならなかったがな」

戩華の口から、状況を変えたいために
双剣を与えたと明言されてる。
(暗き黄昏の宮 角川文庫版P.310)

清苑をみれば夫の面影に触れられる。
父が清苑や王の話をするたび、羨ましかった ⇐太字加筆

ビーンズ版では"父が"となかったので、
清苑が戩華の話を鈴蘭にしてると思っていたけど、
そうではなかった
(暗き黄昏の宮 角川文庫版P.318)

依頼主のわたくしなら陛下の呪いをこの身に返し、あなたの呪を解ける

(鈴蘭の命=戩華の心)、
戩華の命が引き換えだった
 暗き黄昏の宮 角川文庫版P.319


清苑「これでは縹家の思う壷ではありませんか」

カット。これは確かに。
縹家だと感づけたら、その依頼主も気づけるから。
ビーンズ版P.59

いつも目で追っていた父が清苑に振り向くことはなかった。それでよかった。
力があれば振り向いてくれる。
父にとっての霄瑤琁や茶鴛洵のような存在になりたかった。

清苑→戩華

ビーンズ版P.60

「ビーンズ版と角川文庫版、どっちを買えばいい?」と悩んでるかたは、
余力があれば好きな巻は両方揃えることを強くおすすめします。
文庫版のほうは、表現がシンプルにまとまっており、読みやすい反面、ところどころ削除箇所があり、個人的にはビーンズ版のほうが考察が深まる印象です。


やっぱり公式が最大手

実は、彩雲国の双玉(燕青と静蘭)の現パロを雪乃先生が執筆されてました。
タイトルは〈永遠の夏をあとに〉です。

舞台は1999年のとある田舎。
羽矢拓人(12歳)と弓月小夜子(サヤ・拓人より年上の美少女)を巡る幻想文学風な淡い恋物語です。
この作品に短編「空の青、風の呼ぶ声」のモチーフが登場します。

⚠️ネタバレ
拓人=燕青、サヤ=静蘭 としてみると、

  • 拓人…6年前のサヤと山で過ごした夏休みの記憶を失っている

  • サヤ…白いワンピースか制服を着ている。月の光ような儚い美少女

⚠️重大ネタばれ ↓ ふせったー↓



☑キーワード「2番目に大切なもの」が拓人とサヤの間で出てきます
⇒燕青にとって静蘭は「2番目に大切」という、
双玉ファンを悩ますキーワードがまさかここで昇華されている

☑拓人はある事情でサヤの記憶を失っていたけれど、徐々に思い出す

☑拓人からサヤへ想いがあるものの、サヤは自己評価がとても低いため、拓人の救いの手を素直には受け取れなかった

☑拓人はピアノが弾ける
⇒燕青の声優さん、某乙女ゲーでピアノが弾けるキャラを担当してました

お話の山場は、泉鏡花「春昼・春昼後刻」をモチーフに
現と夢の境が表現されており彩雲国物語「骸骨を乞う」の「冬の華」に似ています。


拓人のサヤへの想いや関係性が、私のなかの二次創作、
燕青から静蘭への想いに非常に近くて、公式が公式すぎて公式なんだが!?
数年経た現在、またこの感覚を味わえるなんて!

「ひとりの双玉ファンが幻覚を見てるよ」と呆れてらっしゃるかもしれませんが、設定があまりに静蘭と燕青すぎるんですよ!

それを先生が書いてらっしゃるってことは、ものすごくこのふたりのことを先生は大好きだと判明して、もう私はどうしたらいいのか……

ぜひ〈永遠の夏をあとに〉と〈空の青、風の呼ぶ声〉を一緒に読んでみてください!


私のなかの彩雲国の双玉(燕青×静蘭)は
燕青→あなたを看取った後に死にたい(覚悟)
静蘭→あなたのために生きたい(信仰)

燕青には静蘭の死に水を取らせたいし、
静蘭には燕青をひとりにさせたくなくて生き続けてほしい。