港は夕焼けがいい。海があるからだ。
港の向こう岸には工場が見える。煙突からもくもくと煙が上がる。
広がる工場の景色を見てなぜか令和より昭和を想起した。
テクノロジーは比べ物にならないにしろ、向こう岸から眺める分にはその景観は旧来的に見えるであろう。
船の向こうには小さく見える工場と水平線、差し込むピンクとオレンジの狭間の色は夕方頃の時刻を示していた。
左を向けばすっかり陽が落ち暗い空に右を向けばピンクとオレンジの夕焼け、これからどんどん暗くなっていくのを知っている。
オセロみたくはたまたスプラトゥーンみたく切り替わっていく。

海の音は落ち着く。海に限らず水の音がそうさせるのだろう。
水鳥の群が防波堤から飛びたつ。ただいきなり全羽は飛び立つ訳ではなく分散登校よろしく何回かに分けて飛ぶ。そして勢いよく水面にダイブする。

獲物を捕まえているのだろう。
そしてそれは今日の昼食後にトイレに向かう時の自分だと隣にいる彼女に言われた。
台湾ラーメンで胃を痛めていた自分にとっては必然的なトイレへの旅路は、客観的に見てやけに真剣な顔でそして急いでいたようだ。
無理もない。辛い物は胃がNGを出しているから。味は好きだけれど。

日が落ち始めた。そしてホテルに戻る。
預けていた荷物を受付で引き取りに行きその後駅まで10分弱歩く。
刻一刻と近づいている駅と別れの時間。
改札の前で彼女を見送る。彼女が言う。「ハグはできますか」
答えは決まっている。そして見送り俺は新幹線のチケットを買った。指定席は売り切れだった。

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