見出し画像

『いま、反転のまっただなかで』プレレビュー Vol.1 ―岩田守

岩田守(照明家)
―北九州市戸畑区出身。
 大学卒業後、北九州の照明会社に入社。
 北九州福岡で活動する劇団の照明を多数担当している。

 小倉の街を中心にDJとしても活動中。

  ブルーエゴナクは忙しい。とにかく多作です。彼らと出会って約10年。
  すごい数の作品を日本各地で生み出してきています。彼らのすべての作品を見てきたわけではないですが、振り返ってみると、作品ごとに挑戦している事は多々あれども、やっていることは出会った時と大きく変わっていないのです。
  ブルーエゴナクの人たちは新しいものに敏感です。話をしているとあれやこれやと新情報が多く、こりゃ忙しいのも分かるわ。と思います。が、やっていることは大筋10年前と大きく変わっていないのです。

  そんな中で前作?(とにかく多作だ)『バスはどこにも行かないで』は、僕が見た中でエゴナクNo.1の作品でした。その前のNo.1は『眺め』でした。そしてその前は……(多作だ)

2022『バスはどこにも行かないで』
(撮影:岩原俊一)
2021『眺め』
(撮影:岩原俊一)

  そう、言うならば彼らは、毎年自己ベストを更新し続けているのです。そう感じさせる要因はたくさんありますが、ひとつ大きく言えるのは、作品毎に自分たちの持ち味が洗練されてきているのです。作品を構成する諸々のバランスが良くなり、エゴナクが放とうする、「不確かだけどずっとある心の記憶」が物語を通して気持ちよく体験できるようになったと感じます。不安定な浮遊を経ても着地を共有できるのです。そう、心地よくなった。

  そして今回『いま、反転のまっただなかで』です。またどっちつかずなタイトルです。

  その前に、あれ、『波間』って12月だったよね(多作ってなんですか?)

2023『波間』
(撮影:脇田友)

  それはそうと、なぜ僕がこの文章を書いているかという所です。いつもエゴナク観劇後に穴迫氏に感想メールを送っている事も縁あって、今回の作品において、事前に稽古を見学させてもらいその感想を書くことになった。という次第です。勿論、自身未経験の事案です。なので、今作というよりエゴナクのことを考えているうちに、文字数がかさんできました。さて今作の話です。

  僕が参加したその日は、台本が書きあがった日でもあり、稽古場はその結末に安堵感と切迫感がサインカーブを描いていました。出来上がった台本を手に、最後まで読み合わせをした後、頭からいけるところまで通してくれました。いつものメンバーと新しいメンバーそれぞれが粒だって見え、これは穴迫氏の戯曲と演出が俳優陣とうまく噛み合い洗練されてきた証拠だなぁと再確認しました。そして、ここにエゴナクには欠かせない技術スタッフ陣が加わります。演出面においてスタッフの連携がよくなってきているのも作品性があがっている証拠だと感じています。

『いま、反転のまっただなかで』稽古中の1シーン
(撮影:岩原俊一)

  今回の物語も、この街(小倉?)の持つ、独特の湿り気と決して垢抜けない香りのるつぼを漂わせています。あぁ、あの辺の雰囲気だなぁと。
  みんな、なんとなく生きていようが、生き急いでいようが、生活の中でネガポジを行ったり来たりしながら、何とか人生を全うしようとしています。そんな身近な人たちが出てきます。抗うも抗わずも人それぞれ。青春は残酷だといったのは大島渚で、残酷じゃないと歌っていたのは花江夏樹だったよなぁ。とか思いながら稽古を眺めました。

  どこにでもある街で生きる登場人物たちが、記憶と未来を照らし合わせながら、この街でおこる小さな変化に気づいたところから始まる物語。現代社会をも連想させる滑稽で哀愁の反転劇です。

  初日まで一週間。稽古も熱を増していると思います。勝手に「~でシリーズ」と呼びながら、今回もエゴナクNo.1を更新するだろう作品を楽しみにしています。
  皆様もぜひ、エゴナク史上No.1の作品を観に来てください。

2024年1月21日 岩田守

ブルーエゴナク 新作本公演
『いま、反転のまっただなかで』

作・演出 穴迫信一

出演
悠太   小関鈴音   なかむらさち   加茂慶太郎   田中凜
内田ゆみ   寺田剛史   高山実花   姉川華

2024年
2月2日(金)19:00 
2月3日(土)14:00 / 19:00
2月4日(日)14:00

会場:J:COM北九州芸術劇場 小劇場

公演詳細・予約
ブルーエゴナク 新作本公演 『いま、反転のまっただなかで』 | ブルーエゴナク (buru-egonaku.com)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?