見出し画像

朗読劇『この色、君の声で聞かせて』で新しい可能性を見せてくれた南早紀さんのお話

声優さんは『声が優れている』と書くように、声そのものが綺麗だったり、声色や話し方で役を表現する人たちです。今回南早紀さんが演じた役は、そんな声優さんだからこそ難しい役だったのですが、南さんは今回も想像以上のものを見せてくれました。そんな南さんの凄さを少しでも多くの人に知ってもらいたくて、こうして筆を取りました。拙い文章ではありますが、少しでも南さんの凄さが伝われば幸いです。


1.南早紀さんが演じた『渡来夢』というキャラクター

そもそも『この色、君の声で聞かせて』がどんなお話かを簡単に説明すると、主人公の『伊吹翔太(いぶきしょうた)』が、屋上で独り絵を描き続ける少女『渡来夢(わたらいゆめ)』と出会い、その魅力に惹かれていく中で、彼女の秘密と向き合うことになるお話です。詳しくは以下のリンクをご確認ください。
※これ以降の文章は本編のネタバレを含みます。

さて、この『渡来夢』というキャラクター、生まれつき耳が聞こえなくて、声も上手く出せないという設定があります。それ故に人とのコミュニケーションがうまく取れず、この朗読のテーマとなる『伝える』という事に苦しむことになります。本来なら素直で明るい子のはずなのに、声が聞こえず、声が出せないが故に無愛想な子と認識されてしまい、孤立することになってしまいます。
この、声を届ける仕事である声優だからこそ余計に難しくなってしまう役柄を、南さんは見事に演じてくれました。南さんの新しい可能性を垣間見れた、とても嬉しい機会となったんです。

2.南早紀さんが渡来夢をどう演じたか

声がうまく出せない人は、次第に話すこと自体をしなくなってしまうそうです。過去に何名かお会いしたことがあるのですが、声のことを指摘されるのを恐れて、手話や筆談がメインになっていました。話してくれる人も、口の動きからしか声の出し方を学べないので、舌や息の吐き方を使う発音の正解がわからず、子音が抜け落ちたような話し方になってしまうんです。そして今回の南さんは、当時お会いした方とほぼ同じ話し方をされていました。ただ台本を見ただけではわからない話し方を、しっかり再現されていたんです。
1番わかりやすいのは、主人公の伊吹翔太を呼ぶ時の『いぶきくん』でしょうか。子音を抜くだけなら『いういうん』と発音すれば良いんですが、南さんは2文字目の『う』を微妙にこもった風に発音していました。『ぶ』を実際に発音するとわかるのですが、『ぶ』と発音する際、どうしても一度唇を閉じる必要があるんです。そして息を強めに出すことで『ぶ』と発音できるのですが、この『息を強めに出す』というのがわからないので、唇を一度閉じて『う』と発音することしかできず、少しこもった感じになってしまいます。南さんはこれをしっかり再現されていたんです。この『いぶきくん』以外にも、特有の発音がいくつかありましたが、南さんはこれらにしっかり対応していて、おそらく声をうまく出せない人の話し方を凄く勉強されたんだと思います。南さんが初日の公演を終えた後、『一音一音大切に演じたいと思います』と仰っていましたが、きっと話し方を勉強していくうちに心掛けたいと思ったのではないでしょうか。

3.言葉にできずとも伝わる感情

『渡来夢』を演じるにあたり、完全に話し方を再現すると本当に何を言っているかわからなくなってしまうので、ある程度ニュアンスで伝えられる努力をされていたのではないかと考えています。例えば身振り手振りだったり、表情だったり、声の抑揚だったり。特に屋上の絵を塗りつぶしてしまうシーンでは感情のままに叫んでいたこともあり、声だけではどうしても聴き取れないところもありました。
それでも夢が何を言いたいのか、何に苦しんでいるのかは痛いほど伝わってきて、言葉にできずともハッキリと感情を伝えてくる南さんの表現力の凄さを改めて感じました。
南さんが朗読を行う際、読み上げを始める数秒前から周りの空気が変わるような感覚を感じることがあります。間近で拝見していると、南さんの方に引き込まれるような感覚すら感じるんです。多分あの瞬間に、南さんは完全に役に入り込むのだと思います。一旦入り込むと、スポットライトが当たっている時はもちろん、暗転している時すらその雰囲気は途切れることはありません。特に今回は暗転中もずっと絵を描く仕草をしていたので、余計にそう感じたのだと思います。そして、前述の絵を描く仕草を始め、南さんは身振り手振りや視線の移動、表情の変化で情景までも表現してくれるので、夢がどういう子なのかが凄く伝わってきます。今回で言えば、普段は無愛想に見えるのに、相手の言葉がわからない時の首の傾げ方や、筆談をする時の必死な様子、スマホでメッセージを送る時の緊張している様子などから、この時点で全く声を出していないにも関わらず、根は素直な良い子だというのが伝わってきたと思います。もし南さんがこれまでと同じ役作りをされているのなら、夢がどういう子なのか、どういう時にどういうことを思うのか、きっとこの時はこういう風に感じるんだろうな、ということを徹底的に掘り下げた上で演じているはずなので、演技に説得力がありますし、南さんが演じる夢の叫びは心に染みるのだと思います。今回も夢が『消えたい』と願うたびに心が辛くなりましたし、何度でも声を聞きたい、わかるまでゆっくりと話を聞かせてあげたいと、そんなことばかり考えてしまいました。この感情の発露こそが南さんの表現の真骨頂だと個人的に感じています。そしてこの感情に引っ張られてしまって、私はいつも南さんが演じる役の幸せを願わずにはいられないんです。

4.そしてお見送り会へ。

今回初めて南早紀さんを知った方はびっくりされたのではないでしょうか。さっきまでの陰鬱な雰囲気を吹っ飛ばすような、勢いのある明るいキャラクターに。本来南さんはあんな風にとても楽しい方で、ファンのことをとても大切にしてくれる優しい方です。今回のお見送り会でも、一人一人をしっかり見て、短い時間で何かを伝えようとしている人のことをなんとか理解しようと頑張ってくれていました。私が手話で想いを伝えようとした時も、じっくりとこちらの目を見て理解しようとしてくれたんです。南さん、本当にありがとうございます。多分わかりづらかったよね、ごめんなさい。他の方とも、眩しいぐらいの笑顔で全力で手を振ったり、共手話でお互いにやりとりしていたりと、とても嬉しそうだったのが印象的でした。

5.最後に

南さんはファンとの交流を凄く大事にしてくださっていて、個人のイベントで予定になかったお見送り会をしてくれたり、すぐにファンのことを覚えてくれたり、相談コーナーで親身になって話を聞いてくれたりと、例を挙げたらきりがないほどです。今回のお見送り会が決まったときもすごく嬉しそうで、なんとか喜ばせてあげたいという気持ちでいっぱいになりました。ああいう方だからこそ、私も全力で応援したいと心から思えるんだと思います。
もし今回の朗読劇で南さんの事を少しでも『良いな』と思ってくださった方は、ぜひ南さんの個人番組を見てみてください。お見送り会の時のような明るくて優しい人柄をたくさん見ることができます。

この布教を持って、本文は締めたいと思います。最後までお読みくださり、ありがとうございました。

■南早紀の変な意味じゃなくてただ可愛いって言いたいラジオ

■南早紀の唐揚げはおあずけ

■のむこがみなみ

■らいぶら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?