【バイドゥが初の四半期赤字 迫られる戦略転換】 ほぼ中国ビジネス(346号)

当メルマガ編集長の江口です。

当メルマガ編集長の江口です。

6/4天安門事件が終わってもVPNは想像以上に厳しいですね。中国生活12年の中でも特に厳しいような気がします。

私も万が一に備えて複数VPNを利用していますが、どのVPNも結構苦戦しています(泣)

そんな中、弊社で提供している問一下という微信での中国ビジネス問合わせサービス(200元/月)に無料で付帯されているVPNは、毎日サーバーが更新して無事利用できています。初月は無料トライアルできますので、この機会にぜひご検討ください(申込は、このメルマガの返信またはinfo@gml-sh.comまでお願いします)

問一下の微信グループでは、私も適宜日々気になったことをつぶやいております。

それでは今週のメルマガをお届けいたします。


■今週号の目次:

1.【気になる中国時事ネタ解説】
2.【編集長の独り言】
3.【編集後記】

■【気になる時事ネタ解説】

時事ネタの中から気になるものを編集長江口の独断と偏見でセレクトし、 個人的な見解をコメントするコーナーです。

「中国」「中国以外」それぞれのカテゴリーに関して私自身の主観的な 基準で、面白い・価値があると思う時事ネタを各10個程度に絞り込んで ご紹介します。

(1)【中国激怒:Huawei宛小包をアメリカへ誤送?】
遠藤誉先生のコラム

(2)【中国はトランプ訪日をどう報道したか】
こちらも遠藤誉先生のコラム。他の中国コラムニストとは圧倒的に説得力が強い…と個人的には思う

(3)【中国の逆襲「レアメタル」カード】
カードを切るぞ切るぞの見せあいが続くか。ここで北朝鮮が絡んでくるかもしれないのは複雑。

(4)【“絶体絶命”のファーウェイ、「伝説の創業者」のDNAに見る“それでも強気な理由”(後編)】
華為の任正非さんは、中国の稲盛さん、永守さん的な位置づけなのかも

(5)【スタバを猛追する「瑞幸珈琲」がナスダック上場を申請、黒字転換は可能なのか?】
Luckin coffeeのナスダック上場目論見書からみる経営状況解説。そう言えば知らないうちに弊社の上海オフィスにLuckin coffeeのテイクアウト店舗ができていた

(6)【30年前の天安門事件、「流血の北京」克明に=抵抗市民に発砲-防衛駐在官メモ】
忌まわしき事件から30年。違うやり方はあったと思うが、個人的にはあそこで共産党政府が学生に負けていたら、今の強い中国はなかったと思う

(7)【バイドゥが初の四半期赤字 迫られる戦略転換】
BATの”B”は本当にTiktokのバイトダンスに譲ることになるかも

(8)【中国版ネットフリックス「愛奇芸」が狙うエンタメ界の覇権】
百度系の愛奇芸は、資金競争でテンセント、アリババには勝てないかも

(9)【中国発「シェア化粧ボックス」は競合も登場。サービスを体験してわかった課題感】
無人シェア化粧品BOXはどうかな...と思うけど、プロのメークアップアーティストのある友人BOXは行けそうな気がする(特に高級高価格に特化して、繁華街など地下鉄駅前とか便利な所にあれば)

(10)【中国新小売(China New Retail)】
家田さんの中国新小売の知見に関してまとめたスライド

---ここから中国と無関係の日本等のトピックTOP10---


(1)【炎上した「ロケットプロジェクト」の支援を続けた、本当のワケ】
ホリエモンロケットの支援をしたひふみ投信の藤野さんの話。まさに経営や投資のギリギリのなかでの意思決定の話。たられば、の話をしても仕方ないが、もし3号機も失敗して4号機になっていたとしたら藤野さんは続けて支援を続けていたのだろうか。 

(2)【「ルイ・ヴィトン」がブロックチェーン技術を導入 消費者は商品の製造工程や真贋の確認が可能に】
前々分かっていなかったけど、ブロクチェーンってこういうところで活かせるのね

(3)【「人生100年時代」に見るアリとキリギリス問題】
誰もが知っていながら、考えないようにしている年金問題をやまもといちろう節で解説

(4)【米億万長者、学生のローン返済を全額肩代わり 卒業式スピーチで発表】
素晴らしい。こういう活動が日本で広がっていくといいと思う

(5)【小さなブルーオーシャンを追え第10回『与沢翼のネットリテラシー』】
安田さんと三澤さんがたわいもない話で与沢翼さんのことを語る話

(6)【一挙に6駅、駅名変更は京急の得意技だった】
我が地元横須賀を走る京急がやっている面白い企画

■【編集長の独り言】
   精神論は捨てて「自然にそうなる仕組み」を構築する

中国でビジネスに携わる日本人がよく犯す失敗が「中国人に正しい考え方を教えてあげよう」という余計なお世話です。

そういう日本人の多くは、よかれと思ってやっていると思うのですが、「人の考え方を変える」という精神論はグローバルビジネスではなかなか通用しません。精神論というキレイで高尚な方法ではなく、インセンティブ(損得)で人の行動を変える…という泥臭い方法に考え方をシフトするべきなのです。多くの人が(自分たちの損得を考えると)自然とこちらの考える通りの行動を行うような仕組み。個別に言って聞かせて考え方を改めさせる…という非効率なやり方ではなく、全体の7~8割に効くルールを設定する方がうまくいくのです。

一昔前は、中国では不正行為が当たり前でした。役人が自分の地位や権限を利用して不正に稼ぐことや、企業の調達担当者が取引先からキックバックをもらうことは、商売の潤滑油なので必要悪だと考える方が普通でした。この状況で「不正は悪いこと」、「コンプライアンスを守るのが当たり前」と精神論を何回唱えても不正は減りませんが、習近平が腐敗撲滅キャンペーンでハエだけでなく虎も叩いて「不正を行うと大変なことになるよ」という強烈なメッセージを送ると、自然と不正をしなくなるようになるのです(それでもゼロにはなりません(笑))。大変なことになるリスクを覚悟して不正をやるよりも、真面目にコツコツ頑張ったほうが得だと思わせることで、個人個人が自分の判断で、こちらの思う通りの行動を自然 に取るように仕向けることが重要なのです。

このような「自然とそうなる仕組み」を作る上で重要なことが3つあります。

1つ目が「公平感」を担保することです。しかも、日本人が考える公平感ではなく、その仕組みで自然と動いてほしいターゲット層が考える公平感を担保することがポイントです。

中国全土に展開するドラックストアチェーンの「ワトソンズ」では、店舗で働くメンバーに月毎にボーナスを配っています。月店舗売上が予算や昨対比の80%を超えたら1人50元、90%を超えたら1人100元のように、月単位の店舗成績に基いてボーナスがもらえる仕組みです。この仕組みの中でポイントは、月ボーナスの金額が「一般スタッフも店長も同額」ということです。普通に考えると、役職が異なる店長と一般スタッフは月ボーナスの金額に差をつけてもいいような気がします。しかし店長のボーナス金額が、一般スタッフよりも高く設定すると「なぜ我々スタッフが頑張って結果を出しているのに、(一見)結果に貢献していない(ように見える)店長を儲けさせなければならないのか」という不平不満が出て、 一番頑張って欲しい一般スタッフのモチベーションが上がらないからです。月ボーナスの金額を役職に関わらず同額にすることで「よし、みんなで一緒に頑張りましょう」となるわけです(当然それだけだと店長に不満が出るので、店長には年間ボーナスでうまく処遇をします)。

2つ目は「短期間で回す」ということです。上のワトソンズの例もそうですが、店員へのボーナスは、年単位、半年単位でやるとだらけるので「月単位」でやるのがいいということです。また中国では、買い物のときの決済は、現金やカードではなく支付宝や微信payなどの電子マネーの利用が増えていますが、その利用率向上に一役買っているのが電子マネーで決済した直後にスマホ上に出てくる「くじ引き」です。1日1回、支付宝や微信payで代金を支払うと、このくじ引きで1元未満のランダムに決まる金額を割引ポイントとしてもらえます。この割引ポイントは、同じ週内に同じ支払方法(支付宝や微信pay)で払った場合に自動的に適用されるので、別の店舗、商品を割引価格で消費できることになります。この場 合は「週サイクル」で回していることになります。このように仕組みごとに適正な(短期の)期間を設定して自然と回していくことが重要なのです。

最後の3つ目は(実はこれが一番重要ですが)、自然にそうなる仕組みを運用するためには、全体最適を優先し「例外的な個別最適を捨てる」必要があるということです。

中国大手ビール会社、青島ビールでは、各地域別の営業責任者を、売上・利益・市場シェアなどの統一KPIで評価しています。上位者から順番に並べて、上位グループは昇格、下位グループは降格(またはクビ)という評価制度を取っているそうです。当然地域ごとに事業・競合状況が違うので、全地域の営業責任者を同一基準で評価すると不平等になる…と日本人であれば考えると思いますが、そういう個別条件は全て無視して統一基準だけで評価するそうです。結果が出しやすい地域に配属されるかどうかも含めて、全て実力という考え方をするのです。もちろん、この評価制度だと、潜在能力が高い人も運が悪ければクビにせざるを得ない可能性があります。しかし青島ビールは「その副作用を飲んででも、ある意味公平な統 一KPIを例外なく適用した方が経営効率がよい」と判断しているようです。自然とそうなる仕組みを正しく運用するためには、「泣いて馬謖を切る」必要があるということだと思います。

このように、人によって価値観のバラツキのある中国やグローバル市場では、精神論ではなく自然にそうなる仕組みを作ることで、まぐれの100点満点ではなく、安定して70点を効率的に取ることが重要なのです。この「自然とそうなる仕組み」は、海外だけでなく、今後カオス度合いが高まる可能性の高い日本国内でも、有効なオプションになると個人的には思っています。


■編集後記

これは便利かも…というアプリを見つけました

【紙が一瞬でExcelシートに! iOS版にも新カメラ機能が登場】
これは便利。だったら「紙が一瞬にWordへ」というのも欲しいなぁと思って探してみるとありました。

【紙の書類をテキストデータに変換できるOCR、精度・使い勝手を話題のサービスで比較】
情弱にならないために、こういういざというときに使えるツールは知っておいたほうがいいかもしれませんね


今回も最後までお読みいただきありがとうございました。これからも日本のビジネスマンの皆さまに役立つリアルな情報を提供できればと思っております。

ご感想・ご意見・ご質問は、お気軽にご連絡ください。よろしくお願いいたします。
お問い合わせ先:info@gml-sh.com

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