「魁‼︎クロマティ高校 THE MOVIE」は実写映画の金字塔という主張と、クロ高に救われた不登校時代の話

 実を申しますとわたくし、魁‼︎クロマティ高校が凄く好きでして。
 ツイッターのアカウントでも上記のように妹への手紙風にカードゲーム・MTGの戦果を呟いているんですが、

 あれのオマージュ元はクロ高の主人公、神山くんが漫画冒頭のモノローグ「拝啓、オフクロ様」を意識してのことだったりします。

 それはさておき、漫画も各出版社のアプリが充実してきて、読み切り漫画でもバズる風景がツイッターでもよく見られるようになりましたね。そうした盛り上がりを見せると決まってちらほら見せるご意見、「頼むから実写化しないでくれ」があります。
 完結した漫画も実写化することによって新たに宣伝されることで、再び注目が集まり、本屋さんでも大々的に並べられているのはよく見る光景です。そうした利益が集まることもあり、映画の質をそっちのけにして実写映画が量産されているのが実情。実写化を嫌厭する方々がいるのもうなずけます。
 ですが漫画実写映画は軒並み駄作なのか? それを改めて追求したく、実写映画の金字塔について語りたいと思います。
 漫画実写金字塔となると、実写るろ剣? 実写ピンポン? ジャッキー・チェン主演シティハンター? いいえ、

‼︎クロマティ高校 THE  MOVIE」です。

 noteに音が添えられるのなら↑のタイトルでめちゃくちゃ爆音を入れたい。それぐらい「よくあれを映画の尺に収めたな」と唸らせられる作品、それが魁‼︎クロマティ高校 THE MOVIEであります。

 あらすじにつきましては下記のURLをご参照ください。

 というか映画のHPがまだあることに爆笑しました。TOPページがiPadからSafari経由で見るとなんかおかしいんですが、あらすじを筆頭とした各ページはまだ見られるようです。
 あらすじを見て長っ!となった方向けに(というか私も見ててなった)、簡単にクロ高を説明しようとすると、「秀才くんが不良の友達と不良ばっかの高校受験したら秀才くんだけ受かってあら大変」的なギャグコメディです。話が進むにつれ全くそんなことはなくなるんですが、とりあえず冒頭は漫画も映画もそんな感じなのでとりあえずそんなもんだと思ってください。

 この映画が公開した当初、実写林田のビジュアルがなんかおしゃれなロン毛だわ、メカ沢の声の担当がアニメと違って若本さんではなく武田真治さんだわで、なんとももやもやしたものです。花の女子高生時代、友人と「なんで林田がモヒカンじゃねぇんだよ」とヤンキーばりにキレていたのを今でも覚えています。
 ここまで述べると典型的な「宣伝だけを目的とした中身のない悪しき実写映画」なのですが、それだけで終わらないのがさすが、あえてクロ高を実写化した映画と言いましょうか……。蓋を開けたら腰を抜かすくらい魁‼︎クロマティ高校だったんですよ……。

 漫画実写映画で最も嫌われるのが「映画オリジナル要素」だと思うんですが、実写クロ高でオリジナル要素に当たる「阿藤快」が恐ろしいほどクロ高とマッチするとは思いませんでした。それから映画内に出てくるゴリ博士、あれもオリジナルだそうです。つい最近まであれは漫画にもいたキャラだと思い込んでいたのですが、実際は映画オリジナルだとか。え、あんなんいなかったっけ? 頭脳タイプのゴリラ……え、ない? マジで? そう何度も確認したくなるぐらいのマッチぶりでした。

 もはやどこまでが原作ネタで、どこまでがオリジナル要素なのかわからない魁‼︎クロマティ高校 THE  MOVIE。こいつの凄いところはオリジナル要素が完全にクロ高だっただけでなく、主人公神山の「一般人みたいな顔をしといて実はどの不良よりもヤバい」を映画という2時間前後の尺でしっかり表現し切ったところにあります。
 ネタバレになるので多くは語りませんが、クライマックスの神山のヤバさはぜひ見て欲しい。独裁者が国民全員処刑するクラスのやべーことをしておきながら、最終的に「争いは愚か」的なことを言い出す様は「これぞ神山」としか言いようがなく、初めて観た当初は「すっげぇ……」しか言いようがありませんでした。
 主人公神山のみに焦点を当てて作られた映画なら、神山の完成度にも納得がいきます。しかしクロ高を原作としているように、ちょいちょい神山がいないパートもあるのです(原作自体が話数を重ねるごとに神山の登場回数が減っていく)。プータンも入っている驚きのボリュームかつ、実写では表現不可能と思われた神山の「なんかやべーぞコイツ」感が遺憾なく発揮されているではありませんか。
 これほど完成された漫画実写映画があるか? 否。とりあえず今日までいろんな映画を観てきましたが、残念ながら他に存在しません。
 かくして魁‼︎クロマティ高校 THE  MOVIEは私の中で漫画実写映画の金字塔を取ったのでした。

 ここまで熱く語ったのにAmazon primeとか誘導先がないのが悲しいですね。どうやらこの魁‼︎クロマティ高校 THE MOVIE、ど こ の 動 画 配 信 サ イ ト に も な い らしいです。
 観たい場合はTSUTAYAへGO! 取り寄せすれば観られます、多分。

 もはや気軽に観られる映画ではなくなってしまって慟哭を禁じえませんが、こうしてなぜか未だに残っている映画告知HPのキャスト一覧を観ていると、あの日の衝撃が鮮やかに甦ってきます。林田、モヒカンじゃないのに凄く林田だったな……。フレディ、国内でフレディの配役を決めるとなったら確かに渡辺裕之さんだったな……漫画版フレディがマスコットキャラ化してたから、むしろ本家フレディに忠実だったかな……。
 観る前はメカ沢の声が若本さんじゃないことについてもはちゃめちゃにキレ散らかしていましたが、観た後は冷静に「茶筒の声に若本さんを当てる方がどうかしている」とアニメ製作陣の正気を疑ったものです。懐かしい。


 こうして改めて思い返すと、魁‼︎クロマティ高校は私の人生に随分と密接でした。
 中学、高校時代、私は人間関係の変化についていけず、不登校&引きこもりでした。私の学生時代、不登校はもはや異常者も同然で、産みの親に正気を疑われるような日々でした。親に泣きながら殴られて消えてしまいたいと願ったこと多数。それと同じ数だけ、自分の死も考えました。
 今日までなんだかんだ生きているのに様々な要因がありますが、その中の一端にクロ高(1〜3巻)がいたなぁと今になって思います。
 なぜ1〜3巻なのかというと、上記の通り私が学生だった頃の不登校児は異常者扱いだったので、当然人権もありませんでした。お小遣いもなく、かといって他に現金収入を得る方法もなく、何かの拍子に親から買ってもらったのが古本のクロ高1〜3巻だったというわけです。1〜3巻を家で繰り返し読み、後の巻は古本屋で立ち読みしていました。クロ高に救われたも同然の癖に、野中先生には全く売り上げの貢献をしておらず申し訳ない限りなのです。現金収入もない、家族からは異常者扱いされていた不登校児ということでご容赦ください。
 さて、読んですぐ「劇的な変化が!」訪れてくれたわけではないのですが、今の自分を振り返ると多大な影響を受けていたんじゃないかと思う点がいくつかあります。
 とりあえず、知らぬ間に救いになっていたのが、主人公神山くんが不良の高校に一人で受かってしまった後のことですね。彼は割と早い段階で、クロ高に見限りをつけます。当時はなかなかに衝撃でした。林田や前田くんとあれだけ意気投合しておきながら(厳密には別にしてなかったかもしれない)、とっとと他校に行くて。無駄に周囲によく思われようとして疲弊し、結果不登校となった私には衝撃でした。良いんだ、合わないと思ったら今の環境を捨てて。
 また、神山くんがパシリにされた時。度重なるパシリに神山くんは発想を転換させ、流通経路を確保し店を出します。そんな方法ってある?と、これまた当時の自分には衝撃的でした。でも同時に強く思いました。「どんな環境だろうとやりようはある」、と。
 以上の思想を潜在的に抱いたおかげで、つい先日まで職場にはおっさんとおじいちゃんしかいない職場の紅一点として働き、時にはやべーおっさんにいきなり怒鳴り散らかされて「やんのかテメェ」と言い返せる女に育ちました。やべーおっさんがいても絶望なんてしません。おっさんを社会的に殺すべく頭をフル回転させた日々は、今でもいい思い出です。
 そんなわけで、「今、不登校の状態にある子に何を読ませたい?」と質問されたらかなり真面目に「魁‼︎クロマティ高校」と答える私です。
みんな読もう! そして観よう! 魁‼︎クロマティ高校!


 とまぁ今はご覧の通り、死にたかった思いも割と笑い話なんですが、当時としてはやっぱり真剣でしたね。あそこで望んだ通りになっていたら、ラドンを知ることはなかったんだと思うと不思議な気持ちです。ラドンについてばかり書かれたnoteが存在しない世界線……ラドンに熱い思いの丈を持つ女がいない世界線……。
 クロ高のおかげで妙にフットワークが軽くなり、なんでもかんでも手を出した結果、三十過ぎて怪獣映画に謎ハマりした挙句、ラドンに感情移入するようになりました。絶望するよりとりあえず打開策を出す方が性に合っていると気づけたのはクロ高のおかげですね。MTGアリーナも凄く楽しいし(2色デッキの初手で土地が片方の色しか来なくてタブレット叩き割りそうになったり♡)、とりあえず生きてみるに限りますね。

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