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短歌ネプリ「月九」第7回感想

#短歌月九ネプリ

9人の歌人による短歌ネプリ月九、第7回配信中です!
今回の主演(テーマを決める人)は平出奔さん、お題は「探」。
今月は配信期間中に感想書けたので、ほっとしてます。
なにしろ3首連作なので、引用ではなく匿名方式でお送りさせていただきます。
気になる人は是非コンビニへ!


3首目/平出奔さん

擬音が不穏でドキッとした。この擬音は選ばないひとが多数だろうなって行為と「グチャッ」が組み合わされた瞬間から立ち昇る怪しい雰囲気がすごい。たとえば、探されてる人はもう腐乱死体になっているのでは?と思ってしまったり、桜のピンクは肉の色に似てますね…?とか邪推したり。でも最後の一線で綺麗な印象は崩さない。開いた口から「ほあー」って声になってない空気が漏れました。ほあー。

1首目/池田明日香さん

若者っぽい略奪愛の連作。いや、明言はされてないんだけど、防波堤とか抱き締める時の表現とかが若者っぽいなって。不倫だったらもっと違う雰囲気になると思う。友達の恋人を好きになっちゃったんじゃないかなー。相手は友達の恋人だから絶対よくないってわかってるのに、手を伸ばしてしまった主体の、熱に浮かされてるけど冷えたところが少しだけ残った思考回路がなんかリアルでした。この主体は「ついうっかり魔が差して」とは言い訳しないと思う。

1首目/近江瞬さん

検索窓に残ったタイトルはなんだったんだろう?不意に見てしまった他人の検索履歴はこわい。検索窓といえば小坂井大輔さんの「家族の誰かが「自首 減刑」で検索をしていたパソコンまだ温かい」から受けたインパクトがまだ抜けてなくて、私はこのワードは使えないのだけれど、近江さんはさすが。余計なものを削ぎ落とした表現で、しんとした空気を創り上げていて。直接的な表現はないのに、主体と「なにか検索した人」の痛みというか、感傷が伝わってくる。ポエティックなワードを畳みかけて使ったりしてない、むしろミニマルな歌なのに、奥行きが伝わってくるのがすごい。

1首目/御殿山みなみさん

小学生の傘あるあるをしっとりと詠まれてます。傘に傘ではない役目を与えていた結果、主体はきっと濡れてしまったのでしょう。びしょ濡れになってる不快感よりも目先の楽しさが優先されて。夏のじっとりと湿気を含んだ空気のなか降る雨は、めちゃくちゃアマゾンっぽいですよね!ごっこ遊びの舞台装置は完璧!楽しい夏休みの思い出になったんだろうなと思います。こういう遊びをしていた子が大人になったら傘をゴルフクラブに見立てだすのかな。

2首目/シリウスさん

力つきる直前になったら、AIだって文字化けするよなぁ。。それでもがんばって前に進んで、成果を伝えようとしてあがいた結果がこれなのかと思うと諸行無常を感じてしょうがない。なんとも切ない。機械のプログラムゆえに精一杯、目的を遂行しようとする姿って胸を突かれるものがありますよね。

2首目/西村曜さん

テンポが最高!
山崎まさよしだってニヤニヤしながら読んでくと、途中でテンポよく挟まるツッコミ!そんで「ないない!」って言いながらも、ちょっとだけ万が一の可能性も否定しきれてないな!?っていうのが垣間見えるとことか、コミカルでめちゃ楽しかったです。いや、ほんとにそんなとこにいなくて良かったね!ってとこを探すので、ぜひとも読んでほしい。

3首目/若枝あらうさん

そこはかとない寂しさを切り取ってる歌。ほんとうに、世の中にはラブソングが溢れているねぇ。
枯れてる老人ってわけでもなさそうなのに、達観してるような主体の傍らには生身のひとはいない。昭和の時代だったら縁側で猫相手にこぼしたような呟きも、令和ではAI相手にこぼすことになる。それはなんだか未来的なさみしさだと思う。返事は別に必要なわけではないけど、なにかは返して欲しいような心地というか。グーグルとなら、その気になれば何かを一緒に探すこともできるっていうのが秀逸ポイントだなー!って思った。

3首目/若紫音佳さん

今回いちばん歌を選びにくかったのが、この連作です。連作のタイトルは「夢水清志郎へ愛をこめて」。だって私、だいすきなんですよ、夢水清志郎!!数いる名探偵の中から夢水清志郎にのみターゲットを絞った、おとかさんの愛と勇気にスタンディングオベーションを!どの歌の単語のチョイスもファンにはたまらないハズさなさ。はやみず先生にお届けしたい。絶対嬉しいと思う。
生活力0でダメな大人な教授だけど、彼は周りの人のために謎解きをする。あいちゃん目線でシンクロできた気がしてくるような歌でした。
お盆休みは久しぶりにシリーズを読み直したいなー!

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