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少女ヨルハ ver1.1a

まずはじめに、ご来場頂いた皆様、そして配信で見てくださった皆様、本当にありがとうございました。
今回この様な情勢の中、無事公演を行えたことは本当に奇跡のようなことだと思っています。

僕は大勢の輪の中に居ると、あまり喋るタイプではないですし、
元々積極的に輪に入ろうとする人間でもありません。
ひとりで居ることが苦痛でもないし、みんなが楽しそうにしているのを遠くから見ているだけでも楽しめる人間でした。
今回は二号という役柄的に、より一層そういった立ち位置のままの自分でもいいのかな、なんて思っていたりもしました。

二号という役は、ヨルハ実験F部隊に遅れて加わる、謎の多い役柄です。
最初に教官から明かされる機体名は『二号D型』。ディフェンダー。
しかしながら本来の二号の正式モデル名は『二号E型』。
E型は、ゲームをプレイされている方にはお馴染みかもしれませんが、"Executioner"の名の通り、対ヨルハ機体用の処刑モデルです。
つまり僕の演じた二号という役は、一緒に作戦行動を行う部隊員を殺す目的で作られた機体というわけです。
その役作りとして、まず考えたのが「F部隊の誰から殺すか?」ということ。
やはりそうなると、全員のバックアップデータを持っている九号を真っ先に殺すのが一番効率的なのかな。
二号という役を頂いた時、一番初めに考えたのはそんなことでした。

だから、というわけではないけど、
二号にとっても僕にとっても、あまり仲良くなる必要がないのかなと思いながら稽古を続ける日々でした。
役と自分は別と言っても、どうしても僕は役に自分のメンタルを引っ張られやすい人間なので、
いずれ殺さないといけない相手なら情がうつらないほうがいいし、その方がより二号としての説得力が増すのかなと。
(元々青木は人と仲良くするのが苦手でしょ、というツッコミはおいといて)
だから本当に、小屋入りまでは元々共演歴のあった三号役のきーちゃん以外、ちゃんと会話したのは九号の桃ちゃんぐらいだったんじゃないかなと思います。
そういう意味でも、二号にとって九号は特別な存在でした。
(三号は稽古中もステージ上でも二号の数少ない癒しポイント(笑)

今までいくつも2.5次元舞台に立ってきましたが、
今だから言えるけど、「この内容、この殺陣、この公演時間に対して稽古期間が見合ってない!」と本気で思いました(笑)
やらなければならないことに対して与えられた時間の少なさに、不安しかなかった。
二十一号対二号の殺陣がついたのは、確か稽古残り4日とか、そのぐらいでしたから!(笑)
最終稽古の通しで、なんとか形にはなっていたのかな?と思うものの、稽古場ではまだセットも無く、
照明や映像、音響なんかもわからない状態なので、小屋入りして仕上げるしかない。
完成形が見えていないからこその不安はとても大きかったです。
(特に二十一号と二号の戦いは、映像合わせがあったからね!)

そんなこんなであっという間に小屋入り。
楽屋はヨルハ部隊の7人部屋(教官はレジスタンスさんと同じ楽屋だったのがちょっと寂しかった)。
これまでに少しずつみんなと話せるようになってはいたものの、僕以外の皆が圧倒的に仲良しだったので、なんか「ここに居てごめんなさい…」って気持ちにちょっとなったりもしました。
多分、ヨルハ部隊に合流して、皆と少なからず交流した二号も僕と同じような気持ちになっていたんじゃないかなと思ったり。
僕は人間関係に関してはめちゃくちゃネガティブだし消極的だから自分からあまり話しかけたりは出来ないんだけど、
六号役のめぐちゃんがぼっちで写真を撮ってる僕に対して「もうひとりにはさせませんよ〜(笑)」って言ってくれたり(そのテンション感がなんか六号ちゃんっぽくて好き)、
二十一号役のもえぴちゃんは、楽屋で鏡前が隣だったのもあって小屋入りしてからめちゃくちゃ話すようになったし(しかも九号の桃ちゃんと二十二号のそのちゃんも交えてなんか宇宙についてとかウニの中身についてとか謎の多い話をしてた気がする)、
とにかく小屋入りしてからぐっとみんなとの距離が縮まって、
青木個人としてはめっちゃ嬉しいんだけど、二号としてはどんどん苦しいというか、皆を殺しにくいメンタルになっていってしまったなぁと(笑)

僕は舞台稽古のとき、演出家さんとちゃんと話し合いが出来る空気が好きなんです。
演出家さんによっては、完全に自分の世界が固まってて、あまり演者の感情を重要視しない方もたまにいらっしゃるなぁという印象でしたが、少女ヨルハの演出の壱岱さんとは、
本読みの段階から役作りや演技プランについてちゃんと話し合ってくださって、
公演中でさえも「ここはこうしたいと思ったんですけど、こういう演技に変えていいですか?」と急な僕の思いつきに嫌な顔ひとつせず「良いね、素敵だと思う」と言ってくださって、とにかく稽古中から公演中まで、僕の生きたい二号の姿で生きさせてくださいました。
稽古中からしんどかったけど楽しくて、早く稽古したいと思うのは僕にしては本当に珍しかった。
僕も死ぬまでには舞台演出をしてみたいなという密かな野望があったりするので、稽古中は基本「僕ならここの演出はこういう風にしたいなぁ」とか考えながら稽古することが多いのですが、
そう言った意味でもとても勉強になりました。
あの内容、殺陣に加えて照明、音楽、そして映像。演出家って大変だけど凄いなぁと思います。

レジスタンスの皆は本当に奇跡の安定感というか(笑)
ツルハナ役のにへちゃんが初舞台なんて信じられなくて、舞台袖で「どこかで演技とか習ってたの?」って聞いてしまうくらい、
最初からもうずっと自然にお芝居が出来る人なんだなぁって。すごい。
にへちゃんは絶対にこれからもお芝居を続けて欲しいし、続けるべきだって思う。絶対!(笑)
スイレン役ののんちゃんとはあまりステージ上も稽古中もお話する機会がなかったんだけど、
箱に入りながら素晴らしすぎる滑舌と耳触りの良い声に、声優として見習うとこだらけでした。
僕が人見知りでなければもっとお話したかった。
そしてハオウ役のせきまゆちゃん。
公演中はいつもアドリブの打ち合わせでお世話になったり、トイレやなんやでとても僕の心を和ませて明るくさせてくれて(笑)
しかしお芝居はもう安心と安定のハオウ様って感じ。
僕がヨルハの稽古の自分以外のシーンで、一番最初に涙が出てしまったのはハオウがツルハナとスイレンを守る為に六号に立ち向かうシーンでした。
「私は、こいつらの隊長だ」
ハオウの過去もあったから、とにかく響いた言葉。
六号のことはキャラクターとしては大好きだったけど、このシーンの六号は本当に良い意味で最高のヒール役だったし、嫌い!って思った(笑)

教官役のまおちゃん。
ちっちゃくて可愛い教官だけど、事前殺陣稽古の時から殺陣がめちゃくちゃ上手だなって思ってて、それと同時に教官役だからあまり殺陣のシーンが多くないのが勿体ないなぁって思ってた。
中の人は本当に可愛らしいのに、役に入ると誰よりも大人で威厳のある教官になる。
まおちゃんを教官役に選んだ偉い人にお酒をご馳走したいです(笑)
公演中にちょっとお芝居を変えたところがあって、クーデターのシーンなんだけど。
途中から教官に一瞬目配せするようにしたら、僕の目はゴーグルがあるから見えなくて意図がわかりにくいはずなのにしっかり僕のやりたいこと汲み取ってくれて、不甲斐なさそうに視線を逸らす教官。役としてちゃんとコミュニケーション取れてる感じがすごく嬉しかったなぁ。
他にも教官とのやりとりで楽しかったところたくさんあるんだけど、長すぎるからここまで!(笑)


そしてヨルハ部隊。
四号の萌ちゃんは、最初から四号の影がしっかりと見えてたなぁと思う。
声色と喋り方に四号の冷静さと強さがありつつ、不器用さも感じるところがあって。
大楽の最後の叫びはめっちゃ刺さりました。
あとガンホルダーがちょっと食い込む太ももがえっち。

三号のきーちゃん。
以前から何度も共演してるけど、きーちゃんのイメージに全くない役で最初はびっくりした(笑)
でも今はきーちゃん以外、三号のイメージが浮かばないくらい三号だったなぁ。
ビジュアルも最高に似合ってるけど、オラついてるのにちょっと優しさが滲んで見えるのがきーちゃん本人の人の良さというか。
そして難しい武器を使っての殺陣だったけど、いつも残って練習してて、
人前で練習したり努力する姿をみせるのが僕は死ぬほど苦手だから、そんな姿を見せてくれるきーちゃんが羨ましかったし眩しかったなぁ。
みんなから愛されるわけです。
三号もきーちゃんも、ヨルハ部隊のムードメーカーだと思う。アドリブいつも怯えさせてごめん(笑)

六号のめぐちゃん。
僕は元々六号でオーディション来ませんか?って言われてたから、僕なりの六号の演技プランってある程度出来てたんだけど、僕の考えてた六号とは良い意味で違ってて。
今考えると、多分僕が六号をやっていたら誰からも愛される余地のないただのサイコパスで終わってたと思う(笑)
めぐちゃん本来の可愛さと六号の残虐さのギャップが、きっとちょうどいいバランスで成り立ってて、
愛らしくて掴みどころのない、誰よりも残虐で恐ろしい六号が生まれたんだろうなぁ。
あと刀をくるくる回すトリッキーな殺陣が多くてめっちゃ難しそうだったけど、華麗にこなすめぐちゃん、殺陣の才能ありすぎじゃない?(笑)
遊園施設戦の六号は本当に最強の悪役だった!
でもめぐちゃん本人はキャストだけじゃ無くてスタッフさんひとりひとりにも感謝のメッセージつきのプレゼントを用意するとっても良い子です。おじさん目頭熱くなっちゃった。

二十二号のそのちゃん。
そのちゃんとお話出来るようになったのは小屋入りしてからだったけど、稽古始まってすぐ「この子は只者じゃねぇぞ…」って思った。
とにかく普段はふわふわしてて、そこは二十二号っぽいんだけど、叫びや泣きの説得力の凄さ。芝居の嘘のなさが凄い。
そのちゃんは本当にその時その役になってしまうから、たまーにセリフが変わってたときもあったんだけど、セリフを覚えてないとかじゃないんだよね。本当にその時その気持ちだったから自然と出てくる言葉。だから全部に説得力がある。こういう人を天才って言うんだろうなぁって思った。
そのちゃんのお芝居をもっと見てみたいって思いました。そして驚異の最年少です。

二十一号もえぴちゃん。
中の人はめっちゃ面白くて良い子だけど、本編では大事な子を殺さなきゃいけなくなったり、気が狂ってしまったり、クーデターを企てたりなんだか大変な役割。もえぴちゃんだから出来た役だろうなぁ。
本人はめちゃくちゃしんどかっただろうけど、狂気のお芝居の凄みは本当に圧倒された。
その反面、ちゃんと役者として冷静にここはこう見せたい!みたいな考えも同時進行してて、(例えば赤目になったところはカメラをみたい、だとか)
芝居のメンタルと魅せ方を俯瞰で見れる賢さを両立させてるところ、見習いたいなぁと思いました。
あとこれだけは永遠に忘れません。
「二号、あなたとは戦う必要があったね?
知っとるよ…(以下略)」

そして九号の桃ちゃん。
桃ちゃんは稽古中ずっと不安そうに、自信なさそうに台本を確認してたのがすごく印象的でした。
九号は本当に桃ちゃんそのものなんじゃないかなって思う。
人の為に動ける。まっすぐで正直で純粋な。
お芝居もその通りまっすぐで、一幕から泣きっぱなし。
舞台でこんなに泣いてる人見たことないレベルで泣いてた(笑)
泣いてるときの声と、終盤の叫び混じりの声は、二号の僕に本当に刺さったよ。
二号個人の感情で涙が出るって言うより、九号から貰う感情で涙が出る方が圧倒的に多かった。
透明感おばけって言われてたけど本当にその通りで、九号も桃ちゃんも汚れを全く知らないって感じ。みんな桃ちゃんに助けられてたし、桃ちゃんなら無条件で助けたくなっちゃうような。
そんな存在でした。
皆の死を見送る、つらい役柄だったけど最後まで立ち続ける姿は本当にカッコいい、頼れる座長でした。九号が桃ちゃんで本当によかった。

アンサンブルの皆は本当にすごかった。
やらなければならないことが多い上に、求められるクオリティもめちゃくちゃ高くて。
でも皆それを難なくこなす…難なくと言うと語弊がありますね。
難はめっちゃあったの知ってます。めっちゃ大変なことをたくさんしてる。
でもそれを表に感じさせずやり遂げる凄さ。
アンサンブルさんみんながダンス出来て殺陣も出来るとか、そんなことある?(笑)
プロフェッショナル集団でした。
あと個人的に衣装がライチ光クラブみたいで、ライチ好きの僕はめっちゃ羨ましかったです。着たかった…。(誰か女性キャスト版ライチ光クラブ公演して)

それから殺陣師のひとり、小栗さん。
殺陣師さんはもうお一方、門野さんもいらっしゃるのですが、特にご迷惑をおかけしてしまった小栗さんについて少し。
少年ヨルハでは四号先輩。
最初に二号は刀二本使うし、一本でも戦うし、逆手持ちもするよって言われて、
めっちゃ久しぶりの殺陣だったし、昔は殺陣得意だったけど今全然出来る自信無くて。
今回の舞台で殺陣が一番の不安要素でした。
二刀流も逆手持ちも初めてだったし、人数の多い殺陣だったから誰かに怪我させないかとか不安で、すっごい小さくなりながら稽古してました。腕とか頑張って伸ばしてるつもりでもビビってるから全然伸ばしきれてなくて(笑)
人前で練習したりするのが苦手だったけど、殺陣だけは稽古場じゃないと出来ないからひとりで悶々としながら練習してました。
人に物を教わったり、自分から教えてくださいって言うことすら苦手だったから、
他の子みたいに「ここどうですか?」とか「どうしたらいいですか?」とか聞けなくて、小栗さんにとってはめっちゃやる気ない殺陣劣等生だったんじゃないかなぁと思います(笑)
それでも公演中も最後の最後まで少しでも良くなるように僕に声をかけてくださって。
(めっちゃ話しかけにくかったでしょうに…本当にすみません)
実はゲネで僕は足をちょっとやらかしてしまいまして…。
だから初日の公演の感想で、僕の走り方への違和感を感じてた方もいたようですが(すごいよく見てる…)
その怪我のせいで、せっかくかっこよくつけてもらった殺陣が満足に出来ないんじゃないかって。この日のために色んな人たちが関わって作り上げて来たものを僕のせいで台無しにしてしまうんじゃないかって怖くて、本当に申し訳なくて。
「本当にすみません、折角殺陣いっぱいつけてもらったのに…」と小栗さんに謝ったら「そうだ、これあげる」って痛み止めをくださって。
素直に稽古中も色々聞きに行ったり出来ないしょーもない僕にも気遣ってくださって、その優しさで我慢出来なくなって大号泣してしまいまきた。小栗さんめっちゃ困ってただろうなぁ(笑)
初めて舞台でここまで悔しいって思ったし自分の不甲斐無さを呪った。
2日目からはトレーナーさんや制作さんたちのバックアップのお陰で、痛みに怯えずに動けるようになって。
本当に今回の舞台で多くの人に支えてもらって、皆さんのおかげで舞台に立たせてもらえてるって改めて心から感謝出来ました。
痛み止めは今後も僕のライブや舞台での御守り代わりとして同行してもらうことにします(笑)

他にもたくさんたくさんお世話になった方がいて、衣装のマッシュさんは楽しい会話をしてくれつつも肉好きな僕にたくさんのビーフジャーキーの差し入れをくれたり(笑)
個人的にちょっとほっこりしたのが、衣装のハンガーや香盤表の名前表記が「二号D型」だったこと。
E型じゃなくてD型として扱ってくれるんだって、ちょっとしたことだけど心が暖かくなりました(笑)
本当素晴らしく作品愛に満ちた現場でした。こんな現場なかなかないよほんと。
こんな状況だから、稽古中からも皆でご飯にいく機会もなかったし、
公演後も打ち上げとか一切なくて、すごく残念です。
お酒が入るとよく喋るようになるので、もし今後落ち着いて皆さんで改めて打ち上げが出来る日が来たら、クソほどお酒を飲んでシラフじゃ面と向かって話せないようなことを話せたらいいなぁと思います(笑)


めっちゃ長くなっちゃったから一旦舞台に関することはここまで!
内容とか自分なりの解釈とかについては、また書きたくなったら書くか配信で話すかしたいと思います。
とにかく、見てくださった、応援してくださった、ヨルハを愛する全ての人類に栄光あれ!終わりが雑!

二号D型、E型。
青木志貴