慶應ロー2023年度民法再現
慶應ロー2023年度民法再現
※必ず出題趣旨を確認すること
第1設問1
1AのBに対する請求
(1)AはBとの間で甲契約を締結しており、甲契約はαの中のブリ100尾を50万円で販売することを内容とする売買契約(555条)である。そこで、AはBに対し、売買契約に基づく代金支払請求をすることが考えられる。
(2)これに対し、Bは536条1条により代金の支払いを拒絶できると反論すると考えられる。Bのかかる反論は認められるか。
本問では、ブリが不可抗力により全滅しており、「当事者双方の責めに帰することができない事由」によるといえる。また、αのブリが全滅していることから、取引上の社会通念に照らして履行不能(412条の2第1項)になっている。そのため、「債権者」であるBは反対給付である代金の支払いを拒むことができ、上記反論が認められるとも思える。
(3)しかし、本件では、Aがブリを引き渡すことができるように準備をした上で催告をしたにも関わらず、BはWへ引き取りに行っていない。そこで、Aは567条2項によりBは代金の支払いを拒めないと再反論することが考えられる。
アまず、αのブリは「目的物」にあたるか。「目的物」といえるためには、特定が必要である(401条2項)ところ、「債務者が物の給付をするのに必要な行為」(401条2項)の意義が問題となる。
(ア)この点について、「給付をするのに必要な行為を完了し」たとは、履行の場所で債権者が受け取ろうと思えば受け取れる状態に物を置いた場合をいうものと解される。そして、履行の場所で債権者が受け取ろうと思えば受け取れる状態に物を置いたと言えるか否かは、個々の契約内容から、特定に結びつけられた効果を発生させるに値するような行為が、債務者によって行われたかどうかによって判断すべきである。
(イ)本問では、Aはαのブリを100尾引き渡すことができるように準備をし、Bに催告をしている(493条)。また、引渡し用の網に取り囲んで分離しており、これらは特定に結びつけられた効果を発生させるに値するような行為と認められる。
(ウ)したがって、「債務者が物の給付をするのに必要な行為」があったといえ、αのブリは「目的物」にあたる。
イまた、Aはブリを引き渡せるよう準備をし、催告をしているから「債務の履行を提供した」といえる。
ウそして、ブリは不可抗力で全滅しており、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって」履行不能となっている。
オしたがって、567条2項によりBは代金の支払いを拒むことができず、Aの再反論が認められる。
(4)よって、Aの上記請求が認められる。
2AのCに対する請求
(1)AはCとの間で乙契約を結んでおり、乙契約はαの中のブリ100尾を50万円で販売することを内容とする売買契約である。そこで、Aは売買契約に基づく代金支払請求をすることが考えられる。かかる請求は認められるか。
(2)これに対しCは、536条1条により代金の支払いを拒絶できると反論すると考えられる。Cのかかる反論は認められるか。
本問では、ブリが不可抗力により全滅しており、「当事者双方の責めに帰することができない事由」によるといえる。また、αのブリが全滅していることから、取引上の社会通念に照らして履行不能(412条の2第1項)になっている。そのため、「債権者」であるCは反対給付である代金の支払いを拒むことができ、上記反論が認められる。
第2設問2
1BはAに対して売買契約に基づく目的物引渡請求をすることが考えられる。これに対し、Aは引渡債務が履行不能(413条の2)になったと主張し、ブリの引渡しを拒絶することができると反論することが考えられる。
2まず、αのブリは全滅していることから、αのブリに関する甲契約、乙契約は共に履行不能となっていると考えられる。そして、A C間のβの残ったブリ100尾を引き渡す旨の合意は、新たな売買契約の成立があったと見ることができる。そのため、甲契約が履行不能となり、新たな合意もないBからの目的物引渡請求は認められない。
3よって、Aの反論は認められ、Aはブリの引渡しを拒絶することができる。
以上
設問1は問研の問題と微妙に違ってやりづらかったです。色々ミスがある。
Bのところで、受領遅滞に帰責性を認めるべきだったのと、制限種類債権の話をした方が良かったですね。
設問2は、知りません。何も知りません。白紙でも評価変わらなかったと思います。