慶應ロー2023年商法再現

※必ず出題趣旨を確認すること

慶應ロー2023年商法再現

1Dは甲社の立場から、乙社に対し、本件契約は事業譲渡(467条1項)であり、株式総会の特別決議(309条2項)を経ていないため無効であると主張することが考えられる。かかる主張は認められるか。

2まず、本件契約は事業譲渡にあたるか。事業譲渡の意義が問題となる。

(1)この点について、法解釈の統一性を図り、取引安全を確保すべく、21条以下の事業譲渡と同意義と解する。そこで、「事業の全部の譲渡」とは、①一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部を譲渡し、②これにより譲受会社が事業活動の全部を承継し、③譲渡会社が法律上当然に競業避止義務を負うものを言うと解する。

(2)これを本問についてみると、Q工場は唯一の工場であり、陶器の製造及び販売を目的としている。また、従業員及び取引先を乙社が引き継ぐことになっているため、組織化され、有機的一体として機能する財産の全部を譲渡したといえる(①充足)。また、これにより乙社は甲社の唯一の工場と従業員及び取引先を引き継ぎ、陶器の製造及び販売をすると考えられるから、事業活動の全部を承継したといえる(②充足)。そして、甲社は法律上当然に競業避止義務を負う(21条各号)(③充足)。

(3)したがって、本件契約は事業譲渡にあたる。

3そうだとしても、株主総会の特別決議による承認があったといえるのではないか。Aは甲社の株主であるB及びDに声をかけ、Q工場を売却する旨を伝えている。これにより、株主総会の特別決議があり、事業譲渡の承認があったといえるか。

(1)本問では、株主総会の招集(296条)かなされていない。また、書面による議決権の行使(311条)や電磁的方法による議決権の行使(312条)はなされていない。さらに、Cが事業譲渡に反対している上に、319条の要件も満たさず、株主総会を省略することもできない。

(2)そのため、株主総会の特別決議はなく、事業譲渡の承認があったとはいえない。

5では、特別決議による承認がないことを理由に、本件契約の無効を主張できるか。

(1)この点について、取引の安全の見地から、相手方が株式総会の承認がないことにつき悪意又は重過失のときには事業譲渡の無効を主張できると解する。

(2)本問では、乙社は、株主総会の特別決議がないことやCが反対していることについて知らず、知らないことに過失もない。

(3)したがって、甲社は本件契約の無効を主張できない。

6よって、甲の上記主張は認められない。

以上

特別決議を欠く事業譲渡は単純に無効なのを知らなかった。
事業譲渡が出るなんて思ってなかったので、現場ではすごく焦りました。
当てはめはともかく、論証はだけはなんとかなった感じです(この先では通用しないでしょう・・・)。

きっとみんなボロボロだと思います。これからはちゃんと勉強しないとね。

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