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13人の卒業生に贈った言葉

前回の記事で「卒業式の式辞に使った言葉」を引用したところ、式辞の全文はありませんかという質問がありましたので、掲載しておきます。

 私は、今まさに生野区で取り組む学校再編対象校と同じ小規模校の校長でした。校長1年目に送り出した卒業生は12人、2年目が13人、3年目が14人。3年間で1クラス分しか、卒業証書を渡していないのです。

 少人数の方が目が行き届く良さも、人間関係が固定化する難しさも、実感してきました。

 これは、卒業生を送る会で教職員が「12歳のわたし」に扮し、当時の将来の夢を語るという出し物をした時の写真です。

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 なりたかった教師になった人もいれば、違う夢を描いていて気づいたら教師になっていたけれど幸せだよと、登場する度にこども達に爆笑されながら、メッセージを伝えました。

 小規模校は教職員も少なく、チームワークが良くなければ乗り切れません。みんなで「こども達を喜ばせよう!」というノリが良く、楽しいチームで仕事ができたのは幸いでした。

 一方で、一人休むだけでバタバタし、隣のクラスが無いので若手のサポートに悩み、苦しんだ3年間でもありました。

 小規模校の良さもしんどさも知るゆえに、どれだけ嫌われても、学校再編はやらねばならない。どうせやるなら「こども達を不安にさせない、出会いと可能性を広げるいい学校を作る」という強い想いを持ってやっています。

 12人、13人、14人の卒業生を送り出した時の純粋な願いを、今度は区内のこども達に広げて願う仕事をしています。「今やってることと違う」という批判もあるかもしれませんが、根っこは同じです。

 こども達が幸せな人生を送れるように、児童虐待防止や子育て支援、教育環境の充実と学校支援を今の立場で続けていきます。

 
 卒業式の式辞は、校長として自分で書きます。達筆な先生なら巻き紙に筆で書かれたりもしますが、私はパソコンで書いて巻き紙に貼って、当日の朝も何度も校長室で練習して臨みます。

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 泣かずに読み切ろうと誓うのですが、毎年かなり苦戦しました。この年の子どもたちは大人しく、6年生になった時に常識にとらわれない面白い担任の先生に「思いっきり、弾けさせてください!」というミッションと共に任せた学年でした。

 そのまま、掲載しておきます。

平成27年度卒業式・式辞


 やわらかな春の日差しが、旅立ちを祝福するように降り注いでいます。三月、この佳き日に、第六十三回卒業式を挙行いたしましたところ、ご来賓の皆さまには、何かとご多用の折にもかかわりませず、多数ご臨席を賜り、誠にありがとうございます。
 高いところからではございますが、心より、感謝を申し上げます。

 さて、六年生のみなさん。ご卒業、おめでとうございます。去年、6年生になる君たちに向けて私が願ったことは「一歩前に出る」ことでした。

 一年前、5年生の終わりに児童集会のリーダーを引き継ぎ、うまく仕切れなかった時の泣き顔や困った顔を思い出します。優しいだけでは、前に進めない。君たちが最初にぶつかった壁でした。

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 その君たちが、自然体験学習や組体操で5年生を引っ張り、シリア難民救済のために街頭募金にチャレンジし、声を枯らして募金を呼びかけました。ただただ、君たちの成長に驚かされ、圧倒された一年間でした。

 特に、自分たちで考え、発表した全校児童への「平和アピール」は素晴らしかったです。

 「戦争を無くそう」と、言葉だけ訴えることは簡単です。でも、君たちのメッセージは違いました。

 「戦争を無くすために、まず、自分のクラスを平和にしよう」という具体的な言葉を考えてくれました。さらに、「一対一のケンカでも、クラスみんなで話し合う」「お互いの趣味を認め合う」という、一年生でもできることを、教えてくれました。

 仲間のトラブルをみんなで受け止め、個性を認め合う。世界中の人がそうできれば、戦争も無くなるはずです。

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「自分のクラスから、平和にしよう。」
 今、ここにいる四年生・五年生たちが、確かにその言葉を引き継いでくれるはずです。

 保護者の皆さま、お子様のご卒業、まことにおめでとうございます。成長した姿を、まぶしく見守っていらっしゃることと思います。

 この六年生たちが教えてくれた「自分のクラスから、平和にしよう」という言葉は、「自分の家族から、平和にしよう」と置き換えられます。
 
 それぞれのご家庭が、思春期を迎える子ども達を温かく受け止める場所であり続けますよう、お忙しい中とは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 たくさんのことを教えてくれた君たちに、最後の贈り物をします。アメリカに、ボブ・ディランという歌手がいます。その「フォーエバー・ヤング」という曲を元にした絵本からの言葉です。

 きみが 手をのばせば しあわせに とどきますように
 きみのゆめが いつか ほんとうに なりますように
 まわりの人びとと たすけあって いけますように
 星空へのぼる はしごを見つけますように
 毎日が きみの はじまりの日
 きょうも あしたも
 あたらしい きみのはじまりの日

 きみの手が ずっとはたらきつづけますように
 きみの足が とおくまで走っていけますように
 流されることなく 流れをつくりますように
 きみの 心のうたが みんなに ひびきますように
 毎日が きみの はじまりの日
 きょうも あしたも 
 あたらしいきみの はじまりの日

 君たちは、運命や環境に流されることなく、自分で流れを作れる人たちです。自信を持ってください。
 ただ優しいのではなく、人のために動ける、強く優しい人たちです。

 たくさんの思い出を、ありがとう。君たちのクラスをのぞくのが、大好きでした。

 君たちの人生が幸せでありますように、心からの祈りをこめて、式辞といたします。

  平成二十八年三月十七日
    大阪市立敷津小学校長  山口照美