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50歳の誕生日に。

 50歳に、なってしまった。

 15歳のころ、すぐにでも死にたかった。

 家では「暗い、かわいくない、気持ち悪い」と妹と比べて言われ続け、学校ではいじめに遭っていた。

 勉強も運動も苦手で、本の世界に逃避して精神を保っていた。

 死ななかった理由はあちこちで書いてるので省略。

 『小公女』という物語が好きだった。アニメも観ていたが、原作を繰り返し読んだ。

 父親が亡くなった途端、貧しくいじめられるようになった女の子が、最後に遺産と共に現れた父の友人に救われる。

 日本版シンデレラと言われる『落窪物語』も大好きだった。

 いつか、王子様が。

 ドン底の私を助けてくれたらいいな。でも、家にいるのに逃げ場が無いって、どうしようもないな。

 自分が家庭を持つ未来も、社会で活躍する姿も、そもそも生きて大人になっている、ましてや50歳を超えて生きているイメージなんてまるでなかった。

 それが、ちゃんと50歳になった。

 王子様はいなかったけれど、自分が王子様になれるぐらい強くなった。

 先日、いつもケラケラと笑って楽しそうな経営者に「どうしてそんなに明るくいられるんですか?」と聴いたら、

 「『他人に笑わせてもらう』のはやめようと思って。自分で自分を、笑わせることにした」

 この人も、傷の上に立つ人なんだ、と思った。

 こんな文章も、自分に酔ってる、立場を考えろ、という匿名の書き込みが返ってくるのも予測がつく。

 小中学生の頃、詩を書き、心の中をノートに吐き出すことで、死なずに済んだ。

 ネットに物が書けるようになってからは、ノートをブログやSNSに変え、20年以上ずっと続けている。

 もはや常備薬としての「書くこと」なので、放っておいてもらえれば。


 王子様に守ってもらうどころか、誰かを育て、導き、引き継ぐことを考えるべき歳になった。

 40代は大阪市に民間人校長として入り、10年間、課題に追われて走り続けてきた。

 お姫様抱っこで窮地から救ってくれる王子様はこの世にはいなかったけれど、「わけわけ」してくれる仲間がこの10年でいっぱい増えた。

 15歳の夏、近所のマンションの上で、金網を乗り越えるべきかどうか迷っていた私に。

 戻ってくれてありがとう。

 50歳に、なったで。