また応援する球団がひとつ増えちまったよ 〜the other side of BAYsball

ベイスターズが強くなっていく過程で知ったこと。さまざまなセイバーメトリクスの指標、投手起用や打順に関する新しい考え方。それ以上に、他チームの素晴らしさ。

はじめてのcs、ジャイアンツ相手のファーストシリーズ。これまで経験したことない緊張感、興奮。今回負けたらもう二度と出られないんじゃないか、という幻想にでもとらわれたかのように、この試合で壊れることもいとわないかのような気迫を見せるベイスターズの選手たち。それに対するジャイアンツも王者のプライドを持って攻めてくる。第三戦9回裏、代走鈴木尚を刺した田中健二朗の牽制はこのシリーズの象徴ともいうべきシーンだった。
素晴らしい連戦だったけど、なにより恐ろしかったのはこの事実。「ジャイアンツ、CSが始まった年からこの年まで10年連続CS出場。毎年こんな恐ろしい戦いをやってるんだ!」ということ。生まれてはじめて本当に巨人すげえ、と思った。

翌年のcs、今度はちゃんと五割以上の勝率で乗り込んだファーストシリーズ。相手は苦手、タイガース。一戦目は案の定、敗戦。

天候にかこつけて残り試合を打ち切ることだってできた中、阪神園芸さんの素晴らしい仕事で、今まで見たことのないような環境下で行われた通称「泥んこ試合」。まるで鏡面のように選手達を映す甲子園のグラウンド。もはやボールパークというよりスケートリンクのような。そこで行われる試合はそれはそれで美しかったけれど、同時に願っていたのはどちらのチームの選手も怪我なくプレイしきれるように、ということだった。チームを支える裏方も含めたプロフェッショナリズムの上に決行されたゲームを通じて、この試合を成立させてくれたタイガースに対する強い敬意が生まれた。例えどんなにメッセンジャーにのされ続けたとしても、この敬意を忘れることはない。いやむしろもうメッセンジャーが見られないのが悲しくすらある。

敵への敬意。強敵と書いて友と読みたい世界。ベイスターズが誇るワンポイント大物キラー加賀の引退試合でのバレンティンからのビデオメッセージには賛否両論あったけれども、僕は素直に素晴らしいと思った。ファンも含めたベイスターズがファミリーのような集団であるように、他チームやその周囲の人々、物事も含めたプロ野球が、ひとつの生態系の一員なのだから。

2019年、ベイスターズが21年ぶりに2位以上となったその横で、ライオンズが21年ぶりのリーグ2連覇を達成していた。この歴史の違いは悲しくもあるけれど、べ・リーグなんて自虐の中に閉じこもっていた時代を抜け出し、こんな強敵たちと渡り合えるセ・リーグの一員、NPBの一員として、2020年のベイスターズも楽しみたい。

そして、筒香をレイズへ送り出す動画にあったこの言葉「また応援するチームがひとつ増えちまったよ」という気持ちに思わずなってしまうような、素晴らしい場面にめぐりあいたい。

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