自宅発、実家着

荷物になりそうな厚手の服を優先して袖を通す。
成人式もあり今年の帰省は長いので10日前くらいから掃除できそうなとこは掃除して、冷蔵庫整理もした。関係なく朝からおでんを作った日もあった。

夕方くらいに着くのが理想かなと昼過ぎに家を出る。天気がいいのに厚着をしているので家を出た瞬間から暑かった。街は着々と年末に向かっていて、自転車のカゴよりはるかに長い門松をカゴに積んだおじさんがなんとかバランスを保ちながら坂道を登っていく。八百屋は街の奥様方で賑わい、生き生きとした空気と何か虚しい死を感じる空気が混じっている。年末の空気の匂いが好きだ。

さて、合計2時間強かかる旅路に何をしよう。帰省のお供のアルバムを選び始める。1枚目は母親が好きな小沢健二のLIFEにした。このアルバムの楽しさもあいまって、最寄り駅までの道はいつもより短く感じた。

最寄り駅の近くの有名なケーキ屋さんで家族へのお土産を買った。そこには一度も聞いたことのない名前のケーキだけが並んでいて、色と直感でケーキを選ばなければいけない。
ピスタチオのケーキだと思っているのが空豆で、ラズベリーのケーキだと思っているのがいちじくとかだったらどうしよう。いちじくだったら普通に美味しく食べよう。ケーキを買うと「持ち運びの時間をどのくらいですか?」と聞かれる。ちょっと前までこの質問の意味がわからなかった。一人暮らし女性はコンビニでアイスを買わない方がいいの強化版みたいなことかと口をポカーンと開けていた過去が懐かしい。でも今の自分はこの質問の意図を隅から隅まで理解してるのでドヤ顔を一周したすまし顔で「2時間くらいです」と言った。でも家族でケーキを食べるとこ想像して少しニヤけちゃってたかもしれない。持ち運び時間を聞くから保冷剤の量を連想させたお礼に、店員さんは今の顔から家族の風景を想像してくれたらいいな。

電車に乗ってしばらくすると1枚目のアルバムが最後の曲に差し掛かった。慌てて次のアルバムを探しているとその曲が終わり、自動再生でハナレグミが流れてきた。最近Apple Musicにハナレグミ流しとけば喜ぶやつだと認識されているので、ちょっと悔しくなった。どうせなら、アルバムを丸々聴きたいと思い、2枚目は父が好きな大滝詠一のA LONG VACATIONを聴くことにした。

乗り換えの横浜駅を降りると、大きな荷物を持った同じような人たちと信じられないくらい小さなバックを持った女性たちで賑わっていた。

横浜駅からは、電車のドアが開くたびに車内に知っている空気の匂いが増えていく。車窓に映る景色にも思い出が重なる景色が増えていく。その思い出と空気の匂いがいっぱいになった時、実家に着いてることだろう。

実家に帰ったのも束の間、明日から大晦日まで4連勤のバイト生活が始まる。史上初、実家帰省後の4連勤。まぁ程よくお金を稼いできたいと思います。

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