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天空鉄道の電子音の夜

気がつくとルイは空から街明かりを見下ろしていた、ルイはいつの間にこんなに空高く浮かび上がってしまったのだろう、確かここに来た時は地べた近くのとても低い場所で息も絶え絶えに寝転がってベルトで固定されていたはずなのに気がつけば空高くから街の灯りを見下ろしている
。ルイは入院するたびに銀河鉄道に乗っているような気分になる恐らく不安と孤独と病室と言う空間がの一体感そんな風にルイに感じさせるのであろう。
さて今回はルイは退院を翌日に控え個室から相部屋に部屋が変わることになった
。加療も治療も隔離も終わっているのだから仕方が無い。
相部屋はナースステーションの眼の前で。
ナースコールや機器の発する警報などの電子音が非常に良く聞こえてくる。しかも何故か遊園地みたいなナースコール音だけでなく。同室の入院患者が立てる様々な音が全て聞こえてくる電話で話す非常識な輩も居れば夜中に目が覚め突然叫びだす人もいるその都度、車掌のようにナースがかけつけて対応するので。相部屋は個室と違いたいそうにぎやかな夜汽車のコンパートメントなのである。遠く見下ろす街灯りはまるで王蟲の目のように怪しく暗闇を照らしている1日1000円で借りたテレビも部屋の電気も消してとにかく遠くの街の灯りを眺めながら寝るのみだ。
隣のベッドの乗客はどうも寝付けないようで、(車掌)看護師が気にしてる。
どこかの乗客が電話で話しているルイはうるせいなと声に出して呟くきっと本人には聞こえていないしかし隣のベッドの患者には聞こえたようで、ルイのように文句を呟き始めた。
ひょっとしたら話が合う乗客なのかもしれないしれないしかし会話をすることはないだろうルイは黙って目を閉じる。
個室の時はアイフォンのスピーカーでリラックスする音楽を流して眠りについたけれど相部屋でそれは出来ない普段鞄に入れて持ち歩いているJBLのヘッドホンは自宅でぶら下がっているのを思い出すも入院前の不準備を悔やんでも始まらないし、充電が必要な機器は入院向きじゃない
Apple Watchは入院早々カバンの中だ。
もう充電闘争はアイフォンだけで十分だ。この天空銀河列車で銀河の果てまで旅するわけじゃない。
王蟲の目の光りのような眠らない街の灯りを眼下に眺めながら同じコンパートメントに乗り合わせた病を抱えた乗客を乗せた天空の銀河列車は夜空を架空していくのだ。


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