【腐】文学的BL

個人的に、村上春樹さんの『海辺のカフカ』という小説に思い入れがありまして。

自身が19歳で家を出たときに、少しの間他人の家で間借りして生活させてもらっていた時期がありまして。そのときに読んでいたから、『海辺のカフカ』に思い入れが強いんですよね。個人的に。

私の中で、そんな『海辺のカフカ』に雰囲気が似ている”文学的BL”として分類している作品があります。(大昔に読んだので、似ていると思っているだけかもしれないけど……)

それが、松本ミーコハウス先生の『恋のまんなか』です。

『恋のまんなか』松本ミーコハウス・著/ミリオンコミックス・刊

松本ミーコハウス先生のBLは、どの作品もすごく文学的で、叙情的な雰囲気漂う作品が多いです。説明が難しいですが、空気の色を描き出すような、感情の粒を舌で確かめるような感じ。

この作品の主人公たちは中学生で、複雑な家庭に生まれた少年2人。2人ともかなり凄惨な環境で生きていて、子どもだからそこから抜け出すこともできず、最初の方は閉塞感を感じる物語進行。

でも、2人は不幸をものともせず、身を寄せ合って恋をする。

主人公の一ノ瀬司は、同級生の松原千歳のことを好きになってしまうが、千歳は父親も家に帰ってこないほどの崩壊した家庭に生まれた不幸な少年。司も壊れた母親のもとで抑圧された学生生活を送っていたが、千歳との接触でどんどん2人の行動は加速していきます。

家出、夏の海、少年の思索……。夏の逃避行の間に2人の間に芽生える信頼関係、司が千歳の全てを受け入れて笑うから、千歳はどんどん司に堕ちていく……そんな関係が痛くて、切なくて、ゾクゾクします。

あと、2人は子どもだけど、わかっていなくて逃避行をしたわけじゃない。むしろ全てわかって、それでもわからないフリをして最後の時間を共有した。そういうところにすごく胸が痛くなります。

結構悲惨なラストだとは思うのですが、それでも2人が笑って終わるのがすごくいいなーと思うんです。

このストーリーを描ききった松本ミーコハウス先生の構成力に脱帽。

幼い2人の絶望感をしっかりとストーリーに絡め、じっとりと湿気を含んだ夏の空気を纏わせ、少年同士の恋心と信頼関係を叙情的に描き上げる。

この作品で、私は松本ミーコハウス先生の作品にズキュンされたのでした。

もし、静かで切ないBLをお求めの方がいらっしゃったら、この作品をオススメしますね。

松本ミーコハウス先生の他のBL作品もすごくオススメなので、また別の機会に書こうかな。

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