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【全文】新党代表選出選挙への出馬会見 #枝野出馬会見 2020年9月4日

4日、国会内で新党代表選出選挙に立候補することを表明し、記者会見を行いました。所信を表明するとともに、同時に決める党名については「立憲民主党」を提案しました。

会見全文です。

<はじめに>
まずは冒頭、最強クラスと予測されている台風10号が接近しています。立憲民主党では、本日、福山幹事長の下、岡島災害対策局長を中心に情報連絡室を設置いたしました。影響が予想される地域の皆さんには、くれぐれもご留意いただきますようお願いします。

さて、共同会派を軸とする合流新党が結成されるにあたり、代表選挙に立候補をすることを決意しました。ここに、その決意の一端をご報告いたします。

合流新党には、昨日までに150名近い皆さんに参加いただけることとなりました。国民民主党からも40名を超える方が参加されると聞いています。様々な思いや、困難な事情を乗り越え、参加を決意された皆さんに感謝と敬意を申し上げます。

また、この間、自治体議員や党員・パートナーズ、サポーターを始め、党内外の皆さんにたいへんなご心配をおかけしました。それにもかかわらず、多くの皆さんに直接、間接、様々な形で合流を後押しいただき、ご支援を賜りました。この機会に、合流を後押しし、あるいはご理解いただいたすべての関係者の皆さんに御礼申し上げます。本当にありがとうございました。


<合流に至った思い>

まず始めに、今回の合流を決意するに至った理由について、改めて私の思いを申し上げます。

私にとって、合流を決断した最大の理由は、新型コロナウイルス感染症による国民生活の著しい危機に対し、日本の政治があまりに無力だったこと。このことに尽きます。

危機に際して全く機能しない政府を目のあたりにしました。①情報をださない、②給付金が届かない、③PCR検査が増えない、④説明しない。行政の劣化は明らかでありました。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、私は、Web会議なども活用して、当事者の皆さんの声を直接お聞きする機会を積み重ねてまいりました。また野党全体としても、合同ヒアリングなど、感染症の影響に苦しむ皆さんの声を、国会に届けるための取り組みを実施し、多くの法案提出や政府への提言を続けました。

定額給付金や家賃補助をはじめ、いくつかの提案は与党を動かし、実現にこぎつけました。しかし、私はそれ以上に大きな悔しさを感じています。国民一人ひとりが直面している苦境に対し、政府が機能していない。これが私の率直な実感でした。

高熱が続き、感染を疑いながらも、病院と保健所をたらいまわしにされ、検査を受けることもできなかった皆さん。資金繰りに苦しみ、持続化給付金を申請したにも関わらずなかなか受け取ることのできなかった事業者の皆さん。感染症対策を真面目に行い、踏ん張ってらっしゃる飲食業や文化施設などの皆さん。未知の感染症に怯えながら子育てをする皆さん、そして妊婦さん。時には誹謗中傷に晒されながらも、国民のライフラインを支えるために働き続ける物流や小売、公共交通などエッセンシャルワーカーの皆さん。何よりも、政府の支援も十分でない中、最前線で感染症と戦う医療従事者の皆さん。

アルバイト先が休業になり、学費を払えず生活費にも困っている大学生からのヒアリングでは、当事者の学生さんから、「政治に私たちは見えていますか?」と問いかけられました。その問いは、今も重く私の胸にのしかかっています。与党も野党も関係ない。政治家は、いったいどこを見て政治をやっているんだ、と。

今回、合流する最大の目的は、こうした問いを正面から受け止め、国会で戦う力をより大きくし、政治の緊張感を取り戻して、国民一人ひとりの声に応えることのできる政治を実現することです。

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<個人的な葛藤と決意>
この間、私自身の中にも大きな葛藤と逡巡がありました。これまで苦しい中に、立憲民主党を熱心にご支援いただいた皆さんから、特に厳しい声もいただきました。それは同じく解党する国民民主党、そして苦しい中を無所属で活動されてきた皆さんにとっても同様だと思います。

しかし、これまで想定してきた選挙協力と連立政権構想だけでは、長期的にはともかく、今まさに現在進行形で進む感染症危機を打開し、国民生活の苦境を救うにはとても間に合わない。そう判断せざるを得ません。

「政治に私たちは見えていますか?」という問いかけに対して、「政治は、ちゃんとあなたを見ている。政治は、あなたのぶつかっている現実の壁を知ろうとし、ともにその現実を変えるために存在している」。自信をもって、まっすぐに国民の皆さんに伝えられるよう、私自身が大きく踏み出さなければならない。そして、そうして始まる新党を引っ張っていかなければならない。こう決意いたしました。

これが、合流を決断し、そして代表選挙への立候補を決意するに至った私の最大の思いです。

様々な立場を超えて結成されるこの新党は、国民の危機に対して何とか寄り添っていきたいと思っている、すべての皆さんに開かれたものです。
残念ながら、様々な事情で今回の新党への参加を見送られた皆さんもいらっしゃいます。しかしその皆さんも、大きな志は同じであると信じています。
それは、現政権に代わりうる選択肢となり、感染症危機の中にある日本の政治に緊張感を取り戻し、新たな政治の流れを作っていくという志です。合流新党の結成は、時代の要請であり、日本政治に新しい流れを作り上げていく大きな一歩であると確信しています。


<安倍政権の負債と喫緊の政策課題>
去る8月28日に辞意表明したことで、7年8ヶ月続いた安倍政権が終わります。しかし、国民の置かれた状況は何ひとつ変わりません。同時に、この新型コロナウイルス感染症の危機によって明らかになった多くの課題は、感染症そのものによってもたらされたというよりは、それ以前からの政治のゆがみが噴出し、顕在化したものであります。

この間、過度な自己責任論がはびこる中で、老後や子育てなど暮らしの不安が募り、不安定な非正規雇用で働く皆さんの数も増え続けてきました。貧困や格差、そして分断が社会問題として深刻化してきました。新自由主義的な目先の効率性のみが求められる風潮の中、保健所をはじめ、医療や福祉分野への支援も、十分なものだったとはとても言えません。行政の最前線で働く皆さんや、教育機関で働く教職員の人手は足りず、充分なコロナ対策を打てる余裕はありませんでした。

皆、ギリギリです。苦しい状況に追い込まれても、誰にも頼れない。今は生活できていても、先の見通しには常に不安がつきまとう。貧困に転落すれば。齢をとれば。病気や疾病を抱えれば。人生をあきらめなければならない。いつのまにか日本社会では、そうした光景が当たり前になってしまっていたからこそ、コロナによる影響はこれほどまでに深刻化したのです。

ですから、私たちの進めていく政治の最大の柱は、コロナ対策を強力に推進し、新自由主義的社会から脱却して、互いに支え合い、分かち合う社会を築き、一人ひとりの命とくらしを守ること、暮らしの安心を取り戻すことです。

1-1:役所の縦割りを乗り越えることのできる強力な司令塔を設け、トップダウンでPCR検査の拡大などを推進し、安心して社会活動、経済活動を進められる状況を作ります。
1-2:医療をはじめとして、介護、保育、放課後児童クラブ、障がい福祉など、生きていく上で不可欠なベーシックサービスに対する公的支出を飛躍的に増やし、そこで働く皆さんの処遇改善をはかるとともに、質量ともに必要なサービス供給を確保します。
1-3:①例えば年収1000万円程度までの中間層を中心とした所得税の時限的な免除、②消費税の時限減税、③困窮している皆さんを直接かつ速やかに支援していく1人あたり月1万円程度。世帯単位ではない個人単位の定額給付金制度化。これらをハイブリッドに組み合わせることで、冷え込んだ消費を刺激し、経済再生の着実な一歩を踏み出します。
1-4:併せて、金融資産課税を始めとする富裕層の所得税や、多額の内部留保を抱えた法人に関する法人税を強化することで、適切な再分配機能を回復させます。
1-5:自然災害を含めた今後の危機に備え、迅速に対応して国民の命とくらしを守るため、強力な司令塔となる危機管理庁。その下の省庁横断的な感染症予防管理センター、いわゆる日本版CDC。そして、自衛隊などによる初動対応を引きついで、ボランティアに依然しなくても生活再建を支援できる実働部隊としての(仮称)生活支援協力隊の創設などを進めます。

同時に、今回の新型コロナウイルス感染症対策の過程で明らかになったのは、日本の行政のあり方が著しく歪められていることです。

この半年間の政府によるコロナ対策については、保存された公文書に基づいて検証をされる必要があります。しかし、関連する専門家会議議事録のほとんどは残されていません。

公文書管理問題の象徴的な事件である、森友学園における悲劇があまりにも蔑ろにされています。この事件で公文書の改ざんを指示され、苦悩の末に自死された近畿財務局職員の赤木俊夫さんは、生前こう口にしていたそうです。「私の雇い主は日本国民。国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています。」と。

こうした真面目な皆さんの想いを踏みにじる様な政治が、残念ながらこの7年8ヶ月の間に常態化してしまっています。

私たちが進めていく政治の二つ目の柱は、国民生活を不安定化し、公文書管理や立憲主義といった政府への基本的な信頼を深刻に傷つけた7年8ヶ月の負債を清算し、責任ある機能する政府を実現することです。

2-1:森友学園事件の第三者による再調査を含め、隠されてきた公文書の公開を進めます。
2-2:もちろん、公文書管理法と情報公開法を抜本的に強化します。
2-3:官僚の皆さんに忖度を強いることにつながった内閣人事局制度を見直します。
2-4:教員や自治体など、コロナ禍で決定的に人手不足であることがさらに明らかになった公的サービスの現場力を強化します。
2-5:政府こそが最も遅れていると明らかになったデジタル化について、国民の皆さんに何かを求める前に、行政内部での転換を強力に推進します。


<党運営の姿勢>
現在の与党に対する国民の支持は、決して積極的なものではありません。それは選挙の低い投票率を見れば明らかです。

にもかかわらず安倍政権が続いてきたのは、明確な選択肢をつくることのできなかった、われわれ野党の責任でもあります。それは、所属していた政党の解党を経て、あるいは無所属での活動に区切りをつけて、合流新党への参加を決断した皆さん、また、私たちとの国会での強力な連携を視野に入れて活動を続けてくださる皆さんにも、共有されている忸怩たる想いだと考えています。

政治の信頼回復のために私たち自身で出来ること。それは、離合集散の歴史に終止符を打つとともに、内向きの議論や対立ばかりと受け取られてきた党内ガバナンスを見直し、意見の違いを認め合いつつ、一体となって国民生活の実態と向かい合い、寄り添っていくという政党文化を作り上げることです。そのことが、政権の選択肢となり、政治に緊張感を取り戻すための不可欠な条件です。

そして私たちに求められているのは、人気取りのための地に足のつかない政策ではなく、リアルな国民生活に寄り添い、実現可能なリアリティーのある施策を、一歩一歩進めていくという政治のリアリズムです。
私は、ともに参加するすべての仲間と共に、今回の合流新党の結成を、その明確かつ大きな第一歩とする決意です。


<私たちの寄って立つもの>
政治の転換は、実はすでに始まっています。私たちはこの1年間、暮らしの声を国会へと届ける挑戦を続け、いくつかの成果を上げてきました。

共同会派の結成以来、大学入試英語民間試験導入の中止など、当事者の声と連携して国会で戦った経験は、緊急事態宣言後の野党合同ヒアリングにつながりました。

声を上げ始めた国民の声と野党が連携することで、当初は所得制限付きだった給付金は全員一律10万円の定額給付金へと変わりました。

持続化給付金や家賃支援、そして雇用助成金制度の拡大なども、そうした連携なしには実現しませんでした。

今年5月には、違法な閣議決定を後付けで正当化しようとする検察庁法改悪に対し、SNSを中心にして大規模な抗議が巻き起こり、政府は法改正を見送らざるをえませんでした。

苦しい中、勇気をもって声をあげた国民の皆さんと連携し、政治を変えることのできた経験は、新たな党の向かうべき道筋を何よりも雄弁に教えてくれます。

この1年間、野党は圧倒的な議席数の差をはねかえそうと挑戦し続ける中で、国民の声を政治へとつなげる回路としての力を発揮し始めました。多様な分野に精通した議員一人ひとりが、当事者の声に耳を傾け、様々な政治課題を現場のニーズに即して解決していく。

国民の声をもとに政治を変えていくこうした試みは、ひとつにまとまった新党で、より大きな力となります。共同会派の経験をもとに、私たちがこの新党に結集するのは、国民のみなさんに背中を押されて始まったその転換を、より強力に推し進めるために他なりません。

私たちが拠って立つのは、国民生活の現場です。つねに国民の生きる現場の声に耳を傾け、ともに考え、行動する。永田町の一部の人間によって行われている政治を、国民一人ひとりの手に取り戻す。

国会の赤絨毯は、私たちの戦う舞台ではあっても、決して拠って立つ足場ではありません。全国の地域を周り、現場で汗をかき、そこで見聞きした切実な声を国会へと届ける。その地道な積み重ねを通じて、今度こそ、この国の政治を転換させる。

目の前の課題は山づみですが、私は、そうした地に足の着いた真摯な取り組みの先にこそ、必ず明るい日本の未来を描くことできる、そう信じています。

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<「立憲民主党」という党名の持つ意味>
私は3年前、かつて所属していた政党が、総選挙直前に事実上解党する状況の中で、たった一人で街頭に立ち、立憲民主党を立ち上げました。その総選挙では、多くの国民の皆さんから力強いご支援をいただき、驚くべきことに、たった20日間で野党第一党の立場に押し上げていただきました。

新たな政党の代表として立候補した今も、3年前の劇的な経験は、私の政治家としての、また個人としての信念の核となっています。

しかし、今回の代表選挙に、「立憲民主党」という党名を掲げて立候補するのは、そうした個人的な経験や思いからではありません。

憲法という国の根幹をないがしろにし、国民生活の現場からかけ離れたところで行われる政治に対峙し、「立憲主義」と「民主主義」を守る政党。そうした党名を持つ政党を作り、野党第一党まで押し上げていただいたのは、われわれ政治家ではなく、国民です。

立憲主義とは、単純な多数決でも揺るがすことのできない民主主義のルールや一人ひとりの尊厳を守るという考え方です。この間の与党一強政治が進めてきたのは、国民の暮らしの声に寄り添うことなく、憲法などで定められた手続すら無視して、数の力で押し切ることです。単純な多数決が民主主義であると勘違いしてきた、まさに立憲主義に対する無理解と無視こそが現政権の明確な特徴です。その象徴が、「ご飯論法」と呼ばれる不誠実な答弁姿勢であり、憲法の明文を無視した国会開会要求の放置であります。

こうした状況を打破して、緊張感のある政治と、まっとうな手続きに基づき草の根の暮らしの声に寄り添った真の民主主義、立憲民主主義を取り戻す。この姿勢こそが、私たちの現在の与党と明確に異なる対立軸です。私は、この「立憲民主」という党名こそ、自由民主党とは明確に異なる根本的な姿勢と理念を表現するのに、最もふさわしいと考えています。


<時代の転換点>
現在、日本と世界は、間違いなく大きな転換点に立っています。それは、コロナの影響が深刻化し、長期政権が終わったというだけではありません。平成のバブル崩壊から30年近く。より大きな時代の転換を意味します。

この30年で、日本社会は大きく変化しました。日本はすでに、人口減少・超高齢社会、成熟経済の時代へと突入しています。

しかし政治は、昭和モデルの古い成功体験から抜け出すことができていません。少子化対策ひとつをとってみても、その対処が遅々として進まないのは、政治が国民生活の真の姿を知らず、効果的な施策を打てていないからに他なりません。都市と地方の関係性のあり方も、働き方も、家族の形も、個人の価値観も多様化する中で、一人ひとりを豊かにし、日本全体の活力を引き出していくための政治のあり方が必要です。

私たちが進めていく政治の第三の柱は、この多様性ある社会と暮らしを後押しすることです。

3-1:多様な地域づくりを可能にするために、使い道を縛らない自治体への交付金を拡大します。
3-2:多くの地域にとって基幹産業である一次産業について、その多面的機能に着目した個別所得補償を制度化し充実させます。
3-3:自然エネルギーを中心とした分散型エネルギーシステムの推進で、エネルギーの地産地消に取り組みます。
3-4:選択的夫婦別姓の実現をはじめ多様な家族のあり方を認め合い、ジェンダー平等を推進します。
3-5:世帯単位で組み立てられた様々な仕組みを、個人単位へと再編成します。


<歴史的な使命>
合流新党は政治家だけの政党であってはなりません。常に国民の皆さんに開かれ、多様なネットワークと連携する存在となる必要があります。

困った時に、声を届ければともに動くと思われる政党。新しい試みをしたい時に、ともに挑戦しようと思える政党。日本の、そして、それぞれの地域の未来について、課題について、ともに考え、行動する政党。今回のような緊急事態に力を発揮し、国民の生の声を国会へと届け、政治を変えていく回路となりえる、開かれた政党。それこそが新たな時代に必要とされる政治の転換であり、この新党の歴史的な使命であります。

私は、このような使命を互いに明確に認識し合うことで、新たにスタートする合流新党が、必ずやこの新型コロナウイルス感染症による危機的状況を乗り越え、誰もが希望を持てる未来を国民とともにつくる政党になると、そして、そうした政党にならなければならないと、確信しています。

そのために、私はすべての情熱と力を注ぎ、先頭に立って、右でも左でもなく前へと進ます。

この厳しく大きな仕事は、もとより私一人で成し遂げることはできません。新党に結集した仲間の皆さん、党派は違っても志を同じくする皆さん、ともに声をあげてくれる国民の皆さん、そして今は政治を諦めてしまっている皆さん。私の声がまだまだ届いていない皆さんにも、引き続き、いや、なお一層、呼びかけさせていただきたいと思います。

『私には、あなたの力が必要です。』



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