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12年目の第三艦橋

「宇宙戦艦ヤマト2199」第2話では、古代が見上げる第三艦橋の搭乗口の作画のお手伝いをしています。特設ドッグのヤマトは地上のヤマトに合わせて全体が傾いているが、タラップが変形することで足場が水平になり、クルーたちもストレスなく乗艦できている…と、一枚の絵が多くの情報を伝えています。

すこし前の艦底部を映したいくつかのカットではその一部でしかなかった第三艦橋にも、こんなにも多くのディテールが、機能があることを、ドラマの流れを止めることなく、風景の中でさりげなく、それでいて饒舌な描線で語ってゆく、「2199」のメカニック演出の見本のような場面になっています。

現在BS11とTOKYO MXでは、「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」の初のTV放送に向けて「2199」と「2202」の初期話数を放送しているのですが、放送前にこの第三艦橋の搭乗口の場面を再見したとき思ったことは、あぁチーフメカニカルディレクターの西井さんは、第三艦橋が本当に好きなんだなあ。でした。

「2199」の初期話数ではメカ作画でのカゲやハイライトをつける作業はすべて西井さんが担当されているのですが、この搭乗口のカゲつけは他のカットよりも2割ましにこまやかで。かといってその場面だけ突出している感じでもなくて。今作でのメカ作画は線の量が多いこともあり、その多くが人物に使われるものよりも大きな紙に作画されていて、だからこそ、カゲ、とくにハイライトをかなり細かくつけても、あまりうるさくならないようになっていたのか…と、初見から12年経って気づきました。

このシリーズでは、玉盛さんがメカが登場する場面のために描かれたデザイン画を、その味わいを残したまま、セル画的な表現に調整する作業をしていたのですが、当時はまだアニメーター的な経験がなかったこともあり、カゲつけはすべて西井さんにおまかせしていて。第三艦橋への西井さんの愛の深さは知ってはいたものの、「2202」以降のシリーズで、紙のサイズや解像度などのレギュレーションが毎回変わる中、西井さんにやっていただいていた部分も全て自分で作業するようになってようやく、その愛が画面にもたらしていた効果を認識することができるようになったのでした。

この場面以外にも、キャラクターのテイストは中盤以降とはちょっと違うかもしれないけれど、出渕総監督の密度が高くてかっこいい、けれど描くのは超難しい画面設計を再現するアニメーターさんや作画監督さんの作画力の高さや、画面のルックの深みなど、久しぶりに通しで観た「2199」は、やっぱすごいな「2199」と思うことばかりで。

「宇宙戦艦ヤマト2199」は、第1話と第2話を合わせた第一章「遥かなる旅立ち」として劇場の大スクリーンで観たとき、色や仕上げや特殊効果を担当されているかたがたのお仕事があまりにも見事で、それからずっと、玉盛さんの画と、西井さんの「ヤマト」愛と、このかたがたの技術力があれば、自分の仕事、なくてもいいのでは?と思っていました。実際、以降のシリーズではなくなっていった作業でもありましたし。

けれど「2199」にしかない映像の質感は、きっと、それ要る?という手順や、そこまでやる!?という思いの強さ、そして思いが走りすぎて、握手を求める森くんに塩対応をしてしまう古代、みたいな不器用さも、ぜんぶ込みだからこそ成立していたものだったのかなと、今回、時をおいて再見してみて気づきました。

これまでこのシリーズについては、不安もあって自分の仕事を中心に話をしてきたけれど、これからはもっと「2199」そのものの話をしてゆこう。第1話を再見したとき決めた気持ちでこの2週間、TV放送にあわせるかたちで「2199」の話をSNSに投稿していました。

今までやってこなかった切り口から話をするのは難しかったけれど、そうか、こんなにもこのシリーズのことが好きなんだと、あらためて実感することの多い2週間でもあって。これからも折にふれてこのシリーズの話をしてゆこう。「宇宙戦艦ヤマト2199」第一章「遥かなる旅立ち」の上映から12年目にして、そんな新たなる決意をしたのでした。

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