煙草と金星と失恋について
私はあまり煙草は好きじゃないのだけれど、私がかつて愛していた女性は愛煙家だった。ふたりで休憩に行って、彼女が煙草を吸うのを眺める時間が幸せだった。最初の一回だけは1本吸ってみるかと訊かれたけれど、それから先は二度と勧めらなかった。身体に悪いから吸わない方がいいと、私をニコチンで燻してしまわないように風下にまわりながら、彼女はよく苦笑いしていた。当時の私はカフェインが手放せなくなっていて、たまにタブレットで補ったりしていたのだけれど、そのことについては秘密にしていた。一点の曇