スタートアップ投資の魅力とリスクについて

株式投資型クラウドファンディングとは、インターネットの仕組みを使ってスタートアップが1年間に最大1億円未満の出資を個人投資家から広く募ることができる仕組みで、個人投資家からみた場合には、創業間もないスタートアップに対して投資することができる仕組みです。

本稿は、株式投資型クラウドファンディングに関してご説明させていただくとともに、イークラウドの審査に対する考え方について解説することを目的に作成したものです。「スタートアップ育成5か年計画」などもあり、スタートアップや株式投資型クラウドファンディングに注目が集まっておりますが、この機会に投資のリスクについても改めてご認識をいただきたいと考えています。


1.非上場株式に関するリスクについて

まず、株式投資型クラウドファンディングで紹介されるスタートアップはすべて非上場の企業です。非上場企業の株式は上場企業の株式と性質が大きく異なり、大前提として、以下の2点をご理解いただく必要があります。

株式投資型クラウドファンディング業務によりご購入される株式は、換金性が著しく乏しく、売りたいときに売れない可能性があり、さらに、株式相場等の影響を受ける等により、価格が大きく変動する可能性もあることから、不測の損害が発生するおそれがあります。また、取引の参考となる気配や相場は存在しません。

株式投資型クラウドファンディング業務によりご購入される株式は金融商品取引所に上場されておらず、その発行者は、収益基盤が確立されていない ことなどにより財務体質が脆弱な状態となっている場合もあります。当該発行者等の信用状況に応じてご購入後に価格が変動すること等により、損失が生じることや、その価値が消失し、大きく価値が失われることがあります。

イークラウドの契約締結前交付書面に掲載

上述の2点は、応募する前に必ずお読みいただく必要がある契約締結前交付書面にすべての案件で繰り返し記載しております。

また、イークラウドのサービスサイトの主要ページのフッターにも同様の主旨を掲載しております。

株式投資型クラウドファンディングに関する注意事項
株式投資型クラウドファンディングを通じてお客様が取得される店頭有価証券は、取引の参考となる気配及び相場が存在しないとともに、換金性が著しく乏しいものです。また、価値が消失する等、その価値が大きく失われるリスクがあります。なお、株券であっても配当が支払われないことがあり、社債券のように償還及び利息の支払いが行われるものではありません。
株式投資型クラウドファンディングを通じてお客様が取得される店頭有価証券は、配当及び売却益等金銭的利益の追及よりむしろ、当該有価証券の発行者及びその事業に対する共感又は支援が主たる目的とされるものです。
当社は、法令の定めにより、お客様からの照会に対しては、電子メールにて回答させていただきます。

イークラウドのフッターに掲載

もちろん、事業者としては、この文言を記載さえすればいいということではなく、株式投資型クラウドファンディングで投資される皆さまに、ご理解、ご認識をいただく必要があると考えております。今後も、こうしたリスクのご説明は繰り返し行ってまいりたいと考えております。

2.イークラウドの審査について

次に、イークラウドの審査についてです。

イークラウドでは、個人投資家の皆さまに案件をご紹介する前に、スタートアップから必要になる情報をご提供いただき、厳正な審査を行っております。審査において、ご提出をお願いしている情報は以下のとおりです。また、必要に応じて追加資料等の提出を求める場合もあります。

・事業概要/会社概要説明資料
・定款の写し
・履歴事項全部証明書
・法人の印鑑証明書
・役員全員の本人確認資料の写し
・役員全員のプロフィール
・株主名簿および新株予約権原簿
・決算書/税務申告書
・月次試算表
・総勘定元帳
・納税証明書
・事業計画書/資本政策
・調達資金の使途について
・主要取引先に関する情報
・労使協定書
・役員報酬決議の議事録
など

イークラウドの内部資料より

ご提出いただいた各種資料の整合性等を確認し、経営者や関係者へ複数回のヒアリングをお願いしております。主な審査項目は以下のとおりです。

審査項目及び審査手法の概要
当社は、発行者から提出された発行者の基本状況に関する資料(会社概要、定款(写し)、履歴事項全部証明書、印鑑証明書、本人確認書類(代表者)など)、財務状況や事業計画等に関する資料、経営者や会社関係者へのインタビュー、その他外部データなどを基に、次の①から⑪に掲げる項目について厳正に審査を行い、募集実行の可否について決定します。
① 発行者及びその行う事業の実在性
② 発行者の財務状況
③ 発行者の事業計画の妥当性
④ 発行者の法令遵守状況を含めた社会性
⑤ 反社会的勢力への該当性、反社会勢力との関係の有無及び反社会的勢力との関係排除への仕組みとその運用状況
⑥ 当社と発行者との利害関係
⑦ 当該株式に投資するに当たってのリスク
⑧ 調達する資金の使途
⑨ 目標募集額及び上限募集額(会社法第199条第1項第2号により発行会社が発行決議によって定める募集株式の払込金額の総額をいいます。)が、発行者の事業計画に照らして適当なものであること
⑩ 過去に調達した資金の資金使途
⑪ コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の状況

イークラウドの取扱要領に掲載

また、審査に関する記録、審査会議の議事録等については、重要な事項として10年間保存することとしております。

審査に係る記録の保存の方法・期間
当社は、審査を行う案件に対して、案件審査会議を行い、審議内容や指摘事項、結果の判断に至る事由を記載した議事録を作成し、案件審査のために作成・提出された資料と共に、書面又は電磁的方法により審査終了日から10年間保存します。

イークラウドの取扱要領に掲載

事業に加え、財務、法務、労務など、業種や業態によってリスクは異なることがあるため、専門のスタッフと必要に応じて弁護士や会計士などの専門家とも連携しながらリスクを整理することとしています。

例えば、確認の結果、財務体質に課題がある場合(赤字体質である、債務超過である)等の場合には、売上向上に向けた計画の方向性を確認したり、コスト削減などについての具体的な計画や実施状況などについて確認を行います。既存株主からの追加投資の方針や新規投資家との交渉状況を把握することで財務の健全性について確認する場合もあり、それらは契約締結前交付書面に記載されています。

また、投資した資金がそのまま借入金の返済資金に充当されてしまうことは、個人投資家の皆さまは望んでいるものではないという考え方から、借入金の返済資金には充当しないことを契約書等で経営者に確認しております。

その他
・必要な許認可等が取得できていない場合
・利益相反取引がある場合
・関連当事者間取引がある場合
・労務関係に課題がある場合
などについては、事前に整理することや、速やかに解消することなどを契約書等で確認しております。整理に時間がかかる場合には、整理をしていただいた後に改めて審査を行う場合もあります。

3.個人投資家の皆さまへのメッセージ

以上、非上場株式に関する性質とリスクとイークラウドの審査についてお伝えしてまいりました。魅力的と思えるスタートアップへの投資であっても、リスクが必ず隣り合わせになっていることをご理解のうえ、投資をご判断いただきたいと考えています。

イークラウドでは発行市場や業界の健全な発展のために、今後もスタートアップ投資の魅力とリスクをお伝えできるように活動してまいります。

今後とも叱咤激励、よろしくお願いいたします。

イークラウド株式会社
代表取締役
波多江直彦

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