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正常心拍数なのにwideQRSをみたら鑑別するものとは

正常心拍数でwideQRSを見たら

・WPW症候群
・脚ブロック
・促進性心室調律

を鑑別する

QRS波形異常について

QRS波は心室の脱分極を示し、心電図(ECG)の中で心室の興奮を反映する重要な波形です。正常なQRS幅は3mm以内であり、この範囲に収まる場合は「狭いQRS波形(narrow QRS)」と呼ばれます。しかし、QRS幅が3mmを超えると「広いQRS波形(wide QRS)」とされます。wideQRSになる理由は先行する心室興奮(WPW)、心室の伝導障害(脚ブロック)、心室調律(促進性心室調律)です。波形見ることと、P波のとの関連を見れば上記の鑑別は難しくありません。一緒に見ていきましょう。

WPW症候群

WPW症候群は、ケント束という副伝導路が心室の興奮を通常よりも早く伝導することでQRS幅が広くなる疾患です。通常、心房からの興奮は房室結節を経て心室に伝わりますが、WPW症候群ではケント束が房室結節をバイパスして心室に直接興奮を伝えるため、QRS波の立ち上がりが早く、PQ間隔が短縮します。これにより、QRS波形にはデルタ波と呼ばれる特有の波形が現れます。

脚ブロック

脚ブロックは、心臓の伝導系における右脚または左脚の伝導障害によって広いQRS波形が見られる状態です。伝導障害のある側では、伝導障害のない側からの興奮が遅れて伝わるため、QRS波形が広がります。右脚ブロックの場合、V1誘導では広いR波、V6誘導では広いS波が観察されます。左脚ブロックの場合は、V6誘導で広いR波、V1誘導で広いS波が見られます。QRS幅が3mm以上であれば完全脚ブロック、3mm以下であれば不完全脚ブロックとされますが、不完全左脚ブロックは一般的に使用されません。また、V1およびV6で特徴的な所見が認められない場合は非特異的心室内伝導障害と呼ばれます。

促進性心室調律

促進性心室調律は、心室からの興奮によって広いQRS波形が現れる状態です。心室からの興奮は伝導系を経由しないため、通常よりも広いQRS波形が形成されます。促進性心室調律は心拍数が60~100bpmで、洞調律や房室ブロックにより上位調律が心室に伝わらない場合に見られます。促進性心室調律では、P波が存在しないか、P波を追い越してしまうことがあります。このため、WPW症候群や脚ブロックとは異なる特徴を示し、PQ間隔を確認することで鑑別が可能です。

このように、wide QRS波形を呈する疾患にはそれぞれ特有の特徴があり、診断にはこれらのポイントを考慮することが重要です。

正常心拍数でwideQRSを見たら
・WPW症候群
・脚ブロック
・促進性心室調律
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