寝れん。

おやすみなさい。

誰に語りかけるわけでもなく虚無と交わされる恒例の挨拶は夜の始まりの合図だ。
寝る前にスマホを触ってしまう生活習慣が故に目を閉じても覚醒し続ける自分と戦い続ける長い夜。
246を駆け抜けるバイクのエンジン音と薄く単調なサウンドが魅力の換気扇、警告音のような蛙の鳴き声がこのコンサートの主役らしい。

明日は早起きするんだ!
という自分の精神とは裏腹に身体はまだ夢を見る気配はない。
君を休めるためでもあるんだ。意地を張らないで早く寝よう。

ひとりよがりな言葉が夜を気まずくする。
耐えきれない空気に溜息をつき瞼のカーテンを上げる。
時計を確認するとまだ20分しか経ってない。
普段なら1時間は経過してるのに。

呆れた。まだコンサート始まったばかりじゃん。

膜が下がり幕が上がる。
歌い続ける名もなき音楽隊と共に再びこのくだらない夜の合図をしようじゃないか。



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