05. 敢えて、雑
「雑」の意味をググると
やり方が念入りではなく、大ざっぱなこと。
とある。
私は自他共に認める、まさに雑な人で、そのクオリティは関係良好なお姑さんでさえ「あなたは雑よね」と面と向かって言ってしまう程。
でも、しかし。私は敢えて、選んだ上での雑な性格なのだ。
なんなら本来は結構なレベルの几帳面とすら言いたい。
物には定位置を決めたい。
本は背の高さを合わせて置きたいし、服は全部ハンギングで収納したいし、そのハンガーも全部同じ種類に合わせたい。
だけど、敢えてそうする事を避けている。
敢えてきっちりかっちりし過ぎていない、少し雑多な環境に慣れるように生活している。
なぜか。
几帳面は他人、特に身近にいる他人にかなりのしんどさをもたらすからだ。
私には二歳上の、自閉症の兄がいる。
最近でこそよく聞くようになったワードだが、昔は「兄が自閉症で」と言うと「ひきこもりなの?」みたいな事を返してくる人が大半だった。
まあそれはそれとして。
兄は、もう教科書に書いてあるような典型的な自閉症で、とにかくこだわりが強い。
家の中のほぼ全ての物が、彼の思う定位置に無ければ気が済まない。
例えば新聞。
居間にあるローテーブルの右上端、角から2センチの位置に7日分が積まれていなければならない。
毎朝自分が郵便受けから運び、挟まったチラシを一枚ずつ確認しながら抜き、番組表で各番組が決まった時間に始まるかを確認し、そしてローテーブルへ持っていき、積んだ新聞の一番下から7日前のものを抜き出し、そして今日の分を一番上に置く。
私を含め他の家族は、新聞を読む際には必ず「今日の朝刊読むよ」と7日分のうちのどれを積み上げから抜くのかを報告しなければいけない。
読んでいる最中は真横で監視される。めくるときにずれる紙面を直したいから。
読み終わった後、畳み直すのだが、これももちろん直される。
かといって広げっぱなしにしているとそれはそれで喚かれる。
家中のことが万事が万事、この調子である。
こんなスーパー几帳面な人間と狭い家で暮らしたら、几帳面というのは全くの長所じゃないことがよぉく分かる。
他者に厳しすぎる。
許容範囲が狭すぎる。
まぁ、兄については仕方がない。
かもしれないが、
他者に厳しく許容範囲の狭い健常者はかなりタチが悪い。
しかも大抵の場合、几帳面な人vsそうじゃない人になったら、前者が賛同者を得やすいから、そのことに気づかないまま、ますますエスカレートする。
というわけで敢えて私は「雑」を貫いているのだ。
裏返ったままで洗濯して畳んだTシャツをみて「雑だな」と息子に言われたけど、それも敢えてだから。
ていうか、イヤならそもそも洗濯カゴに入れるときに自分で元にひっくり返しやがれ。
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