見出し画像

〇ア・ニッケル・アンド・ア・ネイル~その意味とカル・デイヴィッド


〇ア・ニッケル・アンド・ア・ネイル~その意味とカル・デイヴィッド
 
【A Nickel And A Nail Story】
 
 
(本作・本文は約6000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ12分から6分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと20分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)
 
~~~~~
 
カル・デイヴィッドの訃報関連で、次回の『ソウル・トゥ・ソウル』で彼のブルーズ・アルバムから「ア・ニックル・アンド・ア・ネイル」をかけようと思ってるのだが、それこそこの曲が知られるようになった1972年からはや50年、実はその意味をよくわかりかねていた。前々から、「5セント硬貨と1本の釘」とはなにか深い意味でがあるのではないか、と思っていたが、何も調べたりはしていなかった。
 
それが、今回のカル・デイヴィッドの訃報のおかげで調べてみたら、なかなかのことがわかった。
 
このニックルがアメリカの5セント硬貨ということはすぐわかるが、ネイル、釘、爪が、直訳はそうでも、なんで5セントと釘なんだろう、ということになる。これを最初にヒットさせたのは、O.V.ライトというソウル、ブルーズ・シンガーだが、彼のジャケットには、まさに5セント硬貨と釘が一本描かれている。
 
 

(まさに、ニックルと釘)

(写真)
 
実はこのネイル(釘)は、馬の蹄鉄に使う釘のことのようだった。「ザ・ニックル・アンド・ザ・ネイル」というちょっとした物語が南部にあるという。
 
それによると、そのストーリーはこうだ。
 
昔昔、深南部のとある若者が、女友達のところに向かう時に、ポケットに5セントだけ忍ばせていた。5セントだけで、その彼女を満足させられるだろうか、貧乏人の自分なんかを見てくれるだろうかと思っていた。その道すがら、曲がった馬の足にはめる蹄鉄に使う釘がデコボコ道に落ちているのを見つけ、それを拾った。
 
そして、その蹄鉄の釘と5セント硬貨をがちがちゃ言わせて歩いているうちに、だんだんと自分に自信とプライドがみなぎるようになった、という。
 
おそらく、その頃、馬を所有するということが金持ち(リッチマン)ではなくとも、少なくとも経済的に安定するようなものだったのだろう。今だったら、高級車のキーを見せびらかすのと似た感覚だったのかもしれない。
 
つまり、今は5セント硬貨と馬の蹄の釘しかないけれど、ちゃんと将来やっていけるよ、という意思表示になるのではないか、ということだ。
 
これが、「5セント硬貨と釘」のちょっとしたストーリーだが、OVが歌うヴァージョンでは、むしろ、「5セントと釘」しかない、女に捨てられたしがない男、という悲しいブルーズになっている。
 
O.V.ライトが歌うこの「5セント硬貨と釘」は、ヴァ―ノン・モリソンというライターが書いている。共作者にはD.マローンという名があるが、これは、O.V.所属のバックビート・レコーズの社長、ドン・ロビーの変名だ。ドンは曲書きにはそれほど携わっていないのだろうが、著作権の半分を取るために、その名前をいれているという。ヴァーノンはほかにボビー・ブランドやジョニー・アダムスなどにも曲を提供している。
 
「かつては、俺は愛もたくさん金もあった。だが、しくじってしまった。
いまや、5セント硬貨と釘一本しかポケットにはない。
5セントと釘でまだギリギリプライドはあるが。
お前は、俺を捨て、俺に自分の道を行けと言った。なんで、俺がもう一度成功できようか…」
 
といった愚痴だ。
 
O.V.ライト・ヴァージョン、ウィリー・ミッチェル・プロデュース
 

 
A Nickel And A Nail Lyrics
(Written by Vernon Morrison, D.Malone)
Performed by O.V. Wright
 
Oh, I once had love
And a plenty of money, oh, yes I did
But someway, somehow
Lord knows I failed, yes I did
 
Now all I have
In my pocket, Lord have mercy
All I can give account of
Is a nickel and a nail
 
I wanna say it one more time
All, all I have is a nickel and a nail
 
My friends, no, no, no, no
They just don't know, Lord have mercy
They still down in their hearts
They think I'm doing swell, but they don't know
 
'Coz around them I smile
And I jingle, yes I do
All you hear me jingling
Is a nickel and a nail, that's all it is
 
Now a nickel and a nail
Might save my pride, you see
But the need for your sweet love, oh, baby
Is hammering inside of me, oh
 
You said a long time ago
You think the thrill is gone, I couldn't believe it
You said O.V. I think you better hit
That old lonesome, lonesome, lonesome trail, I got to leave you
 
Oh, baby, I'm wondering
How do you expect for me to make it? I don't believe I will
Oh, I can't make it, can't make it far
With a nickel and a nail, that's all I have
 
Oh I can't sleep
All I got baby, is a nickel and a nail
If I get lonely
I can spin a nickel, they will spin
 
~~~
 
●カル・デイヴィッド79歳で死去
 
訃報。
 
カル・デイヴィッドは1943年6月15日シカゴ生まれ、2022年8月16日死去。79歳。
 
そして、カル・デイヴィッドがおそらくヨーロッパのテレビ用『ソング・オブ・マイ・ライフ』にやったライヴ映像。なお、番組『ソウル・トゥ・ソウル』では普通のCDヴァージョンをかけます。
 
Kal David "Nickel and a nail"

 
カル・デイヴィッドのすぐ右隣は、ローリー・ボノといいカルの奥さん。
 
上記を含むフル・ショーの映像。約1時間39分. アルバム『クロスローズ・オブ・マイ・ライフ』がドイツで2013年に発売され、それを受けての番組出演のようだ

2013/04/25up 2012/10/20 収録
 
Setlist: For Song Of My Life, 2012
 
0:00:00
01. Let The Good Times Roll
02. Back Door Man
03. Say Yeah (ftg Miss Laurie Bono)
04. Free Ride
05. The Visit
06. I Idolize You  (ftg Miss Laurie Bono)
07. I Don’t Want Nobody (ftg Miss Laurie Bono)
08. While My Guitar Gently Weeps
09. Double Tuff
10. Wishing Well
11. A Nickel And A Nail
12. Let’s Make $1,000,000
13. Thrill Is Gone
14. Thing Called Love (+Laurie, Dorien)
15. Crossroads Of My Life
Enc I’ve Got My Mojo Working
1:38:00
 
~~~
 
「ザ・ニックル・アンド・ザ・ネイル」

 
~~~~
 
■サポートのお願い
 
本記事は有料設定ですが、このnoteで最後まで無料で読めます。読後、お気に召せば「記事を購入する」、あるいは、「サポートをする」(金額は自由に設定可)なども可能です。クレジットカード払いか、携帯電話支払いがお選びいただけます。アカウントを作らなくても支払い可能。アカウントを作ると、次回以降手続きが簡略化できます。
 
ソウル・サーチン・ブログは2002年6月スタート、2002年10月6日から現在まで毎日一日も休まず更新しています。ソウル関係の情報などを一日最低ひとつ提供しています。
 
これまで完全無給手弁当で運営してきましたが、昨今のコロナ禍などの状況も踏まえ、広くサポートを募集することにいたしました。
 
ブログの更新はこれまで通り、すべて無料でごらんいただけます。ただもし記事を読んでサポートしてもよいと思われましたら、次の方法でサポートしていただければ幸いです。ストリート・ライヴの「投げ銭」のようなものです。
 
オリジナルはソウル・サーチン・ブログ
ソウル・サーチン・ブログ・トップ
https://ameblo.jp/soulsearchin/
 
noteでの記事購入、サポートのほかに次の方法があります。
 
方法はふたつあります。送金側には一切手数料はかかりません。金額は100円以上いくらでもかまいません。
 
1) ペイペイ(PayPay) 使用の方法
 
ペイペイアカウントをお持ちの方は、こちらのアカウントあてにお送りいただければ幸いです。送金先IDは、 whatsgoingon です。ホワッツ・ゴーイング・オンをワンワードにしたものです。こちらもサポートは匿名でもできますし、ペンネーム、もちろんご本名などでも可能です。もし受領の確認、あるいは領収書などが必要でしたら上記メールアドレスへお知らせください。PDFなどでお送りします。ペイペイでのお支払いの場合、受領確認・御礼メッセージが送りにくいので、ツイッターなどのアカウント、あるいは、メールアドレスなどがあればメッセージにお書き添えいただければ幸いです。
 
2) ペイパル (Paypal) 使用の方法
 
ペイパル・アカウントをお持ちの方は、ソウル・サーチンのペイパル・アカウントへサポート・寄付が送れます。送金先を、こちらのアドレス、 ebs@st.rim.or.jp にしていただければこちらに届きます。サポートは匿名でもできますし、ペンネーム、もちろんご本名でも可能です。もし受領の確認、あるいは領収書などが必要でしたら上記メールアドレスへお知らせください。PDFなどでお送りします。
 
3) ノート(note)のサポート機能
 
本ブログ、ノート(note)には少額のサポート・システムがついています。購読(100円から、記事量によって変動)、また、サポート(金額自由設定)もできます。Noteのサポート・ボタンなどをご利用ください。
 
4) サポートしたいが、ペイペイ、ペイパル、ノートなどでのサポートが難しい場合は、 ebs@st.rim.or.jp までご連絡ください。銀行振込口座をご案内いたします。(ちなみに当方三井住友銀行です。同行同士の場合、手数料がゼロか安くなります)
 
コロナ禍、みなさんとともに生き残りましょう。ソウル・サーチン・ブログへのサポート、ご理解をいただければ幸いです。
 
ソウル・サーチン・ブログ運営・吉岡正晴
 
本記事はnoteでも読めます
Noteトップ
https://note.com/ebs
 
ANNOUNCEMENT>Support
 
 
 
~~~~

ここから先は

0字

¥ 200

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?