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〇モータウン・ヒッツを英ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラがバックをつけて新装発売~声はオリジナル~「アブラハム・マーティン・アンド・ジョン」物語

〇モータウン・ヒッツを英ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラがバックをつけて新装発売~声はオリジナル~「アブラハム・マーティン・アンド・ジョン」物語

【Motown Hits Backed By Royal Philharmonic Orchestra : Album Will Be Out On November 19, 2021】

本記事は最後まで無料で読めます。

(本作・本文は約5000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ10分から5分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと17分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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〇モータウン・ヒッツを英ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラがバックをつけて新装発売~声はオリジナル

【Motown Hits Backed By Royal Philharmonic Orchestra : Album Will Be Out On November 19, 2021】


4人。

イギリスのロイヤル・フィルハーモニーがまたまたポップスのクラシック作品をてがけた。ただカヴァーするのではなく、オリジナル・アーティストの声を抜き出し、そこに新たにオーケストラを付け加えるという手法で新しい作品にするというもの。今回は、なんとモータウン・ヒッツをてがけた。

タイトルは、『ア・シンフォニー・オブ・ソウル』で2021年11月19日ユニヴァーサル・ミュージックから発売される。

そのリード・シングル(楽曲)「アブラハム・マーティン・アンド・ジョン」の音源、ユーチューブが公開された。マーヴィン・ゲイが1968年に録音し1969年10月発売のアルバム『ザッツ・ザ・ウェイ・ラヴ・イズ』に収録された作品だ。

まずは、ロイヤル・フィルとの今回の新曲を。

今回のロイヤル・フィルとの新録。ビヴァリー・ナイトとのデュエットの形で録音された。


https://www.youtube.com/watch?v=bOfY_4zbV_k&t=307s

『Motown With The Royal Philharmonic Orchestra (A Symphony Of Soul)』
2021年11月19日発売

アマゾン→https://amzn.to/3C88Y54

1. Dancing In The Street – Martha Reeves & The Vandellas
2. Reach Out I’ll Be There – The Four Tops
3. I Heard It Through The Grapevine – Marvin Gaye
4. What Becomes Of The Brokenhearted – Jimmy Ruffin with Mica Paris
5. The Tears Of A Clown – Smokey Robinson & the Miracles
6. I’ll Be There – The Jackson 5
7. I Hear A Symphony – The Supremes
8. Abraham, Martin & John – Marvin Gaye with Beverley Knight
9. My Girl – The Temptations
10. Just My Imagination (Running Away With Me) – The Temptations
11. With You I’m Born Again – Billy Preston & Syreeta

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■『アブラハム・マーティン&ジョン』を巡る運命

最初に音源が公開されたこの楽曲にはちょっとしたストーリーがある。

これは元々、インディアナ州出身のシンガー/ソングライター、ディック・ホラー(リチャード・ルイス・ホラー)が、1968年にあいついで暗殺されたリーダー、マーティン・ルーサー・キング(1968年4月4日)、ロバート・ケネディー(1968年6月6日)にインスピレーションを受け、さらにジョン・F・ケネディー(1963年11月22日)、エイブラハム・リンカーン(1809年2月12日~1865年4月15日)を加え、一曲に仕上げた。曲のタイトルは、リンカーン、キング、ケネディーの3人だが、ジョン・F・ケネディーの弟、ロバート・ケネディーについても歌われている。いわば、「アブラハム、マーティン、ジョン、&ボビー(もしくはロバート)」といってもいい。

Abraham, Martin and John - Dick Holler


https://www.youtube.com/watch?v=Kdk5AOGtZTw

このヴァージョンは一般的には知られることにならなかったが、これをシンガーのディオンがカヴァー。

Abraham * Martin and John *** Dion



https://www.youtube.com/watch?v=a5hFMy4pTrs&t=109s

ディオンのオリジナル・ヴァージョン


https://www.youtube.com/watch?v=ZBiH5fsKJB8


https://www.youtube.com/watch?v=a5hFMy4pTrs

テレビで生演奏したもの
Dion-Abraham, Martin & John (1968)


https://www.youtube.com/watch?v=DXl3XG5aGtM

その映像を使って、同期させたもの



https://www.youtube.com/watch?v=xtMvnqtNL3I


ディオンのヴァージョンはその哀愁を帯びた声とともに1968年暮れから大ヒット。ポップ・チャートで4位を記録、ミリオン・セラーになった。ちなみにオルガンはニック・デカロだそうだ。

そして、この楽曲に感銘を受けた多くのシンガーたちがカヴァー。スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、マムズ・メイブレイ、レイ・チャールズ、ハリー・ベラフォンテ、ボブ・ディラン、ウィルソン・ピケットなどだ。また、トム・クレイはこの曲とバート・バカラックの「ホワッツ・ザ・ワールド・ニーズ・ナウ・イズ・ラヴ」をメドレーにして1971年に大ヒットさせ、これはホット100で8位、R&Bチャートでも32位を記録している。

それをリミックスしたものがユーチューブにある。なんと、オバマ、キング牧師などのスピーチに加え、バート・バカラックなどもうまく編集している。

これは、なかなかすごい大胆リミックス! 
What the World Needs Now/Abraham, Martin and John - Tom Clay 1971 remix

https://www.youtube.com/watch?v=MWW24zbHM2U

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■不朽の名盤へ繋がる道

さて、このマーヴィン・ゲイのアルバムからは最初に1969年9月にアルバム・タイトル曲になる「ザッツ・ザ・ウェイ・ラヴ・イズ」がシングルカットされ、R&B2位、ポップで7位を記録。

それがこれ。
That's The Way Love Is (Stereo Version)


https://www.youtube.com/watch?v=6C5f2GMUWqs

お聴きになればわかるように、これは1967年にグラディス・ナイト&ピップス、1968年にマーヴィン・ゲイで大ヒットした「アイ・ハード・イット・スルー・ザ・グレイプヴァイン(邦題、悲しい噂)」を下敷きにしたいわば「二匹目のどじょう」を狙った作品だ。

そして、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルのシングルを一枚はさんで、「ハウ・キャン・アイ・フォーゲット」(R&B18位、ポップ41位)がでる。

マーヴィン・ゲイのオリジナル・ヴァージョン


https://www.youtube.com/watch?v=F1LWVY0wwG4

そして、ここからが興味深いのだが、マーヴィンはこの曲のメッセージをいたく気に入り、録音したわけだが、これをシングルカットしてヒットさせたいと思った。ところが、モータウンのベリー・ゴーディーはこの曲が持つメッセージが、政治的すぎるということで、シングルカットに否定的で、結局、カットをさせなかった。

ただ、おもしろいことに、イギリスではこの曲の人気が高かったこともあり、マーヴィンのヴァージョンもシングルとなり、ヒットを記録する。

そして、この「アブラハム・マーティン&ジョン」のようなメッセージを持つ曲に対して、マーヴィンは並々ならぬ意欲を見せ、「自分はこうしたメッセージ・ソングも歌っていくんだ」という強い意志を持つようになったのだ。

このメッセージ・ソングがアメリカでシングルカットされなかったことを重く受け止めたマーヴィンは、次にそうしたメッセージ・ソングを作るなら、必ずヒットさせたいと思った。

そうして出会ったのが、「ホワッツ・ゴーイング・オン」だった。これを共にアル・クリーヴランド、レナルド・ベンソンとともに書いたマーヴィンにとって、これは会心の自信作となった。

これを完成させると、案の定ベリー・ゴーディー・モータウン社長は、リリースに異を唱えた。「お前はラヴソングだけを歌っていれば、それで人気も上々だから、それでいいではないか」と。だが、マーヴィンは今度は頑として譲らなかった。「アブラハム・マーティン・アンド・ジョン」がイギリスで受け入れられていたこともあり、そうした作品が時代のながれで受け入れられるだろうという読みもあった。そして、これをシングルにしなければモータウンを辞める、とまで言って、ついにベリー・ゴーディーを説得する。

つまり、「ホワッツ・ゴーイング・オン」への布石がこの「アブラハム・マーティン・アンド・ジョン」にあったというわけだ。

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その「アブラハム・マーティン・アンド・ジョン」はディオンの大ヒット以降無数のカヴァーが誕生した。そのいくつかをご紹介しよう。

なんと、スモーキー・ロビンソンがホワイトハウスでオバマ大統領の前で歌っているヴァージョン
2014/01/15up


https://www.youtube.com/watch?v=P1bJMJ1Vucw


これは、見入ってしまう。スモーキーは、ここでも言っているが、ディオンのヴァージョンを初めて聴いたとき、涙を流し、すぐにミラクルズでカヴァーした。

Smokey Robinson & The Miracles - Abraham, Martin and John


https://www.youtube.com/watch?v=NsexcNF0JZc

ホイットニーもライヴで (1997年)
Whitney Houston ~ Live in 1997 (Pt. 6/14) ~ Abraham, Martin & John


https://www.youtube.com/watch?v=uSW8pCry_tg

レイ・チャールズのライヴも (マーティン・ルーサー・キング・テレビ・スペシャル、1986年より)


https://www.youtube.com/watch?v=OatjylAwWJs

故リンデン・デイヴィッド・ホールのものも。1999年4月10日ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホールで
Lynden David Hall - Abraham, Martin and John (Live @ Royal Albert Hall, London, April 10th, 1999)


https://www.youtube.com/watch?v=YokJww67wSg


アンディー・ウィリアムス
Andy Williams - Abraham, Martin and John (1969)


https://www.youtube.com/watch?v=tpWLoUgPx_8

それにしても、いい曲だ。

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