世界に広がる人種差別への平和的抗議運動
世界に広がる人種差別への平和的抗議運動
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◎ 世界に広がる人種差別への平和的抗議運動
平和的抗議(Peaceful Protestant)。
平和的な抗議運動の波が全米の主要都市(160以上)だけでなく、なんと世界中に広がっている。こんなに大きなうねりになるとは、1週間前には予想だにしなかった。そして日々最新情報があふれ出る。まだ頭の中がうまく整理できないが、現時点でのちょっとした感想を記しておきたい。
2020年5月25日、アメリカ中西部ミネソタ州ミネアポリスで白人警官デレク・ショーヴィンが黒人の一般市民ジョージ・フロイドさんの首をしめて殺害したことで全米各地、さらに世界各地へ抗議運動、デモ、いくつかの場所では暴動、略奪が起きる事態になった。連日CNNなどは全米各地、世界各地のデモ、抗議運動を放映している。今回の事件で印象的なことは平和的デモ行進が多いこと。警察官の中にも膝まづきの姿勢を取り、抗議に同調するものさえいたりする。
(左ジョージ・フロイド、右殺害したデレク・ショーヴィン元警官)
そもそもその根底にあるものは何か。それは根強い人種差別だ。人権を無視した正義のなさだ。人々は「ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命も大事だ)」と「正義を」を掲げて連日デモ行進を続けている。コロナ禍で自宅待機を強制されていた彼らがそのうっぷんを晴らす意味も含めてストリートにでている側面もある。下記の「ブラック・ライヴズ・マター」の事件一覧でもわかるように、本当に同じことが繰り返されている。ここまでくると黒人白人にかかわらず警察の暴力沙汰に市民の怒りが爆発して当然だ。
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人種差別。
人種差別も千差万別だが、その代表的なものは白人による黒人憎悪だ。今回のきっかけとなった事件が起きたミネアポリスは黒人比率が低い街で白人が8割を超える。黒人はかつては10%に満たなかったが最近では16%程度まで増えているという。しかし、その16%に満たない黒人が警察官の暴行を受けた数字は6割に上るという。
こうした人種問題を発端とした暴動は40年以上も前からある。
映画『デトロイト』(2017年)は1967年のデトロイト暴動を描いたもの。(内容は下記リンク参照)
1968年4月メンフィスでマーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺され各地で暴動が起こりそうになったとき、ボストンでライヴを行う予定だったジェームス・ブラウンは公演中止を要請されたが、逆に公演をしそれをテレビ中継させ、黒人同胞に暴動に加わらないよう説得しそれが功を奏した。
1989年のスパイク・リー映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』は、フィクションだがニューヨークのピザ店で起こる暴動から黒人が首を絞められ警官に殺されるシーンがある。これは2014年にエリック・ガーナーが殺されたときに、映画と同じことが起こった、と言われた。
1991年のロスでのロドニー・キング事件が1992年に暴動に発展した。
今年(2020年)だけでもジョージア州のアモード・オーブリーが白人3人組に殺されたり、ケンタッキーでは自宅に犯人宅と間違えて押し入った警察官がその住人(犯罪とはまったく関係ない)を射殺するという痛ましい事件も起きている。警官の暴力からのそうした事件は枚挙にいとまがない。
何よりこうした動きが大きなうねりとなっているのは、実際の暴力行為が動画で簡単に記録され、SNSなどで一挙に拡散するからだ。これはさすがに1960年代や1970年代にはこうはいかなった。機材の発展が人間のおぞましい汚点を映し出すことになった。かつてギル・スコット・ヘーロンは「革命はテレビ中継されない」と歌ったが、時代は移ろい「革命はテレビ中継される」ところまで来たのだ。
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解決策はあるか。
すべて人種差別・偏見などが元になった悲劇だ。ではこの人種差別をどうなくしたらいいのか。僕のような日本に住む外部の人間が何か言えるのか。やはり、人間の根源的な問題がそこにあり、人類共通の普遍的テーマだろうから、何か言明するくらいはいいだろう。
では、その人種差別は、やはりすぐにはなくならないだろうが、結局、教育と学習しかないと思う。
生まれながらにして差別感情を持っている人間はいない。それは何年か生きていくうちに自然にまわりから教えられ、あるいは、自分で知って、そういう感情が芽生える。
そこで、できるだけ早い時期から、「人種差別はいけないこと」だと教える(エデュケートする)。「それはいけないこと」だと学ぶ(ラーニング)ことに尽きると思う。
もちろん生理的に黒人が嫌いな白人もいるだろう。KKKやその他の白人至上主義者などはそうなのだろう。だがそうした生理的にダメなものでも、教育と学習である一定の歯止めをしていかなければならないと考える。
そのときに、無知と無関心、そして沈黙は「罪」になる可能性もでてくる。知識がある者が知識がない者をバカにするのではなく丁寧に教え、それがない者はある者から謙虚に学ぶしかない。そして感情に任せずに理性に問うしかない。これはすべての行動行為に言える。人をバカにする、最近ではディスるというが、それが偏見のルーツであり、すべての争いの発端となる。
これは白人対黒人だけに限らない。あらゆる人種差別問題、差別問題、階級問題は、世界中あらゆるところに存在している。日本人対韓国人・中国人・その他の国の人たちという対立もよく出てくる。中国人の近隣諸国への蹂躙も問題としてよく指摘される。
人類が持つ根本的な問題(イシュー)なのだと強く認識するしかない。
そして、もうひとつ人種問題を含む争い(戦争)に対する究極の答えは「愛」だと思う。「憎しみ」ではなく、相手に対する「愛」を持てば相手に暴力をふるおうとは思わない。
Stevie Wonder : Love's In Need Of Love Today (1976)
「今こそ愛が愛を必要としている」
しかし、嫌いな相手を好きになれといわれても無理だ。その場合でも嫌いな相手に暴力は行使しないようにするのは理性であり知性だ。それは教育と学習で得る知性でしかない。それはたとえば他の動物にはない人間特有のものだ。
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ホワイトハウス。
たとえば現アメリカ大統領が今回のジョージ・フロイドさん死去に関連して、少しでも黒人蔑視と取られるような発言をすれば、今年の大統領選で落ちる可能性も高くなる。また、コロナ禍の対処の仕方でもトランプが間違いを犯せば落選する。もしそうなったとすると、コロナ禍の唯一のいい意味での「得点」はトランプを落選させたことになるだろう。
6月5日、首都ワシントンDCの16ス(シックスティーンス)・ストリート(16丁目)の路面に黄色のペイントでBLACK LIVES MATTERと大きく文字が描かれた。この道はホワイトハウスへ一直線に通じる道で、そのコーナーが「ブラック・ライヴズ・マター・プラザ」という名前になった。これは同市市長のミュリエル・バウザーさんの発案で書かれたものだという。
上空(宇宙)からの写真でもしっかり文字が読み取れる。
(右がホワイトハウス)
この道路名の変更(以前はペンシルヴェニア通り)によって、ホワイトハウスの(トランプの)現住所は、「1600 Black Lives Matter Plaza NW, Washington DC, 20500 USA」になるそうだ。
人種差別問題に消極的なトランプ大統領に対して、おひざ元からの強烈な痛快パンチだ。
今日も、今も、あちこちでの警官の暴力の映像が映され、一方で平和的にビル・ウィザースの「リーン・オン・ミー」を合唱するシーンも映し出される。解決への糸口を見つけるのは難しいが、一歩でも警官の暴力が減る方向になってもらえればと思う。
(ビル・ウィザース物語は、本noteの前の投稿をごらんください。「リーン・オン・ミー」誕生秘話も紹介しています)
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■最近の人種差別問題に関するソウル・サーチン・ブログ関連記事。
映画『デトロイト』~2018年1月日本公開~1967年の暴動を50年後に描く衝撃作(1)
2017年11月20日(月)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12329704810.html
○映画『デトロイト』(2)~ドラマティックスの栄枯盛衰~新スター誕生、ラリー・リード役アルジー・スミス
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12330293292.html
映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』~アルバムから映画まで27年を経てのブラックムーヴィーの金字塔
2015年09月27日(日)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12077294077.html
●ブラック・ライヴズ・マターのきっかけとなった事件群
被害者はいずれもアフリカン・アメリカン(黒人)。
【ロドニー・キング事件】
1991年3月3日、カリフォルニア州ロスアンジェルスでロドニー・キングがLAPDの警官数人に激しく暴行された。その模様が近所に住む市民にビデオ撮影され、これがテレビ局(KTLA)に持ち込まれ放送されたところ、一挙に非難と抗議の運動が巻き起こた。その後、当該の警察官への処分が軽かったために、それに不満が爆発、暴動へ発展した。いわゆる「ロス暴動1992」だ。ロドニー・キングは2012年6月17日47歳で自宅プールで死去。
【トレイヴォン・マーティン事件】
2012年2月26日、フロリダ州サンフォードでトレイヴォン・マーティン(17歳)が自警団のジョージ・ジマーマン(28歳ヒスパニック系)に射殺された事件。ジマーマンは同州にある「スタンド・ユア・グラウンド法、正当防衛法」のために無罪となり、抗議運動が起こった。
黒人を殺した白人が相次いで不起訴となったことで、各地で暴動、抗議行動が起こった。これらすべてを含めてこのころからハッシュタグ #BlackLivesMatter (黒人の命だって大事なんだ)、がSNSを中心に広がり、運動が大きくなった。
【エリック・ガーナー事件】
2014年7月17日、ニューヨーク・スタッテン・アイランドで起きた事件。路上で煙草を売っていた黒人エリック・ガーナー(43歳)が警官の職務質問に「放っておいてくれ」と言ったが言い争いとなり、白人警官ダニエル・パンテーロ(29歳)がニューヨークでは禁じられている後ろから羽交い絞めにし、殺してしまった事件。ガーナーは羽交い絞めにされているときに、「息ができない I can't breath」と何度も言っているが、警官はそれを無視して羽交い絞めを続け、結果殺してしまった。
【マイケル・ブラウン事件】
2014年8月9日、ミズーリ州ファーガソンで起こった無防備の黒人青年マイケル・ブラウン(18歳)が白人警官ダレン・ウィルソン(28歳)によって射殺された事件。
【ラクアン・マクドナルド Laquan McDonald 事件】
2014年10月20日、ラクアン・マクドナルド(17歳)がシカゴの警官ジェイソン・ヴァン・ダイクに射殺された。
【フレディー・グレイ Freddie Gray 事件】
2015年4月12日、フレディー・グレイ・ジュニア(25歳)がボルティモア警察に逮捕され、移送中のヴァンの中で意識不明となり、4月19日死去。車内での暴行が原因とみられる。これが発覚するとボルティモアで大きな抗議運動が起こり、プリンスもその名も「ボルティモア」という曲を発表、同地でのライヴを敢行した。
【アントワン・ローズ・ジュニア事件】
2018年6月19日、アントワン・ローズ(17歳)がピッツバーグ警察の警官マイケル・ロズフェルドによって銃により殺害。そのしばらく前に、車から無差別に発砲する事件があり、ローズが乗っていた車と似ていたことから停止命令をしたところ、ローズらがそこから逃げて発砲され死亡した。
【アーマッド・オーブリー Ahmaud Arbery 事件】
2020年2月23日、アーマッド・オーブリー(25歳)がジョージア州グリンカウンティ―のブランズウィックでジョギング中、車に乗った白人3人がオーブリーを射殺した。
【ブレオナ・テイラー Breonna Taylor 事件】
2020年3月13日、ケンタッキー州ルイヴィルで看護生ブレオナ・テイラー(26歳)のアパートの部屋に、別の容疑者の自宅捜査令状を持ち入室した際、同室にいたブレオナのボーイフレンドが彼らを強盗と思い発砲、警官と銃撃戦となり、ブレオナが死去した。
【ジョージ・フロイド事件】
2020年5月25日ミネソタ州ミネアポリスの路上で偽札を所持していた疑いで拘束されたジョージ・フロイド(46歳)が白人警官デレク・ショーヴィンに首を押さえつけられ。「息ができない」と訴え続けたもの押さえ続けられ、結果死去した事件。この一部始終が近くにいた人によって動画撮影され、まもなくSNSに拡散。一挙に抗議運動が巻き起こり、ミネアポリスでけでなく全米、全世界まで警察の暴力、人種差別問題、平等を訴える暴動と抗議活動に発展した。
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2014年12月12日(金)
スティーヴィー・ワンダー、警察官不起訴に曲内でコメント
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11962479104.html
第57回グラミー・モーメント~ファレルの主張とキング牧師への賛歌
2015年02月10日(火)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11987696106.html
グラミー余波~ハンズ・アップ・ドント・シュート~ファレルからビヨンセへ
2015年02月11日(水)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11988131340.html
ENT>MOVIE>Detroit
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