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〇反戦歌「花はどこへ行った」物語~ロシア・ウクライナをルーツに持つ歌が今ロシア・ウクライナ戦場に響く

〇反戦歌「花はどこへ行った」物語~ロシア・ウクライナをルーツに持つ歌が今ロシア・ウクライナ戦場に響く

【Story Of “Where Have All The Flowers Gone”: Saga Begins At Russian/Ukraine】

反戦歌。

(本作・本文は約5000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ10分から5分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと17分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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〇反戦歌「花はどこへ行った」物語~ロシア・ウクライナをルーツに持つ歌が今ロシア・ウクライナ戦場に響く

【Story Of “Where Have All The Flowers Gone”: Saga Begins At Russian/Ukraine】

反戦歌。

2022年2月24日、ロシア・ウクライナ戦争が始まった。以来、世界中のラジオでは反戦歌がかかっている。反戦歌は何百曲とあり、毎週火曜日夜生放送されている『AOR/ソウル・トゥ・ソウル』でも、映画『ひまわり』のテーマ、ティミー・トーマスの「ホワイ・キャント・ウィ・リヴ・トゥゲザー」、エドウィン・スターの「ストップ・ザ・ウォー・ナウ」などをかけてきた。次週(3月22日)も最後に、「花はどこへ行った」のアース・ウィンド&ファイアー・ヴァージョンをかける予定だ。

Earth, Wind & Fire - Where Have All the Flowers Gone (Audio)
https://www.youtube.com/watch?v=2lbP2uC6Lro

この「花はどこへ行った」の誕生の経緯が実に興味深いので、ここでご紹介したい。

〇 ピート・シーガーがわずか20分で書き上げた

この曲は元々1955年、シンガー・ソングライターのピート・シーガー(Pete Seeger、1919年5月3日-~2014年1月27日、94歳)が、ロシアの作家、ミハイル・ショーロホフ(Mikhail Aleksandrovich Sholokhov, 1905年5月24日~1984年2月21日、78歳)が1926年から1940年にかけて書き発表された大河小説『静かなドン』を読んだとき、その中に書かれていたロシアのコサックの子守歌「コローダ・ドゥダー」の歌詞に影響を受け、飛行機に乗っているときに自身でメモした3行ほどの歌詞をベースにわずか20分ほどで書きあげた。

このとき、ピート・シーガーは3番までを書いた。これをシーガーは1956年に発表、さらに1960年に出た『レインボウ・クエスト』というアルバムにもメドレーで収録。その後、これを聞いた音楽歴史家のジョー・ヒッカーソン(Joseph C. Hickerson, October 20, 1935~)が何か足りないと思い、4番と5番の歌詞を加え発表した。

そして、翌1961年、カレッジ・フォーク・グループ、キングストン・トリオが録音しヒット、さらに1962年、同じくフォーク・グループ、ピーター・ポール&マリーも録音、さらにヒットした。

歌詞の内容、構成はざっくり書くとこうだ。

「花はどこへ行った?」→「女の子が摘んだ」→「女の子はどこへ行った?」→「男に嫁いだ」→「男はどうした?」→「兵士になり戦場に行った」→「男はどうなった?」→「戦争に行きみな死んで墓に入った」→「墓はどうなった?」→「花に覆われた」→「花はどうなった?」→「女の子が摘んだ」

ということで1番に戻る。そして、「いつになったらわかるのだろうか、(戦争が続き)、その愚かさにいつになったら気づくのか」という繰り返しのメッセージが加わる。4番と5番が加えられたことによって、ストーリーの起承転結ができた形だ。

ピート・シーガ―は下記のドキュメンタリーでのインタヴューでこういう。

「こうやって多くの人が自分たちにできる何かを少しずつ加えて形になっていく。将来、こんなふうに世界ができていくと思う」

まさに、サンプリングなどを含む将来の音楽の出来方を予言するような言葉ではないか。

そして、「戦争は戦場だけでなく、多くの普通の家庭につながっているのです」という言葉が胸を打つ。

〇 ルーツはロシア

ショーロホフはこの小説を第一次世界大戦、ロシア革命などに翻弄された南ロシア、ウクライナにいたコサックたちの人生を描いた。

反戦歌と広く知られる「花はどこへ行った」のルーツをたどると南ロシア、そしてウクライナにたどり着くところが、今回のロシア・ウクライナ戦争下において、歴史の運命的な展開を感じざるを得ない。


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Where Have All The Flowers Gone
Written by Pete Seeger, Joe Hickerson

1)
Where have all the flowers gone, long time passing?
Where have all the flowers gone, long time ago?
Where have all the flowers gone?
Young girls have picked them everyone
Oh, when will they ever learn?
Oh, when will they ever learn?

2)
Where have all the young girls gone, long time passing?
Where have all the young girls gone, long time ago?
Where have all the young girls gone?
Gone for husbands everyone
Oh, when will they ever learn?
Oh, when will they ever learn?

3)
Where have all the husbands gone, long time passing?
Where have all the husbands gone, long time ago?
Where have all the husbands gone?
Gone for soldiers everyone
Oh, when will they ever learn?
Oh, when will they ever learn?

4)
Where have all the soldiers gone, long time passing?
Where have all the soldiers gone, long time ago?
Where have all the soldiers gone?
Gone to graveyards, everyone
Oh, when will they ever learn?
Oh, when will they ever learn?

5)
Where have all the graveyards gone, long time passing?
Where have all the graveyards gone, long time ago?
Where have all the graveyards gone?
Gone to flowers, everyone
Oh, when will they ever learn?
Oh, when will they ever learn?

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「花はどこへ行ったの?」

(大意)

あんなに咲き誇っていた花はどこに消えてしまったのか? 
消えてずいぶん経つのだろうか?
若い女の子が全部摘んでいってしまったんだ
ええっ、みんなはいつになったら学ぶんだろう?

あんなにいた若い女の子たちはどこに行ってしまった?
いなくなってからずいぶん経つのか?
みんな男に嫁いでいったんだよ
おおっ、みんな、いつになったらわかるんだろう?

大勢の夫たちはみんなどこへ行ったんだ?
いなくなってずいぶん経つのか?
みんな兵隊になってしまった
おおっ、みんないつになったら学ぶんだ?

あんなにいた兵士たちはどこへ行った?
いなくなってずいぶん経つのか?
みんな(死んで)墓に入ってしまった
おおっ、みんないつになったらわかるんだ?

みんなの墓が見えないがどうなったんだ?
見えなくなってずいぶん経つのか?
墓はみんな花に覆われてしまった
おおっ、みんないつになったらわかるんだ?

〈訳詞・ザ・ソウル・サーチャー〉

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〇 ドキュメンタリー番組

この「花はどこへ行った」にフォーカスしたドキュメンタリー『花はどこへ行った? 静かなる反戦の祈り』(約78分)が秀逸だった。これはNHK-BSで2000年10月に放送された。司会小林克也さんで、この曲を作ったピート・シーガー、ジョー・ヒッカーソン、曲のヒントになったロシアの作家、ショーロホフの娘さん、キングストン・トリオ、ピーター・ポール&マリーのマリー・トラヴァースらにもインタヴューしている。この曲がヴェトナム戦争の象徴的反戦歌となっていく様も描かれている。

また、この曲をドイツ語にして歌ったマリーナ・デイトリッヒが生涯この曲を歌い続け、当局から歌わないよう圧力をかけられたというあたりは、最近公開されたビリー・ホリデイの「ストレンジ・フルート」との物語と重なり、改めて音楽・曲が持つ力というものを感じた。

ドキュメンタリー『花はどこへ行った♫ 静かなる反戦の祈り』(約78分)
https://www.youtube.com/watch?v=1tk91SF2soo&list=WL


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ロシア・ウクライナ地方を舞台にした小説『静かなるドン』をヒントに書かれた「花はどこへ行った」という歌。その後、ヴェトナム戦争時代に反戦歌としての地位を決定づけ、今、ロシア・ウクライナの新たな戦争時に反戦歌として歌われる。ロシアでこの曲がかかることはないだろうが、ウクライナの土の上でこの曲はかかっているだろうか。

(反戦歌については、まだまだ続きます)

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Peter, Paul and Mary - Where Have All the Flowers Gone (25th Anniversary Concert)
https://www.youtube.com/watch?v=ZgXNVA9ngx8

そして、アース・ウィンド&ファイアーのライヴ・ヴァージョンを最後に。

Earth Wind & Fire - Where Have All The Flowers Gone ― Keep Your Head To The Sky (Medley) (1981) live (約1分52秒/約4分34秒)

https://www.youtube.com/watch?v=10JTNNvodu4

フィリップ・ベイリーが歌います。

同曲収録アルバム

Last Days & Time
アース・ウィンド&ファイアー
https://amzn.to/3CKTaq6

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