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〇ソウル・サーチン・ラウンジ54~江守藹のアラバマ物語 パート3

〇ソウル・サーチン・ラウンジ54~江守藹のアラバマ物語 パート3

(本作・本文は約4000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字換算すると、8分から4分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと13分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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〇 5か月ぶりソウル・サーチン・ラウンジ54~江守藹のアラバマ物語 (パート3)

Emori Ai’s Alabama Story (Part 3)

アラバマ物語。

毎月第3水曜日に新宿歌舞伎町の「カブキ・ラウンジ(54回)」が5か月ぶりに行われた。これは当初2020年4月に予定されていたものがコロナ禍で延期されたもの。トークゲストは、日本のソウル界、ダンス界、ブラックカルチャー界の伝説(レジェンド)江守藹(江守アイ)さん。

体温を測り、手をアルコールで消毒し、シールド型マスクを二人でつけて、扉を開けて換気し、ソーシャル・ディスタンスを十分取って、大声でしゃべらず、マイケル・ジャクソンのようなソフトスポークンで敢行したトーク・イヴェント。

そのパート3は、第二部から。第二部は、レイナード・スキナードの「スイート・ホーム・アラバマ」から。

Lynyrd Skynyrd - Sweet Home Alabama


https://www.youtube.com/watch?v=ye5BuYf8q4o

江守さんが「吉岡正晴の『ソウル・サーチン・ラウンジ』であえてレイナード・スキナードのこの曲をかけてみたかった」ということで、2部のトップに。


1. 映画『アラバマ物語』


そして、最初の話題は、今回のテーマになった「アラバマ物語」と同名の映画『アラバマ物語』について。

江守さん。「もちろん、この映画は知ってます。すごい昔の映画で、ヘヴィーな映画だったよね。この時代にこんな映画が作られたのはすごいよね」

『アラバマ物語』は、原題「To Kill A Mockinbird」、1962年に全米公開された映画。グレゴリー・ペック主演。1960年発表のハーパー・リーという作家が書いた「To Kill A Mockinbird」を映画化したもの。直訳だと「物まね鳥を殺すということは」。

舞台は1930年代、アラバマ州の田舎町で起きた白人女性へのレイプの容疑者として黒人青年が逮捕、起訴され、その弁護を弁護士のグレゴリー・ペックが引き受けるというもの。黒人差別が特に激しいアメリカ南部、アラバマ州で白人の弁護士が黒人の容疑者を弁護することで、ペックの元にも脅迫が迫る。裁判の陪審員は全員白人。果たしてペック演じる弁護士はその黒人青年を無罪にできるのか、というストーリー。

ブログ ラウンジ 江守3 アラバマ物語ポスター

「人種差別を扱った映画は、昔も、今もたくさんあります。かつての『評決のとき』とか、ジーン・ハックマンの『ミシシッピー・バーニング』とか。確かに差別はあったし、ひどい歴史はあるんだけど、そういうところを離れると南部の人たちって黒人も白人もみんな温かで同居してる。特にミュージシャンはそうで、さっきのレイナード・スキナードも、オールマン・ブラザース・バンドも、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルのリード・シンガー、ジョン・フォガティーも南部の香りぷんぷんしてる。そういう人たちは、(現地に)行くとわかるんだけど、(生活が)黒人と白人がうまく同居してるんだよね。

ブログ ラウンジ 江守3 jasper 入口

さっきのジャスパーという所は、村でね、今でもテンガロン・ハット被ってカウボーイ・ブーツのひとがうろうろ歩いている。そういう人たちがバーベキュー行くと、そこではカントリー・ミュージックが流れてる。だから、南部に行くと、音楽もカントリーやソウルが見事に同化してる。そういうところで聴いたカントリーは、いいなあ、なんて思う曲もでてくる」

吉岡。「それで思い出すのは映画『マッスル・ショールズ』です。あのアラバマ州マッスル・ショールズにあるスタジオで活躍するミュージシャンも実は白人・黒人混合なんですよね。で、彼らにとっては白人も黒人もまったく関係ない。実際、ここにレコーディングに来るアーティストが何人も白人だということを知って、びっくりするわけですが…。ああやって黒人・白人が何の偏見もなく一緒になって音楽を作っているというのは本当に素晴らしいですよね」

ブログ ラウンジ 江守3 映画マッスルショールズ

江守さん。「素晴らしいよね。デイヴィッド・シーのアルバムのエンジニアも最初2人白人なんですよ。で、1人があんまりいい仕事してくれなくて、結局、(メンフィスのハイから来た)ウィリアム・ブラウンに頼むことになるんだけど。ウィリアムは黒人で、(ハイ・レコードのプロデューサー、アル・グリーンの育ての親)ウィリー・ミッチェルの義理の弟。おそらくウィリーの妹のダンナかな。その実質クビにする白人の彼に『もう、その仕事しなくていい』って言ったあとも、別にウィリアムとも普通に仲良くしてた」

2. バーミングハム駅を境に分かれる北と南の地域

江守さん。「バーミングハムも黒人と白人の住む地区が別れている。アムトラックのバーミングハム駅というのがあって、駅を挟んで北が黒人、南が白人が住んでいた。大学があるのは南。白人が住むほうが若干、おしゃれな店があったりかな。北のほうがオールドダウンタウン、古くからある劇場や古い建物が残ってる」

ブログ ラウンジ 江守3駅

ブログ ラウンジ 江守3 バーミングハム地図

(バーミングハム地図)

「一方で、デイヴィッドたちが住んでるのは、もっと郊外のゲットーです。(アルバムに参加するミュージシャンの)ロバート・メイ・ブッチーの家がここ、キャモンのすぐ近くにある。朝迎えに行って、そこに着くとクラクションをプップーて鳴らすと、あちこちの家のカーテンが一斉に開くんです。彼らからは絶対車から降りるな、ドアロックははずすなって言われてる。(笑) それでしばらくすると、キャモンが出てくる。最初に行くときは僕ひとり。そういうエリアだと、カツアゲとかスティックアップみたいのがないとは言えない。でも、そういうところは黒人も白人も関係ない。貧乏ということだから。ただ、イメージしてたゲットーとぜんぜん違うんだよね。ぜんぜん人がいない、歩いてないの。人の気配がない。子供もストリートで遊んでるって感じがない。そんなところに二人を迎えに毎日一人で行ってました。勇気あるでしょう? (笑)」

吉岡。「よくアメリカだと、車が信号で止まると、どこからともなく若いおにいちゃんが出てきて、モップで車のウィンドーを水で洗って、チップをもらうというのに出会いますが、アラバマでもやはりそうなんですか?」

「いやあ、アラバマではあんまりなかったなあ。あれは、都会だからこそなんじゃないかな」

「スーパーマーケットも、白人地区のと黒人地区ので別れてるんですか?」

「いや、スーパーは大きいのが24時間でやってて、フード系のマーケットは24時間営業。レコーディング終わって、明日の朝飯買って帰ったりした」

ブログ ラウンジ 江守3 バーミングハム スーパーのような

(スーパー=イメージ)

3. 歴史的メモリアル

バーミングハム・アラバマの数少ない観光スポットについて、少し説明していただいた。

警官がデモ隊にすごい水圧の放水と、警察犬を放ったケリー・イングラム公園は公民権博物館の真ん前。


ブログ ラウンジ 江守3 ケリー・イングラム公園、犬警官の彫像

ブログ ラウンジ 江守3 ケリー・イングラム公園2

(ケリー・イングラム公園。放たれた警察犬の彫像)

ブログ ラウンジ 江守3 ケリー・イングラム公園、MLK 彫像

(ケリー・イングラム公園のマーティン・ルーサー・キング牧師の彫像)

江守さん。「観光地といっても、それほど多くはないんだけど、それに観光客も多くないけど、そういうところに僕みたいな日本人が行くと、とても珍しがってけっこう親切にいろいろ教えてくれたりする。自分たちの文化の歴史を見に来た、という接し方をしてくれる。(そこは)ブラックの人たちにとって歴史的な公園で、その隣にある博物館だからここは完全に歴史地区だから、そこに来る人を大切にしないといけないんじゃないかな。そこからちょっと離れたところにあるのがエディー・ケンドリクッス・メモリアル・パーク。ここはエディーがなくなった1年後にできたもの」


ブログ ラウンジ 江守3 エディー・ケンドリック・メモリアル テンプス彫像1

(エディー・ケンドリック(ス)・メモリアル、テンプスの彫像、前にでてるセンターがエディー・ケンドリックス)

吉岡。「しかし、公園ができてしまうなんて、やはり、エディーはバーミングハムの名士なんですね。エディー・ケンドリックス・ストリートとか、エディー・ケンドリックス・アヴェニューみたいのはないんですか?」

「それはないなあ。パークのほうが大きいんじゃないかな。メンフィスにはルーファス・トーマス・ブルヴァ―ドがあるけど。あとアメリカ中にあるのが、マーティン・ルーサー・キング・ブルヴァ―ドだけど」

ブログ ラウンジ 江守3 ルーファストーマスxビールストリート

「アラバマ州でテンプテーションズ関係でストリートがあるところはありますか? エディー・ケンドリックス・ストリートとかデイヴィッド・ラッフィン・ストリートみたいなの」

「ストリートとかだとないかな。ただエディー・ケンドリックス・メモリアル・パークには(テンプスの)5人の彫像があるんですよ。で、センターで歌っているのが、エディー・ケンドリックス。この5人というのは、デイヴィッド・ラッフィン、メルヴィン・フランクリン、オーティス・ウィリアムス、ポール・ウィリアムス、そして、エディー」

「これはパークの中にあるので、誰でもそこに行ったら、エディーたちと一緒に写真撮れるよ。あと、近くにエディーのお墓もあって、お墓参りも行きます。あ、そういえば、メンフィスにはルーファス・トーマス・メモリアルみたいなのができた。メンフィスは、バーミングハムとは違って観光資源がたくさんある。エルヴィスの家のグレイスランド、ビール・ストリート、スタックス博物館、ピラミッドっていう大きな体育館があったりとか。ピーボディー・ホテルという由緒あるホテルや、マーティン・ルーサー・キングが暗殺されたローレイン・モーテルとか。今も現存しているロイヤル・スタジオも。ロイヤルのまわりもけっこうゲットーなんだよ。やはり、ロイヤルに行くときには、ちょっと緊張するかな(笑)」

ブログ ラウンジ 江守3 エディー墓石

(エディーの墓石)

ブログ ラウンジ 江守3 メンフィス ロイヤルスタジオ外観

(メンフィス・ロイヤル・スタジオ外観)

(この項、続く)

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Setlist : Soul Searchin Lounge #54

1st set
Show started 19:30
TM What’s Going On – David T. Walker
M01 Searchin For Love – David Sea
M02 If Loving You Is Wrong – David Sea
M03 Distant Lover
Ended 20:42

2nd Set
Started 20:58
M01 Sweet Home Alabama – Lynyrd Skynyrd
M02 I Stand – David Sea
Show ended 22:20


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