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● ロイC、81歳で死去~ドゥワップからサザン・ソウル・シンガーへ、そしてサンプリングされる作品まで

【Roy C Dies At 81】

訃報。

1960年代から活躍してきたソウル、R&Bシンガー・ソングライター、ロイCが2020年9月16日、現在居住しているサウス・キャロライナ州で死去した。81歳だった。

(本作・本文は約5000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字換算すると、10分から5分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと17分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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訃報 

ロイC Roy C Hammond 2020年9月16日現在居住しているサウス・キャロライナ州アレンデールの自宅で死去。81歳。死因は明らかにされていない。

https://bit.ly/35MX8zX 

ロイCは日本では1973年に全米リリースされたアルバム『セックス・アンド・ソウル』がソウル・ファンの間で話題になり、注目されるようになった。特にミニコミ「ソウルオン」誌の編集長でありソウル・ミュージックの音楽評論家、桜井ユタカ氏が大推薦し、日本盤も発売されたことから一挙に知名度が広まった。

評伝。

ロイCとして知られるロイCハモンド Roy Charles Hammond は1939年8月3日ジョージア州ニューイントン生まれ。17歳のとき、1956年頃、ニューヨーク州のロング・アイランドに引っ越す。1956年、ロイ・ハモンドが友人らとドゥーワップ・グループ、ザ・ジニーズを結成。1958年、インディ・レコード会社から「フーズ・ザット・ノッキン」をリリース。これは、ビルボード・ホット100で72位を記録した。

THE GENIES - "WHO'S THAT KNOCKING?" (1958)


https://www.youtube.com/watch?v=-iNJqwNwFgA

The original members: Roy Hammond, Bill Gains, Alexander Faison, and Fred Jones formed in 1956

ジニーズは1-2年で解散。その後、クロード・ジョンソンとともに「ドン&ファン」(Don & Juan)を結成。アトランティックと契約をするが、レコードが出るまでにはいかなかった。その後、ロイ・ハモンドは徴兵でエア・フォースに参加。

1965年、兵役から戻り、ニューヨークに居を移し、再び音楽活動を開始。

このころ、自作曲「ショットガン・ウェディング」を自身のレーベル、ハモンドからロイ・ハモンド名義でリリース。その後、少し規模の大きいインディからロイC名義で再発したところ、ビルボードのR&Bチャートで14位を記録する大ヒットとなった。ちなみに、「ショットガン・ウェディング」というのは、「できちゃった婚」のこと。

Roy C -Shotgun Wedding


https://www.youtube.com/watch?v=-3J8tKLIToE

またこの曲はイギリスでもヒット。さらに、1966年、アルバム『ザット・ショットガン・ウェディング・マン』がリリースされた。

ロイCは自身が歌うだけでなく、若手アーティストの育成などにも積極的で、1972年、時の大統領ニクソンのウォーターゲート・スキャンダルについて歌った「インピーチ・ザ・プレジデント」(大統領を弾劾せよ)をクイーンズの高校生グループ、ハニードリッパーズに歌わせヒット。(ロバート・プラントのグループとは同名ながら、別グループ) これが後に多数サンプリングされた。

Honey Drippers – Impeach The President


https://www.youtube.com/watch?v=jpFZQtBJkMI

この曲のサンプリング問題がその後1985年に起こるが、それは後述する。

その後、自身はシャウト・レコーズと契約、さらに自身のインディ・レーベル、アラガを起こし、自身の作品を出した。

Roy C – Got To Get Enough Of Your Sweet Love


https://www.youtube.com/watch?v=FeCc_EMaeCY

また、アラガでは、若手アーティストを送りだした。そんな中から出てきたのが、マーク・フォーというR&Bヴォーカル・グループ。

Mark IV - Honey I Still Love You


https://www.youtube.com/watch?v=yMgjirJz18A

一方1973年、自らシンガーとしてメジャーのマーキュリーと契約、同社から出したアルバム『セックス&ソウル』が話題となり、これは特に日本のソウル・ファンの間で人気となった。続編『モア・セックス&ソウル』も出た。

このアルバムは、当時の無名のソウル・シンがガーのソウル・アルバムが日本で発売されたのは、ソウル・ミュージックのミニコミ誌「ソウル・オン」の桜井ユタカさんが大推薦したため。オーティス・レディング、サム・クック、ウィルソン・ピケットなどのサザン・ソウル系でヒット曲が多数あるシンガーではなく、シングルヒット1曲のみのシンガーの作品が日本でリリースされたのは珍しかった。

ブログ 訃報 ロイC 1 セックスジャケ写

マーキュリーで3枚アルバムを出した後は再び、自身のインディに戻り、細々と音楽活動を続けていた。

1990年代以降、ヒップ・ホップ・アーティストたちに再発見され、サンプリングされ作品が知られるようになった。彼の作品は、なんと600以上のヒップ・ホップ関連曲に使われているという。

メアリー・J・ブライジの「リアル・ラヴ」、カニエ・ウェストとジェイ・Zの「オーティス」、フランク・オーシャンの「スーパー・リッチ・キッズ」などに使われた。

30年ほど前に、サウス・キャロライナ州アレンデールに引っ越し、ここを本拠にレコード・ディストリビューターなどをしながら、ときどきライヴ活動を行っていた。

ブログ 訃報 ロイC アー写 モノクロ


https://bit.ly/3hCCVze 

その近況をデジことデクスター・トーマスが取材、ニュース映像として公開していた→https://amba.to/3kt475h 動画(約7分35秒)聴き手デクスター・トーマス→


https://www.youtube.com/watch?v=5ah8JNCBQ28&feature=emb_logo

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■「インピーチ・ザ・プレジデント(大統領を弾劾せよ)」のサンプリング問題

ロイCがプロデュースし高校生に録音させた「インピーチ・ザ・プレジデント」は大ヒットというわけではなかったが、そこそこ話題になり、7インチ・シングルも売れた。そして、このビートに着目したのが、ヒップ・ホップ・アーティスト/プロデューサーのマリー・マルだった・マルはこのイントロ部分のドラム・リフを使い、MCシャンの「ザ・ブリッジ」という曲をプロデュース。そして、このオープニングのドラム・リフは、ヒップ・ホップ界でいきなり有名になったのだ。

ところが、1985年は、まだサンプリングの概念もはっきりせず、ビジネス的にもきちんとしたひな形もなく、この元を作ったロイC本人も、自分の作品が使われていることなど長く知る由もなかった。

そこでこの「インピーチ・ザ・プレジデント」のリフの可能性にビジネス・チャンスを見たインディ・レーベル、タフ・シティー・レコーズのアーロン・フーカスが1992年、同曲の原盤権をロイCから買い上げた。

ブログ 訃報 ロイC アーロン・フーカス

(アーロン・フーカス)

フーカスはこの権利を元に、当時リリースされたばかりの同曲を使った3曲に関して、発売元に対し訴訟を起こしたのだ。それらは「アラウンド・ザ・ウェイ・ガール」と「6ミニッツ・オブ・プレジャー」(いずれもLLクールJ)、「ギヴ・ザ・ピープル」(EPMD)だ。EPMDのものはドラム・サンプルではなく、ヴォーカル部分をサンプリングしていた。この時期までに、ロニー・ジョーダンも最初の2枚のアルバムでサンプリングしていたがこれは若いが成立していた。

だが、一連のこれらの動きについてはロイC本人は何も知らされていなかった。つまり、権利を獲得したフーカスがもうけを独り占めしていたわけだ。ロイC本人は、ジャネット・ジャクソンの「ザッツ・ザ・ウェイ・ラヴ・ゴーズ」とシャギーの「ラヴ・ミー・ラヴ・ミー」で使われたときに気づいたという。ジョージ・ベンソンも1996年のアルバム『ザッツ・ライト』内「ザ・シンカー」で使用していた。

2013年のインタヴュー時点で、ロイC本人はそれらのサンプリングから一切ロイヤリティー(印税)を受け取っていなかったので、印税が取れるように動いていたという。

ロイCは、フーカスがBMI(音楽出版社)のロイCのカタログの一部を契約不備を理由にリストから外していたことにも怒り、裁判を起こしていた。ロイCのホームページでは、フーカスからなんらかの印税支払いなどを求められているものは、直接自分に連絡をするように明記している。

ただ、こうした状況を知ってか、メアリー・J・ブライジなどは、「リアル・ラヴ」の作者にロイ・Cの名前をいれているという。また、2011年のカニエ・ウェストとジェイZの「オーティス」にも名前が入っている。

その後、1997年、ウータン・クランの「アズ・ハイ・アズ・ウー・タン・ゲット」でも使われた。


Impeach the President


https://www.youtube.com/watch?v=jpFZQtBJkMI


MC Shan - The Bridge


https://www.youtube.com/watch?v=dS4RpBR0Zn0

Wu-Tang Clan - As High As Wu-Tang Get (HD)


https://www.youtube.com/watch?v=Oxh7xOXt_wU

LL Cool J - Around the Way Girl


https://www.youtube.com/watch?v=Fwgt9Dxyyv0

Janet Jackson - That's The Way Love Goes (Official Music Video)


https://www.youtube.com/watch?v=2b_KfAGiglc

George Benson - The Thinker (1996)


https://www.youtube.com/watch?v=2POvepw8kmM

ロイC本人がまったく知らないところで、そのドラム・リフが使われていたというのが、とても、今どきのサンプリング時代を象徴するような出来事だ。

ENT>MUSIC>OBITUARY>Hammond, Roy C. (August 3, 1939 – September 16, 2020, 81 year old)

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