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〇追悼・バート・バカラック~過去3回のライヴ評~震える声の「アルフィー」、「バカラックはファンクも大好き?」、スタンディング・オヴェーションのライヴ


 
〇追悼・バート・バカラック~過去3回のライヴ評
 
【Farewell Mr. Burt Bacharach : Last 3 Live Reports】
 
(本作・本文は約18000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ36分から18分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと60分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)
 
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〇追悼・バート・バカラック
 
【Farewell Mr. Burt Bacharach】
 
訃報。
 
アメリカの偉大な作曲家、バート・バカラックが2023年2月8日ロスアンジェルスの自宅で死去した。老衰による自然死。94歳。
 
バート・バカラックは、1971年5月の初来日以来、2014年4月まで6回来日した。2020年4月に横浜ビルボードライブのこけら落としの公演が発表されていたが、コロナ禍のため中止となった。
 
3回目の来日=1997年11月国際フォーラムほか、4回目2008年2月国際フォーラムほか、5回目2012年9月東京ジャズ、6回目2014年4月NHKホールほかの公演があった。
 
中でも、2012年の東京ジャズでの来日時は、トニー・メイデン&ルーファスとスガシカオさんのコラボをお手伝いしていたこともあり、かなり密着取材ができ、バカラック本人にも会うことができた。
 
ブログで記録が残るバカラック関連の記事をまとめて再掲する。完全セットリスト付き。
 
震える声の「アルフィー」、「バカラックはファンクも大好き?」、スタンディング・オヴェーションのライヴなどなど、読み応えたっぷりです。文字を追いながら、バカラック関連曲をかけながら、バカラックに思いを馳せてください。
 
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①2008.2.17付け
 

 
●Burt Bacharach Live At Kokusai Forum A
 
(セットリストはネタばれになります。これからごらんになる方はあなたのリスクにおいてお読みください。本編は特にネタばれにはなりません。ただしセットリストをごらんになってから、ライヴに行くかどうかを判断される方はどうぞご覧ください)
 
【バート・バカラック・コンサート】
 
巨匠。
 
まさにアメリカ音楽業界最大の巨匠と言ってもいい大御所の作曲家、バート・バカラック。1960年代から数多くのヒットを生み出してきたアメリカを代表する作曲家も、今年80歳。しかしそんな年齢などみじんも感じさせず、ピアノを弾き、指揮をし、ときどき調子はずれのしかし味のある歌声を聴かせ、観衆を魅了した。11年ぶり4度目の来日ライヴ。
 
こういう大御所のコンサートだと、個々のミュージシャンやシンガーがどうのこうの、演奏がどうということなどまったく関係なく、バカラックがステージ中央にいて、それをサポートするミュージシャンがいてちゃんと演奏してくれれば、それでOKという感じになる。
 
50人弱のフルオーケストラに、コーラス3人が中心に歌って次々とヒット曲がメドレー形式で流れる。1分程度のものもあればフルサイズ聴かせるものもあるが、すべてがバカラックの曲という点だけでも、歴史の重みが感じられる。サウンド的にはイージー・リスニング、かつて、共同東京が企画してやっていた「ラヴ・サウンズ」シリーズの頃のコンサートを思い浮かべた。
 
選曲、そして、その並びも実によく考えられていて、バカラック集大成の趣だ。気のせいだろうか、映画音楽メドレーのところで観客席から鼻をすする音が聴こえた。昔その映画を見た頃のことを思い出して、涙していたのかもしれない。これだけ曲があれば、ちょっとした洋楽ファンだったら、ほとんどの曲をよく知っているだろう。
 
(ライヴは、今日日曜国際フォーラムで午後3時から。また水曜=20日=に相模大野でもあります)
(また、本日4時半からのインターFM『山野ミュージック・ジャム』でバカラックミニ特集お送りします)
 
2008年2月17日(日)国際フォーラム 午後3時開演
2008年2月20日(水)グリーンホール相模大野
2008年2月22日(金)大阪フェスティヴァル・ホール
総合問い合わせ 03-5434-9111
いずれも当日券あります。
 
Setlist : An Evening With Burt Bacharach, Tokyo Kokusai Forum A
セットリスト バート・バカラック
(主催者発表によるものに加筆訂正した)
 
Musicians stand by : 18:03
Show started 18:08
01. 世界は愛を求めている What The World Needs Is Love (ジャッキー・デシャノン1965)
 
メドレー1 (1963年~1968年ごろの楽曲メドレー)
 
02. ドント・メイク・ミー・オーヴァー Don’t Make Me Over (ディオンヌ・ワーウィック 1964)
03. ウォーク・オン・バイWalk On By (ディオンヌ・ワーウィック 1964)
04. ディス・ガイThis Guy’s In Love With You (ハーブ・アルパート 1968)
05. 小さな願いI Say A Little Prayer (ディオンヌ・ワーウィック 1967)
06. 汽車と船と飛行機Trains & Boats & Planes (ディオンヌ・ワーウィック 1967)
07. ウィッシン・アンド・ホッピンWishin’ & Hopin’ (ダスティ・スプリングフィールド 1964)
08. 恋のウエイト・リフティング(There’s) Always Something There To Remind Me(サンディ・ショウ 1965)
 
メドレー2 (1962年~1970年ころの楽曲メドレー)
 
09. 悲しみは鐘の音とともにOne Less Bell To Answer (フィフス・ディメンション 1970)
10. 恋よ、さようならI’ll Never Fall In Love Again (ディオンヌ・ワーウィック 1969)
11. 恋の痛手Only Love Can Break A Heart (ジーン・ピットニー 1962)
12. サン・ホセの道Do You Know The Way To San Jose (ディオンヌ・ワーウィック 1968)
 
13. 恋するハートAnyone Who Had A Heart (ディオンヌ・ワーウィック 1964)
14. ハート・ライトHeart Light (ニール・ダイアモンド 1982)
15. ゴッド・ギヴ・ミー・ストレンスGod Give Me Strength (バート・バカラック&エルヴィス・コステロ 1996)
 
ビギニング・メドレー (作家デビュー当時の初期楽曲メドレー)
 
16. マジック・モーメントMagic Moments (ペリー・コモ 1958)
17. ストーリー・オブ・マイ・ライフStory Of My Life (マーティ・ロビンス 1957)
18. ザ・ブロップThe Blob (ファイヴ・ブロッブス1958 =映画『マックィーンの絶対危機』より)
19. タワー・オブ・ストレングスTower Of Strength (ジーン・マクダニエルス 1961)
 
20. ゴー・アスク・シェイクスピアGo Ask Shakespear (最新作『アット・ディス・タイム』2005)
21. イン・アワ・タイムIn Our Time (最新作『アット・ディス・タイム』2005)
22. 遥かなる影(They Long To Be) Close To You (カーペンターズ 1970)
23. フォー・ザ・チルドレンFor The Children (新曲 2008)
 
24. フォーリング・アウト・オブ・ラヴFalling Out Of Love (アレサ・フランクリン 2003)(トレインチャ・スペシャル・ゲスト歌手)
25. フール・スピーク・フォー・ラヴWho’ll Speak For Love (トレインチャ・最新作『バカラック・ソングブック2』)(トレインチャ・スペシャル・ゲスト歌手)
 
映画音楽メドレー 
 
26. 恋の面影The Look Of Love (ダスティ・スプリングフィールド 1967 映画『007 カジノ・ロワイヤル』)
27. ニューヨーク・シティ・セレネーデArthur’s Theme (クリストファー・クロス 1981 映画『ミスター・アーサー』)
28. 何かいいことないか子猫ちゃんWhat’s New Pussy Cat (トム・ジョーンズ 1965 映画『何かいいことないか子猫ちゃん』)
29. 地球は丸いThe World Is A Circle (1973 映画『失われた地平線』)
30. エイプリル・フールApril Fools (ディオンヌ・ワーウィック 1969 映画『幸せはパリで』)
31. 雨にぬれてもRaindrops Keep Fallin’ On My Head (BJトーマス 1969 映画『明日に向かって撃て』)
32. リバティ・バランスを討った男The Man Who Shot Liberty Valance (ジーン・ピットニー 1962 映画『リバティ・バランスを討った男』)
33. メイキング・ラヴMaking Love (ロバータ・フラック 1982 映画『メイキング・ラヴ』)
34. 素晴らしき恋人たちWives & Lovers (ジャック・ジョーンズ 1961 映画『素晴らしき恋人たち』用、しかし、不採用)
35. アルフィーAlfie (シラ・ブラック 1966 映画『アルフィー』、ヴァネッサ・ウィリアムス 1996 TBSテレビドラマ『変奏曲』)
36. ハウス・イズ・ノット・ア・ホームA House Is Not A Home (ブルック・ベントン 1964 映画『禁じられた家』)
 
37. 愛のハーモニーThat’s What Friends Are For (ディオンヌ・ワーウィック、エルトン・ジョン、スティーヴィー・ワンダー、グラディス・ナイト 1986)
 
Encore :エニィ・デイ・ナウ Any Day Now (チャック・ジャクソン 1962)
Encore : 世界は愛を求めているWhat The World Needs Now Is Love (ジャッキー・デシャノン 1965)
Encore : 雨にぬれてもRaindrops Keep Fallin’ On My Head (BJトーマス 1969 映画『明日に向かって撃て』)
 
Show ended 20:05
 
(2008年2月16日土曜、東京国際フォーラムA=バート・バカラック・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Bacharach, Burt
2008.-21
 
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②2012.09.11
 
東京ジャズTokyo Jazz (Part 2) ~ルーファスとスガシカオとバカラックとの邂逅
2012年09月11日(火)

 
◎東京ジャズTokyo Jazz (Part 2) ~ルーファスとスガシカオとバカラックとの邂逅
 
【Rufus, Suga Shikao & Tower Of Power: Meeting With Mr. Legend】
 
コラボ。
 
毎年夏の終わりの風物詩になりつつある東京ジャズが終わった。怒涛の3日間だった。まず、ルーファス&スガシカオ周辺について書こう。
 
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金曜夕方。
 
金曜日(2012年9月7日)、ルーファスのリハーサルがあるというので、呼ばれて見に行った。今回はこのルーファスに日本からスガシカオさんがコラボ参加したが、そのきっかけを作ってしまったのが「ソウル・サーチン~スライ・ストーン」のイヴェントだったこともあり、とても他人事とは思えないので、こまめに現場に出向いた。
 
ご存知のように今年3月、「ソウル・サーチン第11回~トリビュート・トゥ・スライ・ストーン」のイヴェントを目黒のブルースアレイで行なった。このときに、スライ・ストーン大好きと広言していたスガシカオさんをお誘いした。嬉しいことにスガさんは見に来てくれ、さらに飛び入りでトークに参加してくれたが、そのとき楽屋で僕の友人の松浦さんを紹介した。松浦さんは以前からの知り合いで、最近はルーファスのトニー・メイデンらの日本側エージェント的な仕事をしている。そこで、そのときにトニー・メイデン&ルーファスと一緒にやることに興味があるかといった話がでたようだ。それがとんとん拍子に話が進み、東京ジャズでルーファスとスガシカオのコラボが実現したというわけだ。
 
そのときの様子↓
 
「ソウル・サーチン:ザ・セッション~スライ・ストーン・トリビュート」レポート(パート1)
2012年03月31日(土)

 
ルーファスの最新作「ライヴ・イン・トウキョウ」はすでに日曜日(9月9日)、「ソウル・ブレンズ」内「ソウル・サーチン」のコーナーでワールド・プレミアしたのはご存知の通り。
 
そして金曜夕方、ルーファスの面々とスガシカオさんもいろいろ大変ではあったが、きっちり音あわせをした。
 
その後楽屋のロビーエリアを通るとあの「ミスター伝説」バート・バカラックがリハ前にジャージとTシャツでいた。ちょっとした間隙を縫って声をかけ、ツーショットの写真を撮らせてもらった。いやあ、これは感激した。ミスター・バカラックに「ハル・デイヴィッドのことは大変ご愁傷さまです」というと、「9月21日にロスで追悼式があるよ」とおっしゃった。とても気さくな人だった。僕としては、この日一番のハイライトとなった。(その後、バカラックはホールAでリハーサルへ。そのあたりの話は別項でご紹介します)
 
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土曜日夕方。
 
午後、本ステージではテイク6、ベンEひとキング、バート・バカラック。(ライヴ評は後日) バカラックを見終えた後、6時くらいから別のリハーサル・スタジオでルーファス&スガ&タワー・オブ・パワーの二度目のリハーサルが行なわれた。
 
このときはスガさんの3曲「黄金の月」「正義の味方」「91時91分」をやるのだが、タワーのメンバーとは初顔合わせとなった。
 
これら3曲は事前にスガさんが先方(ルーファスとタワー)に数曲送って、そこから選ばれたもの。基本的なアレンジはルーファスがして、ブラス・セクションのアレンジはタワーが行い、そのあわせを土曜日夕方にやったというわけだ。
 
ルーファスのドラマー、ドネルはとにかくどんどん突っ走る。「黄金の月」はスガさんによれば「もっと抑制した感じでやりたいんだけど、(ドネルやトニーが)とにかくがんがんノリノリになっちゃう」と笑う。ここで聴いた限り、かなりファンキーでいけいけなのりの曲になっていた。
 
大音量の中続くリハーサルを聴いていると、ルーファス、タワーのバンド・サウンドに日本のスガシカオが入っているのが、おもしろく感じられてくる。彼も言っているが、土台がルーファスの真っ黒さ、上物(うわもの)がタワーの白っぽさ(黒人音楽をベースにしつつも、白っぽさが出るという意味)、そして、どちらでもないスガシカオのギターとヴォーカル。
 
特に英語タイトル「Super Hero(正義の味方)」と「9191(91時91分)」は、ジェームス・ブラウン・ファンクをベースにしたもので、ルーファスやタワーお手の物という感じがして、ものすごくスガ・コラボがあっていた。
 
タワー・オブ・パワーは、本ソウル・サーチンのライヴ評でも何度も書いているが、そのルーツにジェームス・ブラウンがどっしりといる。そのブラウン・ファンクとその他のブラック・ミュージック、R&Bのファンクをベースに、サンフランシスコで独自のタワー・オブ・パワー・ファンクを40年以上前から作っている。
 
スガさんのこれら2曲がジェームス・ブラウンをベースにしたようなファンクになり、バンドはどんどんと熱くなっていった。
 
そんな中、リハーサル・ルームの扉が開き、驚くべき人物が中に入ってきた。
 
なんとあのミスター・バート・バカラックだ。息子のオリヴァーを伴い、ジャージとTシャツなラフな姿で登場した。本番ステージを終えて着替えてからやってきたのだ。ちなみに本番はジーンズにジャケット、中はTシャツだった。
 
それを見て、僕はミスター・バカラックに椅子を提供し、「どうぞ、お座りください」と言うと、右手を振りいらないというしぐさを見せ、立ったままでバンドの演奏を見ていた。どうやら、このルーファス・バンドに興味を持ったらしい。まだ、メンバーやスガさんたちは、バカラックが来たことに気づいていない。
 
僕はちょうどバカラックの本番を見て感激していたので、「素晴らしいステージでした。特に『アルフィー』をあなたが歌ったところには感激しました」というと、「おお、そうか、サンキュー」と一言。あまり多くを語らない人だ。
 
バンドはさらに別の曲のリハーサルに入る。バカラックはずっと立ったままで見ている。途中でちょっとミネラル・ウォーターを後ろに取りに行ったが、またステージを見ている。
 
僕はバカラックとこうしたファンキーなバンドという組み合わせが頭の中でどうしても整合性がとれず、しばらくしてから思わず尋ねてしまった。
 
「あなたはこういう音楽がお好きなのですか? Do you love this kind of music?」 Like ではなく、Loveで様子をうかがった。するとニコニコしながら、好きか嫌いかではなく、「I appreciate it(鑑賞するよ、聴くよ、評価し、理解するよ)」とずばり一言が返ってきた。もうこれ以上の完璧な答えはありませんね。(笑) 
 
そして、ちょうど「スーパー・ヒーロー(正義の味方)」のところだったので、「この曲は真ん中の日本人シンガー、スガシカオが書いた曲なんです」と伝えた。
 
一曲終わると、みんながバカラック御大の登場に気づき、一斉に近くによってくる。それぞれが話しかけ、共通の友人の話をしたり、写真を撮ったり。ミスターBはひじょうに気さくで、誰とでも写真をOKする。とてもごきげんでこの空間を楽しんでいるようだ。
 
トニー(・メイデン)かミッシェル(トニーの奥さん、マネージャー)との会話だったが、「本番はいつだ?」とミスターBが尋ねる。「明日日曜アフタヌーン(午後)です。たしか3番目、3時ごろです」と答える。「じゃあ、見に行くよ」 一同「本当ですか」という感じで、半ば半信半疑で驚いた。社交辞令じゃないかと思った人もいた。
 
どうしても、僕の中ではさっきまでホールAで静かに聞き入っていた「アルフィー」や「ア・ハウス・イズ・ノット・ホーム」などと、ルーファスの「エイン・ノーバディー」がひとつにならない。
 
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土曜深夜。
 
土曜日、ホールAでのジョー・サンプル、小曽根真らの本番が終わってから、ルーファス、タワー、スガシカオがホールでの最終リハーサルを行なった。
 
しかし、エンジニアが配線を変える、元に戻すなど、ドタバタが続き、結局リハーサル音だしが終わったのは午前2時前のこと。長い一日だ。そして翌日(いや、当日・今日)は12時集合。
 
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日曜午後。
 
バルカン・ビートボックス、タワー・オブ・パワーに続いて、15時30分、ルーファスがホールAに登場。一音でた瞬間から客席、半分以上が立ち上がる。ルーファスのヒットを4曲やって、トニーが「スガー!」「スガー!」とスガシカオを呼び込む。スガシカオのファンが一斉に歓声をあげる。
 
まず、「黄金の月」が始まった。リハとは違って、スガさんのリクエストがうまく通じたのか、前日とは打って変わって抑制した「黄金の月」になっていた。これが終わり、次の曲のイントロでスガシカオはマイクを持って叫んだ。
 
「今日はファンク・マスターたちが集まっています。僕は18からファンクを聴いてきました。今日そのファンク・レジェンドと一緒にやれることは、日本のファンクの歴史の一ページになるでしょう。みなさんはその生き証人です」といって2曲目「スーパー・ヒーロー(正義の味方)」を始めた。タワーのホーン・セクションは、まさにJBズさながらだ。
 
続くジェームス・ブラウンの「コールド・スウェット」「マザー・ポップコーン」あたりを思わせる「9191(91時91分)」も、ルーファスのど黒いファンク・ベース(土台)にタワーのファンク・ホーンが気持ちよく乗る。これらを聞いて、ルーファスも、タワーも、そして、スガシカオもまさに生粋の「ジェームス・ブラウン・チルドレン」だな、と思った。
 
そして、タワーのリード・ヴォーカル、ラリーが次のヒット曲「ドゥ・ユー・ラヴ・ホワット・ユー・フィール」を歌い、全員でアンコールへ。途中のトニーとスガのギター・バトルもかなりかっこよかった。
 
果たしてミスターBは、客席で彼らのステージを楽しんでいた。どうやら息子と二人だけでホテルからこの会場に足を運んだようだ。本当に来たんだ。
 
それにしても、ルーファス、タワー・オブ・パワーの組み合わせもすごいが、そこに日本のスガシカオが一匹侍として乱入している姿もすごい。いわば、ファンクという完璧に相手の土俵、アウェイに道場破りに向かっているわけだ。こういうことが可能な東京ジャズというイヴェントは実にエキサイティングでおもしろい。
 
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日曜夕方。
 
ライヴが終わると、出演者たちはステージ袖で当日生放送されていたNHK-FM用のインタヴューとその後テレビ放映用のインタヴューを受ける。ラジオはそのまま生放送されたのでお聴きになられた方もいるだろう。テレビ用のものは後日NHK-BSで放送されるときに紹介される。
 
そのインタヴューが終わりしばらくすると、なんとミスター・バカラックが楽屋裏に登場した。ジャージとTシャツだ。どうやらなんとミスターBがスガさんに会いたがってるらしい。スタッフがスガさんを探しに行くと、ちょうどスガさん登場。
 
「セカンド・ソング(2番目の曲)がよかった」とミスター・バカラックがスガさんに言う。2番目というと「スーパー・ヒーロー」か。スガさんはそれを聞いた瞬間「あれって3コードのシンプルな曲であんまりメロディーとかもないんだけどなあ」と思ったらしいが、すぐ丁寧に「ありがとうございます」と言い、さらに質問をした。
 
「どのようにしたら、あんなに世界中の人を感動させられるいい曲が書けるのですか?」 通訳の人が訳すと一言返ってきた。「You’re doing it(もう君はできてるよ)」 でたああ! ミスター・バカラックからの強烈な一言コメント。バカラックからのお墨付き! これはすごいなあ。
 
スガさんが大興奮になったことはもちろん、周囲でそれを聞いていた日本側スタッフも一斉に「おおおっ」と歓声をあげた。
 
その後、ルーファス・メンバーの楽屋にスガさんが出向きおつかれさまを言いながら、最新の配信新曲のサンプルCDをメンバーに配り、ルーファスのCDにスガさんがメンバーからサインを貰っていた。すると、ルーファスのメンバーがそのスガ最新曲にサインをねだり、お互いサイン書き合い会となった。「またぜひ何か一緒にやろう」とか、ラジオのインタヴューでも「スガのためにもう曲を書いた」とトニーが言ったり、もはやルーファスとスガはファミリー感覚だ。
 
その後、ルーファスのメンバーは、今回の来日にあわせて作ってきた『ライヴ・イン・トウキョウ』のCD販売とサイン会に1階に出向いていった。
 
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楽屋。
 
その後一段落して、僕はスガさんの楽屋に行き、おつかれさまとあいさつ。リハから本番までのいろいろな話を聞いたり雑談をした。1980年代のおしゃれ系ブラコンがダメだという話、日本のファンクの歴史の話などがじつにおもしろかった。
 
そんな中、英語のタイトル「9191」ってどういう意味なんですか、と尋ねると「これは、91時91分ということで、16時16分を指してるデジタル時計を喧嘩してほおり投げたらひっくりかえって9191になった、という曲なんですよ。それで世の中には、逆から見ると別の世界があって、裏も表も違うっていうことなんですけど…」「へえ、おもしろ~い。それって、じゃあファンの人はみんな知ってるんですか」「いやあ、あんまり伝わってないかも(笑)」
 
「今日、エスペランザ見たいんですよね。とにかくこの人、めちゃ評価高いですよね。なんでなんだろう。それをちょっと確かめてみたい」とスガさん。ちょうど6時少し前だったので、6時から客席で見ることにした。
 
エスペランザは超絶だった。それ以上に、とにかくかわいかった。「いや、あんなにベース弾きながら、あのヴォーカルできるなんて、すごいね」とスガさん感心しきり。そのライヴ評はまた改めて書くとして、ルーファス、タワー・オブ・パワー、スガシカオのユニークな三位一体は、確かに彼が言うとおり、日本のファンクの歴史の一ページを飾ったと言っていいだろう。
 
そして、もうひとつ、「どうやらバート・バカラックはファンクが好きらしい」という新たな都市伝説が生まれたことも忘れられない。
 
(東京ジャズ Tokyo Jazz についてはまだまだ続きます)
 
■ スガさんすでに自分のブログで今回のライヴについて書いています。当人の視点からの「東京ジャズ」
 
2012年09月10日(月)
東京JAZZで、バート・バカラックに呼び出しくらった件。

 
とても素晴らしい文章です。
 
■ルーファス最新作『ライヴ・イン・トウキョウ』を紹介する「ソウル・サーチン」ポッドキャスト(2012年9月9日放送分)期間限定でアップ。

 
 
■東京ジャズテレビ放映予定
 
東京ジャズ、テレビ放送はNHK BSプレミアム2012年10月16日(火)23:45 ~25:14 10月23日(水)23:45 ~25:14 10月30日(木)23:45 ~25:14 とのこと。詳細は後日発表。
 
■ 「91時91分」オリジナル収録

 

 
 
「正義の味方」オリジナル収録
 

 
ルーファス~ライヴ・ベスト 「エイント・ノーバディー」収録
 

 
■メンバー
 
Tony Maiden (Founding member, guitar, vocal)
Kevin Murphy (Founding member, keyboards, vocal)
Amanda Maiden (Vocal)
Valerie Davis (Vocal)
Donnell Spencer Jr. (Drums)
Robert “Pee We” Lee Hill (Bass)
Michiko Hill (Keyboards)
Michael Stever (Trumpet, Keyboards)
Donn Robin Wyatt (Keyboards)
Leonard Castro (Percussion)
 
Tower Of Power Horn Section
 
Emilio Castillo (Leader, Vocal, Sax)
Stephen “Doc” Kupka (Bariton Sax)
Adolfo Acosta (Trumpet)
Tom E Politzer (Sax)
Salvator Cracchiolo (Trumpet)
 
Featuring Guest:
 
Suga Shikao (Guest Vocal, Guitar)
 
■ セットリスト
Setlist : Rufus Featuring Suga Shikao & Tower Of Power
September 9th, 2012 @ Kokusai Forum Forum A
 
show started 15:30
01. Once You Get Started (Tony)
02. You Got The Love (Amanda)
03. Ain’t Nobody (Valerie)
04. Sweet Thing (Amanda)
05. Golden Moon (黄金の月) [+Suga Shikao]
06. Super Hero (正義の味方)[+Suga Shikao, +Tower Of Power Horn Section]
07. 9191(91時91分) [+Suga Shikao, +Tower Of Power Horn Section]
08. Do You Love What You Feel [+Larry Braggs]
Enc. Have A Good Time [All]
Show ended 16:22
 
(2012年9月9日日曜、東京国際フォーラム・フォーラムA、東京ジャズ、ルーファス&スガシカオ&タワー・オブ・パワー・ライヴ)
 
ENT>MUSIC>LIVE>Tokyo Jazz 2012> Rufus, Tower Of Power, Suga Shikao)
 
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③~~~2012.09.12
 
◎東京ジャズ(パート3)~人生のサウンドトラックになるバカラック・メロディー
2012年09月12日(水) 00時01分00秒

 
◎東京ジャズ(パート3)~人生のサウンドトラックになるバカラック・メロディー
 
【Soundtrack For Life】
 
遭遇。
 
東京ジャズ。金曜日の夕方、僕はルーファス&スガシカオのリハーサルを見たあと、ミスター・バカラックに遭遇したことを書いた。昨日のブログでは、その後ルーファス、スガシカオ・ストーリーを追っていったが、時間軸ではバカラック遭遇後、いつのまにかバカラックのリハーサルがホールA、つまり本番の会場で始まっていたのだ。
 
その続きを書こう。
 
金曜夕方。
 
何かホールの方で音がするので、舞台袖に行くとバカラックのリハーサルが始まっていた。バカラックはピアノに座り、軽くミュージシャンに指示をしているが、ちょっとしたことのようで、なにかほぼ大体できていることを「確認」しているような風情だった。
 
ちょうどヒット曲メドレーの部分だったが、そうして見ていると僕の真後ろでひそひそ話をするブラザーがきていた。振り返るとテイク6のデイヴィッド・トーマスとクリスチャン・デントリーだ。小さな声で「ワオッ、素晴らしいな・・・」を連発している。そして、デイヴィッドのほうから「ハーイ、デイヴィッドだ、テイク6の」と握手を求めてきた。以前にも会ってインタヴューしたことなどを伝えると、ああそうだったか、だから君の顔見覚えあるのかと返事が。
 
ひそひそ声で「ミスター・バカラックには会ったことは?」と聞くと、「いや、ない。だから見に来たんだ」 「バカラックの曲、テイク6で歌ったことは?」 二人で顔をあわせ、しばし考えながら、「ないなあ。こんどやろうか」。
 
ヴァイオリンが一人しかいなかったが、オーケストラのような音がしていた。デイヴィッドが「あれは(パッチをあてて)キーボードと一緒にプレイして音が(複数)出てるようにしてるんだよ」と教えてくれた。
 
リハーサルでは、本番でプレイされるヒット曲メドレーもそのまま。次々と短く繰り出される名曲の数々にノックダウンさせられた。
 
リハーサルがリハーサルではなかった。もう本番さながらだった。こんなリハーサルを見せられたら、一体本番はどうなってしまうのだろう、と背筋がぞくぞくした。
 
土曜午後。
 
そして本番。ミスター・バカラックは土曜(9月8日)昼の回、3番目に登場した。2008年2月、同じ国際フォーラムのここホールAで行なわれたフルショーは2時間近くのものだった。
 
リハではジャージにTシャツだったが、本番はきっちりとジャケット、しかし中はTシャツ、下はジーンズにスニーカーだ。
 
テーマ(「ワット・ザ・ワールド・ニーズ・ナウ・イズ・ラヴ」)が少し流れ、「先週亡くなったパートナーのミスター・ハル・デイヴィッドにこのメドレーを捧げます」と言って、最初のヒット・メドレーを始めた。流れるようなテンポで次々とヒット曲をメドレーにするのは、前回来日時もやっていたが、もう圧巻。これはヒット曲をたくさん持っている人だけができる特別の秘密兵器、特権だ。おそらくある程度年齢のいったヒット曲ファンだったら、「ああ、あれも、これも、これもバカラックかあ」と驚嘆するだろう。それぞれの曲に思い出があれば、そうしたものがメロディーとともにフラッシュバックしてくる。最近のリミックス・テープは曲が1分くらいずつ次々と変わっていくが、まるであんな感じで時の試練を生き抜いた数々の名曲が惜しげもなく披露される。
 
音量はそれほど大きくない。そして次々と奏でられるバカラックの作品はどれも曲が良すぎる。品と趣がある。
 
ある人は「小さな願い」に思い出があるかもしれない。ある人は「雨にぬれても」で映画を思い出すかもしれない。ひょっとすると「ニューヨーク・シティー・セレナーデ」で青春がプレイバックする人もいるだろう。
 
バート・バカラックの音楽は、間違いなくそれぞれの聴き手にとって人生のサウンドトラックになっている。聴き手の人生に寄り添う楽曲を数多く生み出すことができる作曲家とはなんと素晴らしいこと。
 
前日の観客なしのホールでのリハーサルは音が若干響いていた。しかし、この日は音もしっかりしまっていた。
 
ヴェテラン・シンガー、ジョシー・ジェームスが歌う「エニワン・フー・ハド・ア・ハート」は、ディオンヌ、ルーサーのものが思い浮かんでくるが、ジョシーも実に情感を込める素晴らしいヴァージョンになっていた。もうひとりのシンガー、ドナ・テイラーも「ウェイティング・フォー・チャーリー」をフルで歌ったり、メドレーをもうひとりの男性シンガー、パガーニとわけたり、3人ともしっかりフィーチャーされ、いずれもしっかりとした歌唱を聴かせる。
 
ハイライト。
 
そして、一番感慨深かったのが、バカラック本人が「アルフィー」を歌ったところだ。弾き語りで始まり、音も小さく、漆黒になった会場のスポットが一本だけ中央のピアノの前にいるバカラックだけにあたる。音程もおぼつかない、あまり出ていないような声で「アルフィー」の歌詞をワンワード、ワンワード、なめるように、語りかけるかのようにゆっくり声にしていく。今は亡きハル・デイヴィッドのことを思っているのか、まるで泣き入りそうな声で歌う。ひょっとしてそれにつられて観客には泣いている人もいたかもしれない。
 
正面から見ると少し右に首をかしげるしぐさが印象的なバカラックの顔のアップが、左右に配置された大きなモニター・スクリーンに時折映る。なかなか味わい深く素敵だ。
 
デイヴィッド=バカラック作品は通常、バカラックが先に曲(メロディー)を作り、そこにデイヴィッドが詞をあてはめていくことが多いそうだが、「アルフィー」は珍しくハル・デイヴィッドが先に詞を書いてバカラックが曲を後からつけた。バカラック本人も自作曲中もっとも好きな作品だという。それもあってか、彼はこれを自らのステージで自ら歌うのだ。
 
「アルフィー」の後半、バンドが入り始め、コーラスが入り、後半の歌詞をジョン・パガーロ、ジョシー・ジェームス、ドナ・テイラーが歌って曲がどんどんビルドアップしていき最後は盛大に終了。そして、間髪をいれず万雷の拍手が鳴り響く。この夜の中でももっともハイライトとなったシーンだ。
 
一呼吸置いて「アルフィー」に続いて本編最後の「ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」が歌われ、それが終わるとそれまで座席に座っていた観客が拍手をしながら立ち上がり始めた。この日初めてのスタンディング・オヴェーションだった。その波は時とともに会場全体を覆っていった。おそらく年齢層の高いこの日の観客層にとってぴったりの演目だったのだろう。
 
これが長く続き、アンコールに戻ってきたバカラックはシンガーのピガーロに指示し、「エニ・デイ・ナウ」が歌われた。
 
たぶん、この日ここにいた観客は、伝説の人をじっくり見たという感慨に浸ったにちがいない。
 
リハーサルでもほぼ出来上がっていた完成品だったが、そこにはひとつだけ欠けていたものがあった。それが観客の拍手、観客の視線だ。そう、本番ではこの二つがまざりあって、時と空間は完璧なものに仕上がっていた。どんなに完璧な演奏、歌、パフォーマンスも観客がいなければ、そこにマジックは生まれない。
 
バカラックの70分余のこの日のコンサートは、この会場に足を運んだ5000人の人にとって、新たな人生のサウンドトラックになったことだろう。
 
親日家。
 
家に戻り2008年2月のセットリストと見比べてみた。そうしたら、ほとんどメドレー部分など同じだった。つまり、バカラックやメンバーたちは少なくとも4年以上、これら同じことを日々やっているわけだ。だから、リハーサルもリハーサルではなく、本番と同じに仕上がっているわけだ。
 
ヴィオリンのエライザは前回は来日していなかったそうだ。オーケストラが付くときには、来ないという。一人でオーケストラ役を担うときにバカラックに帯同する。前回はフルオーケストラがついていた。
 
女性ヴォーカルのジョシー・ジェームスは、なんとLAの音楽シーンでは超有名なシンガーで、ジョージ・デューク・バンドの一員としてシーラEバンドらと参加。さらに、スティーヴィーからアル・ジャロウなど多数のレコードでセッション・シンガーとして活躍。スティーヴィーの傑作『キー・オブ・ライフ』での「アナザー・スター」に彼女の声が入っており、この曲に日本の久保田利伸が大変インスパイアーされ、彼がツアーをするときに彼女に声をかけた。久保田利伸ツアーでは「ラヴィン・ユー・イズ・ソー・イージー」を歌ったそうだ。いずれ自身のコンサートで日本にやってきたいという親日家だ。
 
バート・バカラックは1928年5月12日生まれ。昭和3年生まれ。辰年。84歳。
 
バカラックのコンサートはしっかりと余韻を残しながら終了した。
 
そして、僕はその後、ルーファスたちのリハーサルに向かった。
 
(その模様は、昨日のブログをごらんください)
 
東京ジャズTokyo Jazz (Part 2) ~ルーファスとスガシカオとバカラックとの邂逅
2012年09月11日(火)

 
(東京ジャズの項続く)
 
東京ジャズ、他のライヴ評、セットリストなどは明日以降、近日中にまとめます。
 
■ 「アルフィー」のバート・バカラック・ピアノ弾き語りヴァージョン
 
フォーラムでも最初はこんな感じでした。後半バンドが入り、シンガーたちが歌った。これは、珍しく作詞家ハル・デイヴィッドが裂きに詞を書いて、それにバカラックが曲をつけたそう。
 

 
 
■東京ジャズ・10月にテレビ放映予定
 
東京ジャズ、テレビ放送はNHK BSプレミアムで、次の日時。
 
2012年10月16日(火)23:45 ~25:14
10月23日(水)23:45 ~25:14
10月30日(木)23:45 ~25:14 。
 
どの日にどのアーティストが放映されるかなど詳細は後日発表。放映時間は各日89分なので3日間でも270分弱。ステージは最低でも50分x12本、約600分以上におよぶので半分程度に編集されるものと思われる。
 
■関連記事
 
バート・バカラック・コンサート
2008年02月17日(日)

前回ライヴ評。
 
作詞家ハル・デイヴィッド死去~アメリカポピュラー音楽史に金字塔残す
2012年09月04日(火)

 
■バカラック生誕80年記念アルバム
 

 
 
ライヴ・イン・ジャパン(1971年のライヴ盤)
 

 
 
 
■ メンバー
 
Burt Bacharach (Conductor, Piano, Vocal)
Eliza James (Violin)
David Coy (Bass)
Tom Ehelen (Trumpet, Flugel Horn)
David Joyce (Keyboards)
Dennis Wilson (Woodwinds)
Bill Cantos (Keyboards)
John Ferraro (Drums)
Josie James (Vocal)
John Pagano (Vocal)
Donna Taylor (Vocal)
 
■ セットリスト
Setlist : Burt Bachrach @ Kokusai Forum, Forum A, Spetember 8, 2012
 
Show started 15:21
01. What The World Needs Is Love世界は愛を求めている (ジャッキー・デシャノン1965)
 
メドレー1 (1963年~1968年ごろの楽曲メドレー)(2~11)
 
02. Don’t Make Me Over ドント・メイク・ミー・オーヴァー (ディオンヌ・ワーウィック 1964)
03. Walk On Byウォーク・オン・バイ (ディオンヌ・ワーウィック 1964)
04. This Guy’s In Love With You ディス・ガイ(ハーブ・アルパート 1968)
05. I Say A Little Prayer小さな願い (ディオンヌ・ワーウィック 1967)
06. Trains & Boats & Planes 汽車と船と飛行機(ディオンヌ・ワーウィック 1967)
07. (There’s) Always Something There To Remind Me恋のウエイト・リフティング(サンディ・ショウ 1965)
08. One Less Bell To Answer悲しみは鐘の音とともに (フィフス・ディメンション 1970)
09. I’ll Never Fall In Love Again 恋よ、さようなら(ディオンヌ・ワーウィック 1969)
10. Only Love Can Break A Heart 恋の痛手(ジーン・ピットニー 1962)
11. Do You Know The Way To San Joseサン・ホセの道 (ディオンヌ・ワーウィック 1968)
 
12. Anyone Who Had A Heart 恋するハート(ディオンヌ・ワーウィック 1968)
13. I Just Don't Know What to Do with Myself (トミー・ハント、ダスティー・スプリングフィールド 1964)
14. Waiting For Charlie (To Come Home) (エッタ・ジェームス)
15. My Little Red Book (マンフレッド・マン 1965)
16. (They Long To Be) Close To You 遥かなる影(カーペンターズ 1970)
 
メドレー2 映画音楽メドレー (17-27)
 
17. The Look Of Love 恋の面影(ダスティー・スプリングフィールド 1967 映画『007 カジノ・ロワイヤル』)
18. Arthur’s Theme ニューヨーク・シティ・セレネーデ(クリストファー・クロス 1981 映画『ミスター・アーサー』)
19. What’s New Pussy Cat 何かいいことないか子猫ちゃん(トム・ジョーンズ 1965 映画『何かいいことないか子猫ちゃん』)
20. The World Is A Circle 地球は丸い(1973 映画『失われた地平線』)
21. April Fools エイプリル・フール(ディオンヌ・ワーウィック 1969 映画『幸せはパリで』)
22. Raindrops Keep Fallin’ On My Head 雨にぬれても(BJトーマス 1969 映画『明日に向かって撃て』)
23. The Man Who Shot Liberty Valance リバティ・バランスを討った男(ジーン・ピットニー 1962 映画『リバティ・バランスを討った男』)
24. Making Love メイキング・ラヴ(ロバータ・フラック 1982 映画『メイキング・ラヴ』)
25. Wives & Lovers 素晴らしき恋人たち(ジャック・ジョーンズ 1961 映画『素晴らしき恋人たち』用、しかし不採用)
26. Alfie アルフィー(シラ・ブラック 1966 映画『アルフィー』、ヴァネッサ・ウィリアムス 1996 TBSテレビドラマ『変奏曲』)
27. A House Is Not A Home ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム(ブルック・ベントン 1964 映画『禁じられた家』)
Encore : Any Day Now エニィ・デイ・ナウ(チャック・ジャクソン 1962)
Show ended 16:34
 
(2012年9月8日土曜、東京国際フォーラム、フォーラムA、東京ジャズ、バート・バカラック・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Bacharach, Burt
 
~~~~~~
 
 
④2014.04.12
 
◎バート・バカラック~「世界への扉」を開く珠玉の名曲の連続
 

 
【Burt Bacharach: The Legend Of The Legend Still Talks About Current Issues】
 
現役。
 
2012年9月の東京ジャズ以来の「レジェンド・オブ・レジェンド」(伝説中の伝説)、バート・バカラックのコンサート。なんといっても、バンドのほかに30人近いストリングス・オーケストラを従えた超豪華でぜいたくなひと時。1曲目からずっと観客は座って、真剣に音楽に耳を傾ける由緒正しいコンサート。バカラックはこのコンサート会場(NHKホール)を「シアターTheater」と言った。そう、まさにシアター(劇場)での立派な格調高いコンサートだった。
 
1960年頃から数えてもゆうに50年、半世紀もアメリカの音楽シーンの最前線で活躍しているアメリカを代表する作曲家だ。短めに次々とヒット曲をメドレーにしてたたみかけられては本当にたまらない。曲に染み付いた個人的な思い出も脳裏にフラッシュバックする。
 
メインのシンガー3人がほとんどを歌うが、時にバカラック本人がピアノを弾きながら歌う。
 
圧巻だったのは、「ワイヴス&ラヴァーズ」から「アルフィー」、さらに「ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」と一気にメドレーにして歌うところ。ここでピアノを弾きながらバカラックが頼りなげに歌うのだが、それが実に個性的でやられる。お世辞にもうまいとは言えない歌なのに、50年以上のこの曲の歴史、そして、バカラックの85歳という年輪の積み重ねが「枯れた味わい」となって会場を覆いつくす。この日は「アルフィー」のところで二度ほど咳き込んでしまったが、それも含めて「がんばれ」と声をかけたくなってしまった。
 
この日嬉しかったのは、下記セットリストで20の「オン・マイ・オウン」。パティー・ラベルの大ヒットだが、そうか、これもバカラックだったか、と改めて感心。本当に多くのヒットがありすぎだ。
 
扉。
 
そして、この日のサプライズは当初の予定になかったアンコールの1曲目で歌われた「ビー・アウェア」という曲。これは、バカラック研究家の坂口修さんによると、ディオンヌ・ワーウィックの1972年にリリースされたワーナー移籍第一弾アルバム『ディオンヌ』に収録されている曲。バカラックは、「この曲は今日初めてみなさんの前で披露します。この曲のメッセージをみなさんに聞いてもらいたいと思ったので」と言って始めた。
 
当初、これは何かの新曲かと思ったが、ライヴ後にバカラック本人にピーター・バラカンさんと一緒に訪ねて、聞いたところ、前日(4月9日)ペンシルヴェニア州の高校で起こった殺傷事件の被害者にトリビュートするつもりで歌った、ということだった。また、バカラック自身、この曲を歌うにあたってこの冒頭のコメントを通訳して欲しいと言っていたそうだが、急なことだったので通訳の手配がつかなかったそうだ。
 
この日歌われた多くの曲はスタンダードとなった傑作ばかりだが、こうした歌をこのニュースのタイミングで歌うところはまさに、今日現在の世界とつながっている、過去・現在・未来をつなぐ現役アーティストの面目躍如だ。
 
音楽や映画は、僕たちの知らない世界を見せてくれる「世界への扉」だ。そしてこの「ビー・アウェア」を歌ったことで、バカラックは僕たちにもうひとつの「世界への扉」を開いて見せた。そしてスタンディング・オヴェーションが長く続いた。
 
Be Aware
(written by Burt Bacharach / Hal David)
 
When the sun is warm where you are
And its comfortable and safe where you are
Well, its not exactly that way
All over
 
And somewhere in the world
Someone is cold,
Be aware!
And while you’re feeling young
Someone is old,
Be aware!
 
And while your stomachs full
Somewhere in this world
Someone is hungry
When there is so much
Should anyone be hungry?
 
When theres laughter all around me
And my family and friends surround me
If I seem to be forgetful,
Remind me
 
That somewhere in the world
People are weak,
Be aware!
And while you speak your mind
Others can’t speak,
Be aware!
 
And while your children sleep
Somewhere in this world
A child is homeless
When there is so much
Should any child be homeless?
 
Oh, no, not even one child,
Be aware!
 

 
「ビー・アゥエア」(気づこう)は、前日のペンシルヴェニア州の高校での殺傷事件に関連して歌われた。</em>
 
■ ライヴの余韻を味わうライヴ・アルバム。セットリストはこのアルバムに準じています
 
"ライヴ・アット・ザ・シドニー・オペラ・ハウス
 

 
 
 
~~~
 
■ コンサート情報
 
2014年4月16日(水)NHK大阪ホール S席10,260円
 
2014年4月18日(金)京都コンサートホール S席12,960円
 
問い合わせ:キョードーインフォメーション06-7732-888 (大阪・京都のみ)
企画制作:プロマックス <a href="www.promax.co.jp" target="_blank">www.promax.co.jp</a>
チケットぴあ 0570-02-9999
ローソンチケット 0570-084-003
 
2014年4月12日(土)、14日(月)ビルボードライブ東京 自由席24,000円 1日2セット入れ替え制・各回70分。オーケストラははいりません
<a href="http://www.billboard-live.com/" target="_blank">http://www.billboard-live.com/</a>
 
■ 過去関連記事
 
2012年09月12日(水)
東京ジャズ(パート3)~人生のサウンドトラックになるバカラック・メロディー
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11351703450.html(前回ライヴ評)
 
バート・バカラック・コンサート
2008年02月17日(日)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10073259727.html前々回ライヴ評。
 
作詞家ハル・デイヴィッド死去~アメリカポピュラー音楽史に金字塔残す
2012年09月04日(火)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11345304796.html
 
■メンバー
 
バート・バカラック / Burt Bacharach(Piano, Conductor)
ジョシー・ジェイムス / Josie James(Vocal)
ジョン・パガノ / John Pagano(Vocal)
ドナ・テイラー / Donna Taylor(Vocal)
デイヴィッド・ジョイス / David Joyce(Keyboards)
ビル・カントス / Bill Cantos(Keyboards)
マーリース・マルティネス / Marlyse Martinez(Violin)
デニス・ウィルソン / Dennis Wilson(Woodwinds)
トム・エレン / Tom Ehlen(Trumpet)
デイヴィッド・コイ / David Coy(Bass, Gear Coordinater)
ジョン・フェラノ / John Ferraro(Drums)
 
東京ストリングス(約30名)
 
■ セットリスト
Setlist : April 10, 2014 @ NHK Hall
 
musicians seated 19:11
show started 19:15
01. Theme : What The World Needs Is Love
02. Medley 1: [2] to [8] Don’t Make Me Over
03. Walk On By
04. This Guy’s In Love With You
05. I Say A Little Prayer
06. Trains & Boats & Planes
07. Wishin’ & Hopin’
08. (There’s) Always Something There To Remind Me
09. Medley 2: [9] to [13] One Less Bell To Answer
10. I’ll Never Fall In Love Again
11. Only Love Can Break A Heart
12. Do You Know The Way To San Jose
13. Anyone Who Had A Heart
14. I Just Don’t Know What To Do With Myself
15. Waiting For Charlie (To Come Home)
16. My Little Red Book
17. Baby It’s You
18. A Message To Michael
19. Make It Easy On Yourself
20. On My Own
21. Close To You
22. Movie Medley: [22]-[32]Look Of Love
23. Arthur’s Theme
24. What’s New Pussy Cat
25. The World Is Circle
26. April Fools
27. Raindrops Keep Fallin’ On My Head
28. The Man Who Shot Liberty Valance
29. Making Love
30. Wives & Lovers
31. Alfie
32. A House Is Not A Home
Encore 1
33. Be Aware [Dionne Warwick]
34. Some Lovers from Hush
35. Any Day Now
Encore 2
36 Raindrops Keep Fallin’ On My Head
show ended 20:54
 
(2014年4月10日木曜、NHKホール、バート・バカラック・コンサート)
ENT>MUSIC>LIVE>Bacharach, Burt
 
バカラック・ベスト~生誕80年記念スペシャル

 
 
自伝
 
バート・バカラック自伝 - ザ・ルック・オブ・ラヴ"

 
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"バート・バカラック・ソングブック - アトランティック・エディション

 
 
~~~
 
バート・バカラック・ソングブック-ワーナーブラザーズ編



左からバート・バカラック、吉岡、オリヴァー・バカラック 2012.09.08 東京国際フォーラム


バカラック、吉岡 2014.04.10 NHKホール

 
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