〇8か月ぶりの松尾潔のメロウな夜間授業（第5回）、ビルボードライブ東京で開催～マーヴィン・ゲイのあれこれ

〇8か月ぶりの松尾潔のメロウな夜間授業（第5回）、ビルボードライブ東京で開催～マーヴィン・ゲイのあれこれ

【Matsuo Kiyoshi’s Mellow Night Class Vol.5 Since February】

8か月ぶり。

（本作・本文は約6000字。最後までお読みいただけます。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字換算すると、12分から6分。いわゆる「音読」（アナウンサー1分300字）だと20分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください）

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〇8か月ぶりの松尾潔のメロウな夜間授業（第5回）、ビルボードライブ東京で開催～マーヴィン・ゲイのあれこれ

【Matsuo Kiyoshi’s Mellow Night Class Vol.5 Since February】

01. 　8か月ぶりの開催

会場変更。

松尾潔さんの日比谷ビルボードカフェで行われていたトーク・イヴェント「松尾潔のメロウな夜間授業」(2019年11月から全10回予定)がコロナ禍のために2020年2月回で一度休校となり、通算第5回が8か月ぶりに会場を六本木・ミッドタウン内ビルボードライブ東京に移し10月12日（月）に行われた。本来の予定であれば9月に10回を終了していた。

比較的平面の日比谷会場と比べると、3階建て（5フロア）の会場は、一見階段教室のような雰囲気。また、テーブルも壇上に向けて正面に配置され基本的には誰の席からも正面に教授が見えるようになっていた。コロナ感染予防のために万全の体制をとり、席間もたっぷりあり、隣の人と話をしようとすると、逆に少し声を大きくしなければならないかもしれないほど。（笑）

今回のテーマはマーヴィン・ゲイ。タイトルは『マーヴィン・ゲイと「イイ男はつらいよ」』。冒頭、ちょうどこの日報じられた昭和の大作曲家、筒美京平さんの話題をしてからマーヴィンのキャリアを時系列に従って講義。

マーヴィン・ゲイという人物がどのようなキャラクターなのか、どのような人物なのかなどをおもしろいエピソードなどを交えながら紹介した。冒頭で、マーヴィンのキャリアなどは各自調べていただくとして、松尾さん独自の視点でのエピソードを紹介。

02．　『ホワッツ・ゴーイング・オン』～その存在価値

存在価値。

BGMも含めてかかった曲は下記のセットリストを参照していただくとして、前半でなんとかギリギリ『ホワッツ・ゴーイング・オン』までたどりついた。

なかなかの金言だと思ったのが、名作といわれるこのアルバム『ホワッツ・ゴーイング・オン』が生まれた経緯などはあえて手短に解説した後に、その存在意義について語った次のようなコメントだ。

「（テーマは戦争反対、エコロジー、大都市の荒廃問題などいろいろな問題を歌っている『ホワッツ・ゴーイング・オン』が語っていることは） 2020年、その深刻さの度合いを増している、何も解決していない。『ホワッツ・ゴーイング・オン』が名作と言われている間は、皮肉なことに我々はパーフェクト・ワールド（完璧な世界）には住んでいないかもしれませんね。仮に『パーフェクト』と呼べる世界が実現したら逆に『ホワッツ・ゴーイング・オン』はその役目は終わるかもしれない。しかし、めでたく終わるようなことがあっても、これは残しておきたい、残すべきだと僕は考えます。ホロコースト（第二次世界大戦中、ドイツがユダヤ人等に対して行った組織的な絶滅政策）がなくなっても、同じ過ちを繰り返さない目的でアウシュヴィッツ（強制収容所）は残すように。

『ホワッツ・ゴーイング・オン』が今なお有効であるというのは皮肉なものだってドヤ顔で語る人、多いんですよ。（笑）　そりゃあ有効ですよ、当然。ストレートに言えば、この世にパーフェクトはない、ということ。パーフェクトと信じているものがあったとしても、それは実に脆いものです。だから『ホワッツ・ゴーイング・オン』はずっと有効であり続けるんじゃないかと。このアルバムが作られたのは1970年、71年…　もう50年も前ですからね。（ため息）　ただマーヴィン・ゲイがおもしろいのは、こういうエロス抜きのアルバムを作る一方で、セクシャルなラヴソングも作ってきた。どちらも後世に残ると思いますね」

このコメントを聞いて、アウシュヴィッツは、人類が強い意識をもって後世へ残さなければならないものだが、『ホワッツ・ゴーイング・オン』は、作品そのものの力で後世に残っていくものだと感じる。

『ホワッツ・ゴーイング・オン』をアウシュヴィッツと並べて語るとは、さすが松尾潔さんならではの慧眼。そして、『ホワッツ・ゴーイング・オン』のアルバムとしての存在価値は、いまやアウシュヴィッツの存在価値に匹敵するものともいえる。おそらく、マーヴィンはこのアルバムを作った1971年に、そんなことになるとは夢にも思わなかっただろう。時代が、時の流れがこの作品にそんな強靭な肉体を宿らせたのだろう。

（「ホワッツ・ゴーイング・オン」、邦題「愛のゆくえ」の日本盤シングル盤）

『ホワッツ・ゴーイング・オン』だけで2時間語るトーク・イヴェントなんてできたらおもしろい。

このあと、「レッツ・ゲット・イット・オン」の紹介で、34歳のマーヴィンが17歳のジャニス・ハンターと出会うところなどまで行って、2部へ。

(マーヴィンとジャニス・ハンター）

ちなみに、本編でも触れられていたが、『ホワッツ・ゴーイング・オン』のアルバムは、最近発表されたローリング・ストーン誌の「オールタイム500アルバムス」の堂々1位に選ばれた。2003年、2012年発表のときは、6位。また、映画『メイキング・オブ・モータウン』の中で、スモーキー・ロビンソンが「自身のオールタイム・ナンバー・ワン・アルバム」と堂々と宣言している。

■同記事についての詳細

〇ローリング・ストーン誌「500グレイテスト・アルバムス・オブ・オールタイム」2020年版発表
2020/09/26 

https://note.com/ebs/n/na0cfbbeb932c

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03　飛び入り～1983年8月のマーヴィン・ゲイ・ライヴ

飛び入り。

ティーナ・マリーのマーヴィン・トリビュートが流れながら開始。「マーヴィン、ちっちぇい男だなあ」という話などから彼のキャラクターについてなど。そして、飛び入りで吉岡正晴が登壇した。

1983年7月末から8月上旬にかけてのニューヨーク、ロスアンジェルスへの旅行がある意味で僕の人生を決定的に変えるものになった、という話から、1983年8月にロスのグリーク・シアター（オープンエア）でのライヴ、1979年11月の武道館2デイズのライヴなどの話をした。

（日本公演時のパンフレット）

マーヴィン・ゲイについては、デイヴィッド・リッツが描いた自伝『ディヴァイデッド・ソウル（引き裂かれた魂）』が、彼の壮大なドラマを描いているので、マーヴィン・ゲイの生涯について興味を持たれた方は、かなりのヴォリュームだが、ぜひごらんください。絶版で中古がちょっと高くなってしまっているので、どこかで安く入手できるときにはぜひ。あるいは、大きな図書館（国立国会図書館など）でごらんください。本当は文庫本かなにかになればいいのだが…。

■マーヴィン・ゲイ～引き裂かれたソウル　デイヴィッド・リッツ著、吉岡正晴訳　スペースシャワーネットワーク　3024円　2009年5月28日発売

マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル (P‐Vine BOOKs)
デイヴィッド・リッツ
スペースシャワーネットワーク

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https://amzn.to/3o1oTvy

1979年11月の来日時は、マーヴィンの生涯においてのどん底だったこと、1983年8月のグリーク・シアターのライヴは、「セクシュアル・ヒーリング」の大ヒット直後だったこと、ロスという自身にとっての「ホーム」でのライヴだったこともあり、大きく盛り上がった。ステージ上のボディーガードの異様さ、パラノイア的に被害妄想になっていたこと、自伝作家、デイヴィッド・リッツとのこと、ライヴ後の楽屋でのこと、初めて「セクシュアル・ヒーリング」をCBSソニーの市ヶ谷オフィースで聴いたときのこと、『離婚伝説』制作時の矛盾のことなど、デイヴィッド・リッツがマーヴィンとレイ・チャールズの自伝を書くときとの違いなども話した。

マーヴィンのお金にも、時間にも、女性にもルーズ、嫉妬深いことなどにも触れた。15分くらいだったが、楽しい時間はあっという間にすぎるものｗ

04.　メロウなマーヴィン・ゲイ松尾潔が選ぶトップ10

メロウ・マーヴィン。

その後、恒例、松尾さんが選ぶメロウなマーヴィン・トップ10、ただし今回は『ホワッツ・ゴーイング・オン』関連とデュエット曲は除く、とのこと。

さすがにこのメロウ・マーヴィンは、メロウな夜間授業らしいトップ10だ。

■セットリスト

セットリスト: 松尾潔のメロウな夜間授業～R&Bの愉しみ～
2020年10月12日（月）ビルボードライブ東京

First set

Show started 19:35
BGM01.　 Funky Space Reincarnation – Marvin Gaye (1979)
BGM02 ディア・ロンリー・ガール　－　加藤ミリヤ
BGM03 Blowing My Mind – Art Madison
BGM04 Heart, Mind & Soul – El Debarge
BGM05 Until – Music Soulchild
BGM06 Adorn – Miquel
BGM07 Let Your Conscience Be Your Guide – Marvin Gaye (From “The Soulful Moods Of Marvin Gaye” – 1961)
M01 Stubborn Kind Of Fellow – Marvin Gaye (1962)
BGM08 Pride And Joy – Marvin Gaye (1963)
M02 I Heard It Through The Grapevine – Marvin Gaye (1968)
BGM09 Too Busy Thinkin About My Baby – Marvin Gaye (1969)
M03 If This World Were Mine – Marvin Gaye & Tammi Terrell (1968)
M04 Abraham Martin & John – Marvin Gaye (1969)
M05 What’s Going On – Marvin Gaye (1971)
BGM10 Mercy Mercy Me – Marvin Gaye (1971)
BGM11 Inner City Blues – Marvin Gaye (1971)
BGM12 You Are Everything – Diana Ross & Marvin Gaye (1973)
BGM13 Stop, Look, And Listen – Diana & Marvin (1973)
M06 Let’s Get It On – Marvin Gaye (1973)
M07 Distant Lover – Marvin Gaye (1974)
BGM14 Funk Me – Marvin Gaye (1981)
M08 Got To Give It Up – Marvin Gaye (1977)
Show ended 20:54

Second Set:

Show started 21:10

BGM01 My Dear Mr. Gaye – Teena Marie
BGM02 Like Marvin Gaye Said – Speech
M01 Sexual Healing – Marvin Gaye (1982)
BGM03 Sanctified Lady – Marvin Gaye (1985)

～～～吉岡正晴登壇～～～

マーヴィン・ゲイ・メロウ・トップ10
(「ホワッツ・ゴーイング・オン」のアルバム収録曲と、デュオ曲はいれてません)

10. Got To Give It Up (1977)
09. Let’s Get It On (1973)
08. I Want You (1976)
07. ‘Til Tomorrow (1983)
06. When Did You Stop Loving Me, When Did I Stop Loving You (1979)
05. Just To Keep You Satisfied (1973)
04. After The Dance (1976)
03. Distant Lover (Live At Oakland Coliseum) (1974)
02 Sad Tomorrows (flip side of “Mercy, Mercy, Me” single) (1971)
01. Sexual Healing (1982)

BGM Piece Of Clay (1971)

Marvin Gaye Is…聖と俗の架け橋である。

Show ended 22:28

出演　松尾潔

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05．　次回以降予告～次回はメアリー・Ｊ・ブライジとヒップ・ホップ・ソウル

次回（第6回）は2020年11月9日（月）、テーマは『メアリー・Ｊ・ブライジと「ヒップ・ホップ・ソウル」』。

以下の当初の予定、テーマは次の通り、ただ新たな講義日程は未定。決まり次第発表される。

第7回　2020年05月18日（月） 『ジャネット・ジャクソンと「アメリカの妹たち」』
第8回　2020年06月15日 （月）『アイズレー・ブラザーズと「家族、尊くて厄介なるもの」』
第9回　2020年07月13日 （月）『ルーサー・ヴァンドロスと「ニューヨーク・サウンド」』
第10回　2020年09月14日（月） 『ディアンジェロと「ニュー・クラシック・ソウル」』

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過去4回のレポート、セットリスト。

１　ベイビーフェイス①
『◎松尾潔のメロウな夜間授業～R&Bの愉しみ～第一回～ベイビフェイス～レポートパート１』
◎松尾潔のメロウな夜間授業～R&Bの愉しみ～第一回～ベイビーフェイスと「メロウという名の魔法」～テンダー・ラヴァー
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12546941152.html
ベイビーフェイス②
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12547682278.html

２　スティーヴィー・ワンダー
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12561909582.html

３　ホイットニー・ヒューストン
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12572320186.html

４　キース・スウェット
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12578012235.html

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