文句。

また仕事の時間。
ぐるぐる回る風車も、ふかふかの芝生も、バランスよく積まれた小麦俵も、
全部見飽きた。
何回僕らを借り出せば気が済むのだろう。
僕らだって君たちのように学校に行きたいし、ベッドでも寝てみたい、
どこかに出かけてだってみたいのに。
誰もそんなことに目もくれず僕らを呼び出す。
ここは牧場。理想の牧場。みんなが思う通りの牧場。
僕らはトボトボと仕事場へ歩く。
ああ、気が乗らない。
西洋人しか僕らを知らなかったはずなのに。
いつの間にかアジア人まで僕らを借り出すようになった。
仕事の時間はいつもバラバラ。
朝でも昼でも夜でも、君たちは思うように僕らを呼び出す。

仕事が始まった。ただただ僕らは跳びつづける。
ちゃんとかぞえてくれよ?すべては君たちのためなんだから。
数百年君たちのために働き続けたのに君たちは感謝の言葉も言わないで、
ずっと僕らを動かし続ける。
仕事が終わったとたんに君たちは僕らを消しちゃうんだ。
だけれどもさ、僕らにたまには水を飲ませてちょうだい。
たまにはごはんを食べさせてちょうだい。
たまには遊ばせてちょうだい。
たまには眠らせてちょうだい。
ただただ柵を跳ばせ続ける以外の世界を僕たちに、
僕たちに作ってちょうだい。
僕らも君らが気持ちよく眠れるように柵を跳び続けるから。




ひつじが一匹、ひつじが二匹、ひつじが三匹って。




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