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時空の歪み…の話。

時空の歪み…の話。

三十路が迫り「結婚」というワードが頭を駆け巡るようになった。あの頃。
「どげんかせんといかん」と思い、友達にある男性を紹介してもらった。
初対面から会話が弾み、時間があっという間に過ぎた。
私の知らないことをたくさん知っていて、興味深かった。

その後、頻繁に連絡を取り合い2人だけで会う回数も増えた。
そして、程なくして私はこの男性と結婚を前提にお付き合いすることになる。
誰にでも優しく、物静かな彼に不満は無かったが、ただひとつだけ気になることがあった。

デートの時はいつも私を車で迎えに来てくれる。
行先は毎回きちんと決めてはいなかったけど、とりあえず待ち合わせの時間だけは決めていた。
彼を待たせてはいけないので、私はお迎えの時間を逆算し、遅れないよう身支度を済ませる。

しかし、約束の時間になっても彼は現れない。
時間を間違えたのかと思い、何度もメールを確認するが、間違ってはいない。
ちなみに今日の約束は13時である。

しばらくすると私の携帯に1通のメールが届いた。
「今から家を出ます。待っててね。」と。
差出人は彼である。約束の時間が割と過ぎた頃、彼は悠々と到着した。

最初の何回かは事情があって遅れてきたのだと思い、気にしていなかった。

しかし、私は気づいた。
彼は約束の時間に私を迎えに来るのではなく「約束の時間に家を出発している」という事実に。

「待ち合わせ」とは指定の時間に約束した場所で会うことである。
これは「待ち合わせ」ではない。笑

13時に来ると言ったのに、13時に家を出る彼。
この不思議な現象は待ち合わせの時間が変わっても続く。当時から気になってたけど、当時はなぜか言い出せなかった。今となっては笑い話。

しかし、ここでまたまた私は気づいた。
彼の住む空間だけ時空が歪んでいるという事実に。だから遅れても仕方ないのだと。

そんな彼は翌年、私と結婚した。
あれから何年も経つけど、もしかしたらあの頃から超現実の世界に暮らしていたのかもしれない。
新型ウイルスもまだ落ち着かない不安な状況下、ますます彼との「ソーシャルディストーション」に気を配らなければならない。
気を抜くとこちら側の空間も歪んでしまう。笑

我が子が年頃になったら「いいかい?待ち合わせというものは、時空の歪んでいない空間でするんだよ」と教えたい。

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