31音の可能性

 1/21日に行われたアイドル歌会をオンラインチケットで鑑賞しました。正直、好きなアイドルである真山りかさんと宮田愛萌さんが出演するのでそれ目的で買いましたが、めちゃくちゃ面白かったです。というのも、大学で一応文学を専攻とした学科におり講義で短歌を作ったこともあり、また中学校の国語教員を目指している身としてはもっと早くから見ておくべきイベントであったと思います。改めて短歌の魅力、力を認識させられました。

 短歌の魅力というと、31音という限られた言葉の中で気持ちを表すと言うことだと思います(めちゃくちゃ有名)。読み手としては、31音から心情や状況を想像しなければなりません。そうすることで読み手によって解釈の齟齬が生まれてきます。齟齬と表現しましたが、発見であると個人的には思っています。自分にはなかった解釈が生まれるととても面白いですし、同じ読み方であっても共感が生まれる所が読むうえでの面白さであると個人的には考えています。
 作る上では、いかに言葉を変えて表現するかであると思います。気持ちを素直に書きすぎては、作者の強い気持ちが伝わるのでそれも面白いですが、発見の面白さは減るのかなと個人的には思います。(めちゃくちゃ個人的にはです)掛詞を駆使したり、比喩を使うことでその先を想像してもらう事や、情景を浮かべてもらう事が単価の魅力では無いのかなと考えております。

 出演者の方は4人いらっしゃって、作者のカラーが出ていたのが本当に面白かったです。出演者は声優でアイドルもしてらっしゃる豊田萌絵さん。アイドル歌会2回目出演の私立恵比寿中学真山りかさん。大学で文学部に所属しており、短歌も制作したことがあるという日向坂46宮田愛萌さん。真山さん同様2回目出演のいぎなり東北産律月ひかるさんです。

 内容は、1部と2部に分かれており、1部はテーマをもとに短歌を作成するブロック。2部は上の句、または下の句が指定されており、そこから短歌を付け句するというブロックに分かれていました。 全部に触れたいのですが、とても長くなってしまう為、今回は1部の感想を中心に書かせていただきます。
 1部はお題が二つあり、それぞれの短歌を詠むという流れになっていました。また自由題もありました。出演者の方が読んだ短歌がスクリーンに提示されるのですが、最初の段階では名前を伏せていて読み手が誰が詠んだ歌なのかを考えられるシステムになっていて、そこがとても面白かったです。その句に対して、「短歌研究」の編集長である國兼秀二さん、歌人の笹公人さん、同じく歌人の俵万智さん、司会を務めていらっしゃった、ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さん、そして出演者の4名が投票を行い、なぜその句を選んだのか、そして作者がどういう思いでその句を詠んだのかを発表するといった内容となっています。

 1つ目のお題は「衣装」、2つ目のお題は「メンバー」となっていました。出演者の方の句を見てみると、
豊田萌絵さん
・公式のスリーサイズでできた衣装入らないのは多分気のせい
・メンバーにプライベートな情報を話す線引き考える夜
・運営の推す推さないの基準値がわかるのならば苦労はせんわ

真山りかさん
・年齢とスカート丈が反比例わたしの青春測り切れない
・だからこそ手を繋ぎたい君がいる 穴あき出席番号愛し
・握手会スルーするきみ 新コインに反応しない自販機みたい

宮田愛萌さん
・アイドルのスイッチ入る空色の愛の魔法に袖を通せば
・騒々しいのが嫌いと思っていたけれどみんなの声はないと足りない
・振り回し振り回されて溺れてる君を必ず釣り上げる海

律月ひかるさん
・共演のフリフリ衣装見ないふり 心に巻いてるピンクのリボン
・ステージでキラキラ輝く君たちをスノードームに閉じ込めたいな
・いつまでもブランコにのる楽しさを忘れないまま生きていこうね
となっております。

 1人ずつ詳しく見ていくと、豊田萌絵さんは実際触れられていましたが、最後の五音がめちゃくちゃ特徴的な歌を詠まれるなぁと思いました。「たぶん気のせい」、「苦労はせんわ」は話し言葉のような面白さがあり、カッチリしすぎてない感じが豊田さんのキャラクターを表しているかのようでした。また、「考える夜」というのは毛色が違うように捉えられますが、夜にどこでどんな風に考えているのだろう?という事を考えると読み手によっては解釈の違いが生まれ面白いと思います。アイドル であり、アイドルファンである豊田さんだからこそ詠める短歌であり、そこも特徴が出ていて面白かったです。
 
 真山さんは、表現の仕方が綺麗だなと感じました。1首目は、丈の長さと心が測りきれないでかけてらっしゃるし、2種目はこれは完璧な予想ですが、手を繋ぎたいがシングル名の手をつなごう、穴あきがアルバム名の穴空を取り入れてるんじゃないかな〜って読みました。深読みかもしれないですがこれも短歌の良さですよね(パワープレイ)。握手会のファンとと新コインに反応しない自販機を結び付けられる感性も素晴らしいですよね。表現の仕方だけではなく、もちろん内容も素晴らしいのがすごい。特に長年私立恵比寿中学、そして真山さんのファンである僕からしたらめちゃくちゃ唸っちゃいました。推しメン…どんだけ凄いんだ…笑

 宮田愛萌さんは、もう言わずもがなですよね笑。1首目は、古典和歌で重要な袖を組み込んでるっていう話を聞いてそこまで配慮できるのマジですごすぎました。作ってくれた人に感謝しているからこその愛の魔法ってのもいいですよね。2種目は休養されていた体験を踏まえての1首だとおっしゃっていたのですが、まずその背景を知っているとそれだけでグッときちゃいますよね(オタク故笑)。騒々しいのがと五音で済んでないところに、騒々しさが生まれていると笹さんがおっしゃっており、そこまで考えてたら恐ろしすぎますよね。特に好きなのは3首目なんですけど、これパッと見なんの事言ってるかわかんないですよね。アイドルが接触イベントなどで可愛くアピールすることを釣るって言うんですけど、愛萌さんは釣り師と言われるまさに釣るアイドルなのでその事に着いて詠まれているんですよね。ファンがアイドルにして欲しくて振り回し、逆に振り回されている様子を海で溺れていると表すことにより動きや読み手に想像させる効果が生まれていてすごいの一言です。愛萌さんも表現の仕方が半端なさすぎる。

一方で律月さんは、思いを言い切る所に良さがあるように感じました。3首ともその場面や心情が想像しやすいのですが、言葉が綺麗で、尚且つ独特の感性で書かれているため(自称魔法少女だけあって)、めちゃくちゃ良いんですよね。1首めは、フリフリと見ない振りで韻が踏んであり口に出して読みたくなるなと感じました。想像はしやすいんですけど、それが返って心にリボンを巻いて頑張っている気持ちが強く伝わってきます。2種目は、スノードームを使うところに魅力を感じました。めちゃくちゃ綺麗に感じられますよね。アイドルは儚いものであるため、それを永遠にしたいからなにかに閉じ込めたいっていう思いが最初に浮かんだらしいのですが、そこにメンバーに対する思いが伺えますよね。正直、閉じ込められたら何でも良かったらしいのですが、そこでスノードームが出てくるのも彼女の凄さだなと思いました。3首目は最後の五音がとても好きなんですよね。生きていこうねと呼びかけになっていて、律月さん本人もそう思っているのだろうなと読み取れますが、みんなに楽しむ心を持ってて欲しいんだろうなっていうのがストレートに伝わりました。想像させるだけじゃなくて思いを31音で素直伝えられるのも短歌ならではだなと認識させられました。

 以上がこのイベントを鑑賞して感じた感想になります。2部もめちゃくちゃ良かったので本当は全部伝えたいのですが泣く泣く省略します笑。アイドルさん達が単価を読むことで言葉の面白さ、短歌の面白さ、魅力が伝わって広まって行く、とてもいいイベントだと思いました。次回は会場で見てみたい…!!!

 

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