税理士と顧問契約せずに申告書の作成だけ依頼するのはどうなのか?
最近はクラウド会計が登場したことで、顧問税理士を付けずに、自社で記帳をして、申告だけ税理士に依頼しようとされる方も増えてきているようです。
クラウド会計を使えば、税理士不要?
そういった方が持つ税理士のイメージ=記帳代行をする人、ということになるのでしょうか?
また、記帳=売上と経費を単純に分けるだけのものという認識なのでしょうか?
先日もお客様から、
「記帳は自社で行っていて、決算書はクリック一つだけで作成できる状態になっているので、申告書の作成だけの金額で見積もりをしてもらいたい」
という事で見積もりの上、仕事をお引き受け致しました。
しかしながら、実際に会計データを拝見すると、このままでは決算が組めないような状態でした。
具体的には、
・帳簿の残高と通帳の実残高が異なっている。
・社会保険は、会社負担分のみを法定福利費として計上するところ、従業員負担分も含めて年金事務所への支払金額の全額が計上されてしまっている。
・源泉所得税の預かり金の処理が出来ていない
・前期の法人税の支払いが、未払法人税の消し込みではなく、法人税等の科目を使って処理されてしまっている。
・摘要が空欄になってしまっているものが、多数ある。
等でした。
これらは、税理士と顧問契約をしていれば期中に間違いを指摘して、改善ができたところです。
これらの仕訳が間違っていることによって、利益の額も大きく変わってきます。利益の額が変わるということは、支払う法人税の額が変わるということです。
例えば、上記の社会保険の例で言うと、会社負担分と従業員負担分を全額計上してしまうことで、本来計上すべき費用のおよそ二倍の費用を計上してしまっていることになります。
と言うことは、この間違いに気づかずに、
「今期の利益は○○円だから法人税は大体○○円だろう」
と言う予測をしていると、単純に予測より高い法人税を支払うことになってしまう、
という結末になってしまうのです。
消費税の処理は複雑
また自社で記帳をする際に、消費税の判定の問題が出てきます。
消費税は、取引ごとに課税、不課税、非課税、輸出免税といったことを判定しなければなりません。
また、軽減税率の制度が導入されたことで、
消費税の処理が一段と難しくなりました。
これらの判定は相当な時間、消費税法の勉強をしていなければ出来ないことです。
これらもまた、期中に税理士の確認を受けていなければ、思わぬ額の消費税を納税することになってしまいます。
税務署などへの届出の提出漏れは税理士でないと気づけないことが多い
顧問税理士を付けていないことで届出関係等の提出漏れの問題も出てきます。
会社を設立したら、税務署などに届出を提出しますが、青色申告承認申請書は税制の特典を受けるために提出しておきたい書類です。
しかしながら、これらを自分でやろうとすると時間がかかってしまったり、漏れが出てきてしまいます。
会社設立時だけでなく、事あるごとに届出の提出が必要な場面は多々あり、中には提出が漏れる事で相当な損をするものも存在します。
やっぱり顧問税理士は必要
ここまでで、顧問税理士を付けないとどうなるかということを述べてきましたが、もちろんこれらが自社で完璧に出来れば、申告書の作成だけ税理士に依頼するというのはありです。
ただそれは、至難の技ですし、このために勉強をしたりする時間はもったいないですし、本業にも支障をきたしてしまいます。
こういった事を考慮すると、やはり顧問税理士は付けた方が良いということになります。
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