建築の人向けの不動産の解説(概要=状況によって変わると思います)

解説時のレジュメみたいなの作ったのですが結構長文になったのでせっかくなのでnoteに載せようと思いました。

① 不動産がAからBへ移動する(所有権がAからBに移動する)際の流れと、その際に登場する一般用語

■ (分かりやすく最小単位(住宅規模)で)建物が誕生するスケジュール
・建築・・・設計→確認申請→着工(済証)→竣工(検済証)・・・→解体
・不動産地面(権利・登記関係)・・・所有権移転登記
・不動産上物(権利・登記関係)・・・表題登記(保存登記)→・・・→滅失登記
・金融機関が絡む場合・・・金銭消費貸借契約→所有権移転登記時(抵当権設定登記)→表題登記→金銭消費貸借契約→融資実行時(抵当権設定登記)

■ 税金のスケジュール
・不動産取得税・・・猶予の申告とスケジュール
・固定資産税・・・基準は1月1日(所有権移転登記を境に清算する場合が多い)
・その他・・・贈与税(負担付き贈与、相続時精算課税制度等)、住宅借入金等特別控除

以上のスケジュールを時系列で並べ、売主・買主(施主)・銀行の三者で権利の移動を行ったとき、建築・不動産はそれぞれどのタイミングでお金が発生し、そのお金は誰から誰に流れ、権利はどう移動し、税金がどのようにかかるのか。付随する商品(登記・保険商品)はどれくらいあるのかを整理して理解する

② 債務者・債権者・施主・設計施工業者・不動産業者の契約書上の関係を請負、売買の2ケースで理解する。※ここで出来た建物の持ち主をAとする

■ 上物について持ち主Aと借主Bが賃貸借契約を結んだ時の契約書上の関係を理解する

■ 上で得た知識を元に債務者・債権者・施主・設計施工業者・不動産業者関係性をもう一度分かりやすく解説する。(建築学科の課題では何の意識もされてないけど、常に「施主は誰?」を理解した方がよい)

■ 以上の基本用語とスケジュールを頭に入れて、各登場人物(建築家、・建築士、不動産業者、銀行、施主)の仕事はどのタイミングで行われ、どういう物かをおさらいする。
※建築の方は建築の仕事の流れはある程度分かると思いますので、それを時間軸を持ったパズルのピース(時間は全体スケジュールの中で伸縮可能とする)としてどこに当てはめるのかを解説する。
※この内容はおおよそ前回のアーカイブで説明(youtube概要欄にレジメも貼っています。)していますので、予習がてら事前に見ておいてもらえると有難いです。僕は喋るのが遅いので2倍速で見ると良いと思います。


③  住宅ローン・不動産ローンの基礎
不動産を購入する場合、ローンを利用するケースがほとんどかと思います。そもそもローンとはどういう商品なのか?(これは本気で話するとこのパートだけで1日では余裕で足りませんので、概要と実務経験から重要だと思われる部分をピックアップして解説します)

④  ここが(いわゆる)建築・設計の仕事
先ほどの説明の①~③で敷地と資金の調達が出来ます。資金・権利関係の移動やスケジュールも整っています。大枠の資金が決まっていますので、分配すると建築に利用できる金額も割り出せます。その中で設計業務に使える時間・経費はいくら?
※ややこしいので分かりやすく「日本の平均年収貰ってビジネスを回し、適切な労働時間で設計業務をやろうと思うと、どういうスケジュールをデザインし、いくらの資金を調達する必要があるのか。又は年間どれくらいの件数の仕事をしなければいけないのか」を解説(この分解から、「ここで僕のスキルなら結構建築家っぽい事できんじゃね?」って考えて選んだ進路が今の進路です)
※これもアーカイブで話していますので事前に見てもらえるとより理解が深まります。

⑤ 他、設計課題or設計で使える不動産の知識・実務
今までの権利関係や契約書上の相関図、各スケジュールを理解したうえで例えば設計課題に不動産要素を入れようと思うとどの領域に入れることが出来るのか?
※解説だけではなく、最近はSNS、ネットで設計課題に不動産要素盛り込むみたいな情報が沢山出て盛り上がっていますので、正しい権利関係、人間の相関関係でその情報を読むというワークショップが出来ればと思います。それだけで「建築×不動産アチ~!」よりももっと深く情報を得ることが出来ると思います。

⑥ 質疑応答とその他不動産の話
事前にDMで質問事項集めていますので、その解答やディスカッションをしたいと思います。どれくらいの理解度でスタートするか分かりませんが、恐らく時間内に全部話しきれないと思いますので、都度様子見て大事そうな所から話をしていこうと思います。何度も書きますが①~⑤のスケジュールの話は前回Youtubeのアーカイブで話しています(逆に権利・相関関係の話はあまりやっていないのでそこ重点的にやれたらなぁと)のでサラッといって④、⑤メインで出来ればと思います。
その他変わった取引(心理的瑕疵、役所論破案件)等もありますので時間ある+その場で需要があればお話できればと思います。

⑦ ※時間あれば 自分の設計課題って不動産(だけの)視点から見てどうなの?
設計課題とか卒計とか作品ありましたら不動産的にどうなのか(権利関係大丈夫?売買するならどれくらいの価格?民法大丈夫?どんなもめ事が想定できそう?瑕疵担保大丈夫?などなど)という解説出来ればと思います。

最後に・・・

実際に講義を受けたわけでもないですし、詳細を見ていませんので何とも言えませんが、少なくとも現段階で「建築学科において学ぶ不動産」というのは課題の特性上あくまで上の流れの中の建築パートのというほんの一部のみを抜き出し(上のパートで言う④だけを抜き出し)、そこにおまけ程度に不動産の知識(利回りとか、収支計算とか・・・)をやっているように見えます。

それはもはや従来の建築設計課題と何ら変わらない(以前Discordでもこれは不動産ではなく極めて建築的発想で作られた作品なのに何故不動産として扱われるのだろうという解説をしたことがあります)と思いますので、その部分が理解できるようになれば良いかなと思って解説します。そうすると建築学科で学ぶ不動産みたいなのもより高解像度で理解できるのではないかと思っています。

不動産は権利関係がどこからどこに移動するか、誰から誰にお金が移動するか、その詳細やお金の流れを丁寧に追っていないといけないわけで(不動産を管理する謄本にも履歴ずっと記載されていますし)、取引や契約、仕組みによって大量の登場人物が存在します。最終的にその登場人物がどういうストーリーで動いてこの建築は成り立ったのか(設計課題においてもどういう登場人物が存在しているのか)、どういう流れでお金が発生して商売が成立しているのか、が感覚で理解できるようになれば万々歳です。

不動産は広く見ると大きなお金が流れる領域で、権利が右から左に流れるだけで余裕で億単位のお金が移動します。そこから生まれる仕事は多種多様ですし、設計業務も多く生まれて(ほとんどの建築界隈には意識(認知)されていないと思いますが・・・)います。

「宅建を取るため」とか、「就活のネタを作るため」とかではなく、もっと有意義に今後の進路選択の幅が広がる(この領域は業種上金融だけど、建築と深くかかわっているなぁとか、この会社は不動産会社だけどこの部署は設計事務所より建築っぽいこと出来るなぁとか、この領域は不動産だけどCGとかITめっちゃ使うから点景ひたすらモデリングするCG会社よりよほどかCG使っている仕事だなぁとか)ような思考も出来れば良いと考えていますっぱムーチョ。

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