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memorandum【33】
年末、は関係ないかもしれないが、僕のNobuyuki Matsuiというブランドに対しての思いみたいなものを書いてみようと思う。
彼のブランドに出会ったのはもう5~6年前だろうか。現在のように本格的にシーズン毎のコレクションみたいな形式で発表する様になるずっと前。僕と彼はその前にも出会っていたのだが、ブランドを始めるのはその時に知った。正直、その最初に見たコレクションは自分にとっても衝撃だった。その当時(現在もだが)、ゆったりとした、所謂ビッグシルエットが全盛の時代にすごく細身なシルエット、デザインされていながらもしっかりと作り込まれた洋服。他のどこにも感じたことのない不思議な感覚だった。
当時の自分はセレクトショップで買い付けを担当していたが、すぐに上司に買付けを打診。正直な話、恐さもあった。こんなに細身で人を選ぶ様な洋服、そして確実に安くはない洋服がどれだけ自分に売れるのだろうかと考えた。でもそれ以上に、この先、また新しい何かを見せ続けてくれるのではないかという期待の方が大きかった。だから、上司にも熱心に説明したのを今でも覚えている。
曲がりなりにも長く洋服を生業にしていると、衝撃を受けると言うほどのものはどんどん少なくなっていく。格好良いなとか新鮮だなとかはあるけど、それを超えての何かってそうそうあるものではない。洋服をまだ全然知らなかった時のように、次にはどんな物を作ってくるのだろうと言うワクワク感をあの当時に感じられた、唯一のブランドだったかもしれない。
その後は自分が期待した通り、最早それ以上の新しい何かを見せてくれた。どんどん進化するブランドを見ていた自分が一番のお客さんだったのかもしれない。それは今でも変わっていない。こんな世界観、洋服が作れる人の更に先の世界が見たい、常にそう思えるブランド。
今、あの時とは別の角度で、より近くで彼のクリエーションを見てて思うこと。ここまで真摯に、時間を掛けて洋服に向き合っているからこそ自分はずっと惹きつけられ続けているのだろう。自分が思っていた何倍も何十倍も何百倍も時間を掛けて生み出された一つの洋服。もっと多くの人に見てもらいたいという思いがこれまで以上に強くなった。
それが今はこの場所でできている。まだまだその数は少ないのかもしれないし、伝えきれない事も多いかもしれない。でも一番のファンとして、彼の作る洋服の良さを自分なりの言葉で、足を運んでくれた皆さんに伝えていきたいと思っている。洋服が作られるいわば原点の様なこの場所で、少しでも興味を持ってくれた人のご来店をお待ちしております。
East End Gallery
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