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memorandum【26】

良い意味での威圧感はお店にとってもブランドにとっても大事なことだと自分は思っている。高圧的な態度を取るとかではなく、何となく緊張するようなお店づくりやブランドのイメージ作り。

僕も洋服を好きになってある程度買うようになった頃、前から雑誌で見ていて格好いいなと思う店に足を運んだ時のことを今でも覚えている。お店を見つけるだけで一苦労の非常に分かりづらい場所に店舗を構えていた。そんなに広いお店ではなかったので入口を入ると店内が一望できた。店員さんが2人、その当時10代だった僕はその2人の店員さんのオーラ、広くはないにしても真ん中がぽっかりと空いた様な贅沢な洋服の見せ方に圧倒されて、さっと店内を見てそそくさとその店を後にしたことを覚えている。

洋服もまともに見れなかったし、店員さんと話すこともできなかった、でも、なぜかまた行きたいと思えるようなお店であった。いい接客をされた訳でもないし、何か刺さる洋服があった訳でもない。でも行きたいお店。すごく不思議な感覚だったが、後にも先にもそんな経験をしたのはそのお店だけだった。

その後、足繁く通うようになり、店員さんとも話すようになった。最初に感じた威圧感とは裏腹にすごく気さくな人だった。顔馴染みになっていくと、お店に行く度に洋服を勧められ、気がつくとレジで会計。でも勧められているのも嫌な感じは全くなく、所謂押し売りとは全然違う懐に入り込んでくる勧め方だった。僕がその店に通い出してから、人生で一番と言っていいほど散財したことは言うまでもない。

無意識的にではあったと思うし、自分一人が買ってどうこうなる問題ではないとは思うが、その当時は次はどんなものが見れるのだろうとか、次はどんな仕掛けをしてくるのだろうとか、期待感を持って買い物をしていたように思う。その方はその方の面白いを追求し、その面白いと思ったことを人に伝えるために全力で接客する。もちろん商売である以上、当然売上を取らなくてはならないのだが、それ以上に商売とは別の何かを感じる接客だった。

冒頭に挙げたこととはかなり脱線してしまったが、物そのものの価値以上の何かを伝えることの大切さを知った経験だった。誰が売るのか、どこで売られるのか。物だけで見れば他にもある物だが、その人にとって一点物のような思い入れのあるものとして届けられるようにしていきたい。

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