ライブハウスの現場から新型コロナウイルス問題について国政と都政への意見書

以下の文章は、私がこれから国と東京都に提出する意見書に記述したものです。文書をとある政党に送り、協力をお願いしています。月曜日には何かしらリアクションが得られると思います。行政に提出する前に文書を公開するべきか悩みましたが、行政に限らずより多くの人の目に留まって欲しいという想いがあり、公開に踏み切りました。

以下、本文

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ライブハウスの現場から新型コロナウイルス問題について国政と都政への意見書

私は東京都中野区に所在するライブハウスの店長です。以下、本書状に記述する内容は、ライブハウス店長という一個人の私的な立場から提言する意見になります。従業員全員の総意ではなく、あくまでも私個人の見解です。ご査収の程お願い申し上げます。

まず初めに強調したいのは、私は、現在のコロナウイルス危機の局面において、ライブハウスが休業することに対して反論を申し上げるのでは無いということです。私自身は一市民として、今コロナウイルスが、世界中の人々の命や生活を脅かしていることに不安を抱いており、一刻も早い事態の収束と、人々の平穏な生活が取り戻されることを強く望んでおります。私達市民は、安定した精神状態で冷静に生活行動することが重要だと認識しております。

しかし、昨今の行政が発しているライブハウスに関する一部の声明と対策には、問題点が多々あります。それらは社会に偏見、対立、混乱をもたらしており、多くの人々の平穏な生活を妨げています。

私は、この書状を用いて、私が勤務する店を含む「ライブハウス」の実情を正確に伝え、行政が市民の安定した社会生活を牽引していくことの力になりたいと望みます。

<ライブハウスの実情と直面している問題>

日本全国には多種多様のライブハウスがあります。繁華街にある店もあれば、人気のない郊外に所在するライブハウス、1000人以上を収容する大規模店舗、20人程度の小規模店舗、集客数も日々それぞれ催されているイベントによって異なります。毎日ほぼ年中無休で営業している店舗、月の内数日しか営業していない店舗、提供される飲食物、そして現在のコロナウイルス問題に関する取り組み方まで、その環境や営業形態は、違いを挙げればきりがないほど、店舗や催されているイベント内容によって種々多様です。1000人を超す人々がひしめき合うライブイベントもあれば、演者もお客様も含めて数人の人々が声も出さないライブイベントもあります。またライブハウスによっては、貸スペースのような業態で機能することもあります。

このように日本全国に点在する千差万別の人々の営みに対して、個別の調査や指導を実施することは一切なく、ただ「ライブハウス」と一括りにして、無条件に営業の自粛を促していることが問題の本質です。そもそも自粛とは文字通り、誰かから要請されるものではなく、各々が自ら判断することです。今全国の「ライブハウス」は、行政から「廃業するか」、「社会から孤立して営業を続けるか」の二択を迫られていることと変わりません。いずれにせよ、廃業の危機にあります。すでに廃業に追い込まれているライブハウスもあるでしょう。

今回の事象の前まで多くのライブハウスは、人々の生活に活気や心のゆとりを提供する場として存在していました。また音楽や芸術の力、そしてライブハウスを拠点とした社会運動などが、社会の危機的局面において、人々の生活に貢献してきた事例は過去に多々あります。私が勤務するライブハウスは、そうした力の一部でありたいという気概も持って、今も営業を継続しております。感染・予防対策には出来る限り細心の注意を払い、対策を実施しております。

それでも営業を継続している「ライブハウス」は偏見の矢面にさらされています。「ライブハウス」に出入りする、従業員、出演者とその関係者、お客様、多くの人々がスケープゴートとされています。また、家族、恋人、友人との人間関係や、職場や社会との関わり合いにまで、歪んだ影響を及ぼしています。自粛を「する側」と「しない側」に二分されてしまい、対立の溝を深めています。不安定な精神状態に陥ってしまった人や自暴自棄になってしまった人が暴発し、極端な行動に及ぶことも危惧されます。

<行政に求めること>

行政は直ちに「ライブハウス」に「自粛を要請」するという、偏見・対立・混乱を助長する無責任で乱暴な行為を取り止め、これまでの誤った認識と発言の中での誤解に基づく部分を訂正する必要があると考えています。

また、「余暇活動、娯楽関連等」などと、概ね同一にカテゴライズされる分野のなかで、一部の業態のみを取り上げ、指弾することは、当該当事者が苦境に立たされる以上に、社会全体の危機意識を特定のポイント以外から逸らしてしまう、という、重大な逆効果をも生みかねません。

感染拡大予防のために、休業が不可欠なのであれば、明確な条件をもって指示がなされるべきです。「ライブハウス」に限らず、各業種から休業補償についての声が上がっておりますが、それぞれの実態に基づいた具体的な方策や指示、声明等が、火急の現状に必須と考え、今後の対応を決定するためにも、それらをを強く求めます。

以上、上述の内容に対する見解をお答え頂きたく存じます。

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末筆ながら、近世以降の社会、そのなかでも、今日における我が国で、多くの市民は、衣食住のみの為に労働を行ってはおらず、余暇活動と労働意欲とは補完し合う関係にあると思われます。

今回のような喫緊の事態においては、平時の理論と切り離し、市民生活を、生存に必需かつ最低限の経済活動に抑えるのは、当然のことです。

一方で、平時、現代市民の多くが享受している、上記のような(余暇関連等)業種の従事者にも、無論衣食住は必須です。現在の高度に複雑化した資本主義社会においては、物理的生存のための活動と精神活動の「最低限度」の必要性は、本質的に切り離せないものであり、後者各々を生業とする生身の人間が相当数存在するということを、是非ともご考慮のうちにいれていただきたく思います。

以上、乱筆乱文、御寛恕下さい。

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