見出し画像

Thank you 小牧キャンパス

Thank you 小牧キャンパス


私がNZUに入学が決まった時は高3の9月で、春から始まる新生活に緊張も不安もなかった。
2年後の9月に、祖父が亡くなった。

大学1年生の春は短くて、2020年に桜を見た人は少なかった。
当然のように始まるオンライン授業導入の対応は、他大学よりスムーズで早かったと思う。不平不満を並べる人は少なくなかったが、それでも毎日の授業は楽しくて、課題に自主制作にサークルに、充実した1年生だった。
(自分で大学生活を楽しめる方向に持ってこれたのは、周りの環境、そして両親のおかげである。)

1年次の小牧キャンパス入構回数は数える程しかなかったけど、私は課題の撮影で同級生よりたくさん通ったつもりでいた。それでも、週に2~3回くらい。
カメラを担いで、ファインダー越しに見える、人が少ないがらんとしたコマキャンを何度も収めた。
放置された雑草だらけのテニスコート、ネットのないバスケットゴール、塗装が剥がれてボロボロの壁、卒業生が描いたであろう謎の落書き、残された卒制のパネル、猫の墓、欠けた石膏像、日付が古いポスター……

そこには私の知らない歴史が沢山あった。
ホームページに載ってる、マスクをしてないツナギ姿の学生が笑ってるところは、未だに見た事がない。

それでも私はこの大学が好きだ。この大学の先生と、同級生、先輩後輩卒業生が好きだ。
オンライン授業でコメントを投げあってお互いを褒めちぎったコミイラの講評、むずかしくてTwitterで助けを求めたフランス語、初めてプレミアで自己紹介動画を作った授業、ドローンやグリーンバックで映像の幅広さを学んだ授業、講評シーズンの度にTwitterにみんなの作品が上がるのがたのしかった。Twitterがなかったら大学生活は今と全く違うものだったんだろう。ありがとうTwitter!

祖父母宅は小牧キャンパスからほど近い田舎にあって、大学に上がってからは遊びに行きやすい距離になった。
7月は講評ラッシュで、その月も映像作品の締切を3本も抱えて大変な修羅場だった。
そこで1週間祖父母宅に泊まらせてもらって、毎日深夜まで制作に明け暮れていた。
9時に家を出ても1限に間に合う家での短い合宿は、久々に泊まる祖父母宅なのも相まってとても楽しかった。
最終日は私の20歳の誕生日だったので、酒好きな祖父と一緒に日本酒を開けて、大好物のブリの刺身を振舞ってくれた。

祖父の様態が急変したのは2021年8月のことだった。
私が祖父母宅合宿に行ってから数週間後の出来事だったので、私がコロナを知らないうちに拾って持ち込んでしまったのかと不安になったが、そうではないようでひとまず安心した。私も祖父も陰性だった。
病名は伏せるが、元々酷い咳を持っていた。それが急激に悪化して、自力で息をするのが困難になり、だんだん呼吸が浅くなり命を落とす病気がある…らしい。難しいことはよくわからない。要するに、寿命ってことなんだって。

そんなことより、7月までピンピンしていたじいちゃんが、腰も曲がってなくて朝5時から農作業してたじいちゃんが、軽トラで大学まで送ってくれたじいちゃんが、「お前は酒呑みになるなあ!」って笑ってたじいちゃんが、ばーちゃんがあんまりお酒飲めないから娘(私の母)とか孫と酒飲めて嬉しいだろうなって母さんと話してた7月から、病院のベッドで色んなものに繋がれて、どんどん細くなっていくのが、本当に信じられなくて、ありえなくて、意味わからなかった。
茨城から叔父さんも駆け付けて、母と祖母と3人で交代で祖父の世話をしていた。孫の中で都合がいいのは愛知で大学生してる私だけだった(他のいとこ達は中高生だったから、受験や部活や授業などで平日は忙しかった)から、9月の本当に亡くなる直前に顔を見れた孫はたぶん私だけだった。

今日か明日に亡くなるという時に、私の母に連絡が入ったので、私も一緒に病院に向かった。浅い呼吸をギリギリ保ちながらじいちゃん頑張ってた。
私も仮眠を取りながら深夜まで付き添ったけど、最初は弱ってるじいちゃんが見てられなくて、あんまり病室に入ろうとしなかった。でも、「最期くらい顔見ときなさい」と母が言うので、涙が落ちるのを堪えながら、返事のないじいちゃんにずっと話しかけていた。
その日はもう遅く、私がいても何もできることはないので、お世話は叔父さんと母に任せて、私は家に返された。

次の日じいちゃんが死んだ。

おそらく、私がNZUに、あの小牧キャンパスに通ってなかったら、7月の元気な祖父と過ごしたあの1週間はなかっただろう。
夏休み前の限界講評シーズンで、泊まり込みしなきゃいけないという状況じゃなければ、私は祖父とあの家で過ごす最後の機会を逃していただろう。
そういう意味で、私はコマキャンに助けられていました。

確かに私はまだ2年生で、卒業生や先輩、先生なんかに比べたら、全然あの校舎に通ってない。でも、課題とかこすぶでの撮影とかで、たくさんコマキャンを撮ったよね。
私はまだ名古屋造形大学小牧キャンパスという歴史をほんの一部しか知らないかもしれない。でも、コマキャンありがとうって、言っていいよね?

サンコマ実行委員の皆様、企画を立ててくれたオガイさん、ミワ先生、石川先生、イユ先生、イモト先輩、学生スタッフの皆様、盛り上げてくれたこすぶのみんな、一緒に展示やってくれた浅葱さん、片付け手伝ってくれた木さん、ほちゃん、ゆめねき、展示物販で参加してくれた学生(フォロワー!)のみんな、来てくれた家族や友達のみんな、在学生、卒業生、サンコマに関わった全ての人たちへ、

ありがとうございました。

それから、小牧キャンパス 2年間ありがとう!
名城キャンパスも撮りまくるぞーーー!!!

2022年2月15日 ましお

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?